作品タイトル不明
第百八十七話
ワイバーンは、この世界においても最も馴染みのあるモンスターであると言える。
食用の飼育技術、遺伝子操作を含め、様々な研究が進んでおり、此処数十年の間に食用肉の覇権を取った存在だ。
俺も大好物であり、最近はふらっとコンビニに立ち寄って、ワイバーン肉の串焼きを買ってしまうほどに好みの味である。
(だけど、戦いは別だよな)
一斉に放たれたワイバーンのブレスに対し、俺は【結界】を幾重にも張ることで、対応する。
今回は念のため、五重に結界を張っており、実際、三枚はブレスの貫通を許したが、四枚目と五枚目はしっかりと攻撃を防いでいた。
「やるねぇ」
篠森さんの言葉が聞こえると同時に、空中で止まっていたワイバーンの半数が両断される。
篠森さんと東雲の二人による、強烈な斬撃によるものであった。
「私が三匹だから、東雲ちゃんの負けね」
「うるさいですね。はい、四匹」
「いや、一太刀で何匹斬るかの勝負でしょ」
「そんなルール知りませんが?」
やいのやいのと言い争っているが、既にワイバーンは七匹討伐されていた。
残りの三匹は戦略的撤退を選択したのか、既に背を向けようとしている。
「いま」
そこに、ヴァルが槍を投擲した。
音速に届かんとする速さで投擲された槍は、ワイバーンの頭を貫通し、一撃で絶命させる。
「【極光】」
俺も【極光】を残った二匹のワイバーンにそれぞれ放ち、しっかりと息の根を止めた。
「強いね、ホントに欲しい」
篠森さんのねっとりとした視線を受けながら、俺は解体をするべく、ワイバーンの亡骸に近づく。
計十匹の竜種の解体は、かなり骨が折れそうであった。
「それ、私がやるよ」
徐に言った篠森さんが音もなく、ワイバーンの死体のもとに駆けていく。
そして、腰に着けていたナイフを鞘から抜くと、数度軽く振るった。
(えぇ)
すると、ワイバーンの肉体は不自然なほど、綺麗にバランスよく解体され、魔核も完璧な状態で地面に転がる。
明らかにナイフを振るった回数に見合っていない結果であったが、その疑問は篠森さんの次の言葉で晴れた。
「【解体】のスキルを持っているからね。それも結構何回も出たから、効果も大きいんだ」
にへらと笑う姿は可愛らしいが、周囲にあるワイバーンの死体によって、映画で見る快楽殺人者の猟奇的なシーンにしか見えない。
「私も、篠森もスキルオーブは相当使っていますからね。その分、効果が大きいのは当たり前です」
東雲も張り合うようにして、ワイバーンを解体する。
その手際は言うだけあって、篠森さんと変わりないレベルに映った。
(スキルオーブって凄いんだな)
俺は【魔術】と【体力強化】ぐらいしかスキルがないし、スキルオーブをほとんど使ったことがないので、その有用性を正しく認識できていなかったが、実際に目の当たりにすると、その凄さに圧倒される。
(考えてみるか)
幸い、お金を稼ぐことは容易になりつつある。
俺は探索者としてのさらなる高みをイメージし、密かに熱を燃やすのであった。