軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

114話 少しだけ日常を変えてみた

そんなこんなで、地底王国ドンゴワ観光を終えたあとのこと。

今回もなりゆきでドワーフたちや世界を救ったローナだったが……。

今さらその程度で、ローナの日常が大きく変わることもなく。

「――ふぅ~……ドンゴワもよかったけど、やっぱり我が家が一番です!」

『乙』

「封ちゃんもいるもんねーっ!」

『エ、ェ……エクスディエェエエエス――ッ!!』

旅行から帰ったローナは、さっそく我が家でのんびりとくつろいでいた。

「いや、おぬし……旅からひさびさに帰ってきた感出しとるけど、毎晩帰ってきとったじゃろ」

「あ、あはは、ドンゴワはちょっと暑くて……寝苦しくて」

「まあ、それはよいのじゃ。それよりも、帰ってきたのなら――」

と、テーラはくいっと庭のほうを指さす。

その指の先にあるのは――ガシャン! ガシャン! と、庭で稼働し続ける全自動作物収穫装置と、大量の収穫物の山、山、山……。

「……あの山を、さっさとどうにかするのじゃ」

「わ、わぁあっ!? 忘れてたっ!」

と、慌てて庭に飛び出すローナ。

さっき世界が救われたばかりとは思えない、いつも通りの日常がそこにはあった。

ただ、少しだけ今回の旅行で変わったこともあり――。

「――ドワーゴさん、こんにちはーっ! 今日は頼まれていた“無”を持ってきましたーっ!」

後日、ローナがドワーゴの店に行くと。

「わふっ! ローナの姐御じゃないですかーっ! いらっしゃいやがりませーっ!」

ローナを接客してくれたのは、以前まではいなかった看板娘。

地底王国ドンゴワの姫――ワッフルだった。

ローナを通じて外の世界に興味を持ったワッフルは、ローナたちのお別れ会(2回目)のときにドワーゴに弟子入りを申しこみ……ちょうど人手が欲しかったドワーゴも、ふたつ返事で了承し――。

それから、ローナがワッフルを港町アクアスまで爆速で空輸して、今に至るというわけだ。

「あれ……これは新商品ですか、ワッフルちゃん?」

「わふっ! それは、あたしが試作してみやがった“れーぞーバッグ”でありやがりますっ!」

「えっ、もう試作品を……? まだこの町に来てから、ほとんど時間も経ってないんじゃ……」

「わふふ~んっ! この町もまーまー暑いし、釣り人がうじゃうじゃいやがりますからねっ! プチアイスの氷で使いやがれて、持ち運びにも便利な“冷蔵庫”を作ってみやがりましたっ!」

「お、おぉ……なるほどっ! たしかに、これは欲しいですっ!」

「や、ローナの姐御は、“あいてむぼっくす”がありやがりますよね……?」

なにはともあれ。

ワッフルはさっそくドワーゴの店で、即戦力として活躍しているらしい。

もともと鍛冶のスキルがなかっただけで、手先の器用さや発想力はあったのだろう。そのため、ランクの高さが求められる装備よりも、こういう鍛冶のほうが向いているようだった。

と、そこで。

「――おーい、ワッフル! ちっと手伝ってくれ!」

店の奥からドワーゴの声が飛んできた。

かんかんかんッ! と、いつもの金属音を響かせているあたり、ドワーゴは今日も元気に鍛冶をしているらしい。

「あっ、ドワーゴのお師匠が呼んでやがりますねっ! ともかく、ローナの姐御、“無”の納品ありがとうございやがりましたーっ!」

と、ワッフルはぺこりと頭を下げると。

当たり前のように金槌を手に取り、鍛冶場のほうへと向かい――。

「あっ、それとローナの姐御――」

そこで、くるりとふり返ったワッフルの顔には……。

ニコニコと輝くような笑みが浮かんでいた。

「――やっぱり、あたし……作ることが好きみたいですっ!」

そんなこんなで。

地底王国ドンゴワで世界を救ったのと引きかえに。

ほんの少しだけ変わった日常が、そこにあったのだった――。