作品タイトル不明
23 準備完了
はさみがないので鎌で強引に切るしかないんだけど仕方ない。髪を左右に分けて首のところからざっくりと切る。鎌が大きすぎて上手く使えないし、切れ味が悪いから時間がかかったし、すっごく痛かったけどなんとか切れたよ。切り口はバラバラになってるけどね。
鎌で切った後にアイスソードでも切れるんじゃないかと思って試したら出来ちゃったよ。めっちゃ冷たくて髪の毛が凍ったけど鎌よりはましだった…。最初に気付けばよかったよ…。
いつも使っている大きさのアイスソードじゃなくて、新しく小さな剣を作って残りの髪を切った。鏡があればちゃんと揃えられるのになぁ。触った感触で長さのバランスを整えて完成だ。
床を見ると大量の髪が落ちている。何かもったいないなぁ。私の髪の毛って色が白っぽいんだよね。白髪っていうよりはくすんだ灰色、見栄をはって銀髪って感じの色合いだと思う。初めて自分の髪を見た時は心労のせいで全部白髪になったんだと思って焦った。
とりあえず、アイテムボックスに仕舞っておこう。いつか何かに使う日がくるかもしれないから…。
これでこの家でやることは全部終わった。3年間世話になった部屋だ、少し寂しく感じる。いや、そうでもないな。イライラしてくるわ。2度と戻って来ることはないのでよく見ておこう。
しんみり、イライラした気持ちで家を出ると城門に向かって歩きだした。これからはやることが多いんだ、気持ちを切り替えて予定通りに進めていこう。
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城門に着くと兵士に止められてしまった。どうやら中に入る時には身分証の確認が必要らしい。仮洗礼でもらったプレートを見せるとあっさり中に入ることができた。可哀想に…みたいな顔をしていたのは気のせいだと思いたい。
さて、まずは冒険者ギルドに行くんだったな。マップを見ながら街を歩く。やっぱりメインの通りは人が多いな。不自然にならない程度に辺りを観察しながらギルドを目指した。
しばらく歩くと大きな建物が見えてきた。看板に剣と盾のマークが書いてある。中に入って行く人達もいかにも冒険者って感じの格好をしている。ここで間違いないだろう。
近づくと、ちょうど中から出てきたおじさんとすれ違った。子供がいることはそんなに珍しくないのか、チラッと見るだけで去っていった。……ちょっと緊張したな。
中に入るとまさにギルドって感じだった。イメージ通り。建物の右側はカウンターがあって受付らしき女性が座っている。壁側には大きな板が掲げてあり、依頼書みたいな紙がたくさん貼ってあった。左側は酒場のようだ。今の時間だと人は少ないけど、それでも昼間から飲んでいる人がいた。
よし、それじゃあカウンターに行こう。
念のため【隠蔽】と【ステータス偽装】は常にしてあるから大丈夫だろう。少し緊張しながらカウンターに近づくと受付の女性が気がついてくれた。
「いらっしゃい。どうしたの?」
「仮洗礼が終わったので、見習い冒険者の登録に来ました。ここで登録できますか?」
一瞬、受付のお姉さんがびっくりした顔をした気がするんだけど何に対してだろう?
「ええ、ここで大丈夫よ。誰かと一緒に来たの?」
「いえ、1人です。誰かの紹介がないと登録できないんですか?」
「紹介がなくても登録できるわ。ただ、他の子は先輩の見習い冒険者達が一緒だったから気になっただけ。昨日登録していったわ」
教会にいた子供達は先輩が連れて来ていたのか。もしかしたら、そういう仕組みができているのかもしれない。もう少し教会に残っていればよかったな。
まぁ、登録はできるんだからいいか。私1人しかいないし、この時間は冒険者も少ないからギルドについて詳しいことを教えてもらおう。
「昨日は教会からすぐに帰ったので知りませんでした。他の子も冒険者の登録をするのは知っていたので来ました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね。じゃあ、登録しちゃいましょう。プレートは持ってきた?」
「あります」
そう言ってプレートを渡す。お姉さんはプレートを受けとると何か準備を始めた。スキルも登録しなきゃいけないなら誤魔化したほうがいいかな? 昨日仮洗礼が終わったばっかりだし、バレて取り消しになったら困るな。
「登録は何をすればいいんですか?」
「必要事項を記入してもらうだけよ。あと、血を1滴もらうわ」
仮洗礼の時にプレートを作った感じかな。どんな仕組みで登録されてるんだろう? 魔法とか魔道具を使っていそうだな。さすが異世界。
「それじゃあ、この紙に必要事項を記入してもらうんだけど、それは私が代筆するわ。質問するから答えてね」
「なんで代筆なんですか? 自分で書きますよ」
一々めんどくさい。自分で書いたほうが早く終わるだろうに。
「机まで届かないからね。文字を書けない子も多いし」
あ、確かに届かないわ。踏み台がなければ何も出来ないなんて、なんて不自由なんだ。身長よ、早く伸びろ!
私の様子を見ていたお姉さんは、カウンターの奥からちょうどいい高さの木箱を持ってきてくれた。
「これに乗れば届くかな。……うん、大丈夫そうね。じゃあ記入しちゃって」
「はい」