軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九十六話

あれから黙々と森の中を進んでいき、湖を見つけた後、軽く休憩を取ってから第三階層へと向かった。

「意外と人を見かけるな、このダンジョンは」

ダンジョン内で出会った際にも基本的には声を掛けない、戦闘音が聞こえた場合には迂回できる場合はするのがマナーとなっている。

そのため、ダンジョンの数は膨大であることもあって、他の探索者を見かけることは意外とない。

だが、今回の探索では遠目ではあるが、既に三度も探索者を見かけている。

「ここは人気のダンジョンですし、ホテルも近いので地元で人気のあるダンジョンよりも遥かに人は多いですからね。あと、森の中なので、洞窟や遺跡よりも探索者を見つけやすいのもあります」

「そうか、確かに」

森の場合は洞窟のように方向が決まっているわけではなく、木が視界を遮るものの、あらゆる方向を見ることができる。

「地元で人気程度であれば、遠方からの探索者はまず居ないし、階層もそれなりにあるから、同業者を見かけることはないってことか」

日本にもかなりのダンジョンがある上、何十もの階層があるダンジョンも珍しくない。

佐々木ダンジョンは四十五階層まであるため、地元では人気があるものの、遠方からの探索者少なく、同業者はたまにしか見かけなかった。

(近づきすぎないようにしていたのもあるがな)

佐々木ダンジョンでは、戦っている最中に近づかれるのは迷惑なので、できる限り近づかないようにはしていた。

「いますね」

「どこだ?」

東雲が目を細め、気配のする方に視線を向ける。

「あの木の上です」

第三階層に生息するモンスターの名は黄昏蜘蛛。

淡いオレンジ色と藍色の二色を基調とした巨大な蜘蛛で、一メートル以上の大きさを誇る。

敵である探索者を木陰や草むらから奇襲し、口から吐き出した糸を巻き付け、その糸を通して生命力を吸い取るモンスターだ。

糸は非常に頑丈で簡単には斬れないが、吸い取るのに一日以上掛けるため、大抵は木の上で行うため、探索者協会に救助を依頼すれば、救助される確率は高いとされている。

しかし、失った生命力を回復するのにはかなり時間がかかる為、下手に怪我をするよりも厄介である。

また、戦闘の際には牙や足を使って攻撃してくるので、糸以外にも気を付けて戦わなくてはならない。

(第一、第二と近距離でしか攻撃できないモンスターだったが…)

ここからはある程度の距離があっても警戒する必要がある。

「見つけてしまえば、分かりやすいものなのですが、派手な色でも景色に溶け込んでいるんですよね」

既に俺の視線の先には黄昏蜘蛛が映っているが、直ぐに見破れたかは怪しい。

気配を上手いこと消しているのと、木の上で潜んでいる為、認識しにくいからだ。

このモンスターはこちらの気配を察知して移動し、狩りやすい場所に移動してくるので、意外と厄介なモンスターである。

「【アイス・アロー】」

冷気を纏いながら、透明の矢が形成されると、黄昏蜘蛛目掛けて射出される。

(躱したか)

だが、黄昏蜘蛛は俊敏な動きで、氷の矢を躱した。

木々を飛び移りながら、こちらへと近づいてくる。

(速いな)

今までのモンスターにはない俊敏な動きで、今回の探索では初めて、魔術を躱された。

三又蛇も土食いモグラもその良さを出す前に倒すことができていたが、今回はそうもいかないらしい。

(問題ないか)

多少、厄介になっただけだしな。

俺はより強烈な魔術を放つ為、魔力を体から放出し、圧縮する。

「【アイス・アロー】」

圧縮された魔力の塊は五つに分かれ、氷の矢となり、ドリルのように回転する。

同時に使うのは魔力の消費が激しいが、魔術のアドバンテージのおかげでその辺りは問題がない。

「発射」

照準が黄昏蜘蛛に合うと、先程よりも段違いの速さで氷の矢が五本、放たれた。

(流石に無理だよな)

二本であれば、対応ができたのかもしれなかったが、矢の数が五本。

第三階層のモンスターに過ぎない黄昏蜘蛛が対応できるはずもない。

案の定、流石に対処しきれず、四本もの氷の矢が黄昏蜘蛛の体に突き刺さる。

(危ない)

一矢報いるためか、黄昏蜘蛛が糸を吐き出さんと、鋭い牙を見せつけながら口を開く。

「【アイス・ランス】」

そうはさせるまいと、俺はとどめの一撃を放つ。

急速に生成された氷の槍が黄昏蜘蛛の体を貫通し、ぶら下がっていた木に縫い付けた。

糸は見当違いのところに僅かに飛んだだけで終わり、黄昏蜘蛛は十数秒ほど手足を動かしていたものの、動きは鈍くなっていく。

「終わりですね」

やがて、ピクリとも動かなくなると、手足をだらんと宙に投げ出した。

「ああ」

四本も矢が刺さってまだ攻撃してくるとは思わなかった。

(最後まで気は抜けないな。……次はもう少し無駄なくやろう)

息絶えた黄昏蜘蛛を視界に入れながら、俺は次の戦闘に向けて意識を切り替えるのであった。