作品タイトル不明
3 HP3からのスタート
異世界生活初日、気がつくと汚い部屋の汚い藁の上にいた。自分の下痢ピーにまみれながら。
…えっ、ナニコレ? …赤ん坊になってるって話違うんだけど!!
(……くっさ! てか、汚なっっ!)
汚物にまみれた身体を見ると、あきらかに小さい、赤ん坊だ。どう考えても伯爵家の三女って感じじゃない。
身体を動かしてみるが、不快感が増しただけで起き上がることすら出来なかった。多分、産まれたばかりなんだろう。思うように身体が動かない。
あの野郎…、騙された……。どうせすぐ死ぬだろうからスキルを付けてくれたんだ。神様の癖にやることがきたない。実際、この環境だと一ヶ月以内に死ぬだろう。
ボロボロの汚い部屋には窓があったが、雨戸が閉まっているため薄暗いうえにカビ臭く、すきま風がふいていて肌寒い。明かり取りの窓から少しだけ空が見えるくらいだ。
藁でできた布団のような物は汚物で汚れているうえ、ゴワゴワのチクチク過ぎて痛い。近くに人のいる気配もない。
(この環境、普通に死にそう)
なにより、めっちゃ腹が痛い。ずっとゴロゴロしてる。多分、菌とかウイルス系の下痢ピーだと思う。自分の力では動くことも出来ず、ただ待つのみ。
……いや、この状況でどうしろというのか、自分ではどうすることも出来ないんだけど。諦めてせめて死ぬ前に異世界らしさを堪能しよう。そう思い、まずはステータスのチェックを始めた。
(たしか、ステータスオープンで画面が出るんだっけ)
心の中で念じると目の前に画面が浮かび上がった。おぉ~。こんな状況じゃなかったらもっとテンション上がっただろうに。画面にはよくあるステータスが出ていた。
LV 1
HP 3/10
MP 15/15
SP 50
状態異常大
えっ、……3? ヤバいっっ。HP3しか残ってない。他にもたくさん項目があったけど、今はそれどころじゃない! なんとかしないと今日中に死ぬ。
実際に残りのHP見たら諦めるとか言ってられなくなった。
ゲームだとSPってスキルポイントのことだったはず。これ使って回復出来そうな魔法を使えるようにならないとマジでヤバい!
回復魔法は光属性になるようだ。とりあえず、上から順にポイントを割り振っていく。ヒール、キュアがあれば治るだろう。1回でダメなら治るまでかければいい。
試しに身体に手をあててキュアを唱えてみる。ぼんやりとした光が手に集まって消えていき、その直後、身体から力が抜ける感覚があった。
(うわっ、クラクラする)
少しだけお腹の痛みが治まった気がしなくもない。ステータスを見ると状態異常が中に変わりMPが0になっていた。
(MPって魔力のことだよね。0になると貧血の時みたいな目眩が起きるんだ。でも、一応効いてるなら回復したらもう一度かけよう。あっ、その前にHP回復させなくちゃ)
そう思いながら意識を失った。
意識が戻る、回復する、魔力切れで気絶する、を何度か繰り返すとようやく状態異常がステータスから消えた。HPも回復済みだ。しんどかったがこれで今すぐ病気で死ぬことは回避出来ただろう。多分。とりあえずひと安心だ。
はぁ~、異世界、最悪じゃねぇーか!!
(安心したらお腹すいたな)
多分、目覚めてから5~6時間位経っているはず。正確な時間はわからないが、明かり取りの窓から見える空はまだ明るい。昼過ぎ、1時か2時ってところか。まわりには誰の気配もしないんだけど。
赤ん坊って頻繁にミルクを飲むイメージがあったんだけど、この世界は違うのかな? 蜂蜜はあげちゃダメくらいしか知らないけど、水分補給は必要はず……だよね?
子育てなんて無縁だったから、どうしたらいいかわかんないよ。自分の身体なのに。とりあえず魔法でどうにか出来ないかと思い、ステータス画面をチェックした。
(あれ、MPが少しだけ増えてる)
よく見てみると、ヒールとキュアのスキルレベルも上がっていた。どうやらスキルレベルはポイントを使うだけじゃなくて使用回数とかでも上がるようだ。
MP、魔力は0になるまで使ったからだろう。しんどかったけど、上がってるのを見ると嬉しい。画面を見ながらこの状況で使えそうなスキルを探す。枝分かれしているせいで探し難いが、ざっとページをめくっていると生活魔法を見つけた。
(これ一番基本的な魔法だ。多分、みんな使えるやつ)
よし。早速覚えようとスキルを確認していると壁の向こうから足音が聞こえてきた。だんだんと近づいて来る。
ガチャッ。
入ってきたのは女性だった。しかも、なんかちょっと薄汚い感じで無表情の人だ。…怖。
「チッ! また漏らしたの? 何度も面倒なんだけど」
そう言いながら隣の部屋から大きめの桶を持ってきた。赤ん坊相手に言い方がキツイ。
「ウォーター」
女性が呪文を唱えると桶の中に水が溜まっていく。溜めている間に汚れたオシメを脱がされた。オシメって言うよりもただの布だな。
羞恥心よりも不快感が減ったことにホッとしていると、突然、脇の下を持たれそのまま冷たい水の入った桶の中に入れられた。
(ちょっと、首、折れるから支えて!!)