軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十五話

シャワーを浴び、大量にかいていた汗を全部流した後、部屋着へと着替えを済ませた俺は、リビングで何をするでもなくただただボーっとしていた。

目的もなく、のんびりと座っている。

思ったよりも身体や心が疲れているらしく、今日は身体を動かす気が起きない。

ふと窓を見ると日の光が窓から差し込んでおり、太陽が生み出した暖かい空気を感じながら、俺はゆったりとした時間を過ごしていた。

(茶でも飲もうかな)

俺は緩慢な動作で台所に向かうとケトルに水を入れてお湯を沸かし、茶を入れる準備をする。

用意したのは緑茶の茶葉で、そこら辺に売っている普通の市販品だ。

ティーポットに茶葉を入れ、沸いたお湯を入れる。

それから何分か待ち、しっかりと色が出たのを確認すると、できたお茶をコップに入れる。

俺はコップの中にこぽこぽと音を立てて緑茶が入っていく様を眺めていた。

(はあ、落ち着くな)

茶柱が立っているかを確かめ、緑茶を啜る。

残念ながら茶柱は立っていなかったが、緑茶特有の苦みと旨味はダンジョンでの戦いですり減っていた心を落ち着かせた。

もう一口ほどお茶を口に含み、この三日間での出来事を思い出す。

三日の間は休むことなく毎日ダンジョンの探索に出ていた。

美少女でありながら二十歳というびっくりな見た目をした東雲さんと出会い、いかにも強そうな雰囲気をした漆黒の自動人形との死闘を生き延びたかと思うと、その自動人形は純白に変化して俺は彼女、ヴァルを仲間にした。

その後は彼女と共に再び佐々木ダンジョンへと潜り、様々なモンスターを打破しながら、ミノタウロスという強敵を倒しきり、無事マンションへと戻ってきた。

文面にすると些か短い気もするが、個人的にはかなり濃い三日間だった。

(ちょっと焦りすぎかな)

三日連続の探索は少々やりすぎだ。

普通の探索者であっても、一日は空けて探索するのが普通で、その一日の休息が命を繋げるのだろう。

幾ら強力なスキルを持っていたとしても、死ぬときは死ぬし、俺は四十だ。

もういい歳をしているし、いつまでも若者気分ではいられない。

レベルが上がっているおかげで身体にガタが来ていないが、普通であればとっくに身体を痛めていることだろう。

(それにしてもまた、危険な戦いに臨んでしまうとは・・・ヴァルとの戦いで学んだと思ったんだけどな)

ヴァルとの戦いは明らかな死闘であった。

極光なんて魔術は正直規格外の威力で、火力という面で見れば最高峰の魔術だ。

俺が放っている極光の威力は低いが、レベルを上げていけば、より大きな火力を出すことができるだろう。

(そんな切り札を持っていたから気が緩んだのかもな)

切り札があればいざという時は大丈夫、そんな思いは油断と悲惨な結果を呼び寄せる。

特に弓使いのミノタウロスとの戦いは肝が冷えた。

(あのようなことは二度としてはいけないな)

レベルが高くなれば、どうってことはない存在だが、俺はまだ低レベルの存在でしかない。

今はヴァルもいるし、俺の選択のミスが彼女の命にもかかわってくる。

(あと一か月程度ダンジョンに潜れば話も変わるんだろうが)

それは先の話だ。

今日はダンジョンのことなんか忘れて、一日中休息としゃれこもう。

俺は思考を頭の隅に追いやると、本日三口目の緑茶をゆっくりと啜る。

ほうと気の抜けた息を吐きだし、この三日間にはなかった、まったりとした時間を謳歌するのであった。