軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7、学園案内

「よし。じゃあ、夜は新入生歓迎会だ。これから学園の案内がてら寮に連れてく。二年が面倒見てくれるから、ちゃんと言うこと聞けよー。そして分からないことがあったら、先輩に聞くように。

明日は一限から早速授業だ。時間に間に合うようにこの教室に来ること。持ち物は筆記用具のみ。以上。質問あるやつー?」

質問は出なかったのでホームルームは終わり、ヒューガンに学園を案内されることに。

「ラゼちゃん!」

フォリアは真っ先にラゼの元へ駆け寄ってきた。

彼女たち二人以外に、このクラスには庶民がいなかったので、頼りにされているのは間違いない。

「特待生なの? 凄いね! びっくりしちゃったよ」

「フォリアも治癒魔法が得意型なんて珍しいね。驚いた。私の移動系って、パッとしないから羨ましいよ」

「そんな事ないよ。わたしは移動の魔法が得意型の子に会ったのは、ラゼちゃんが初めて。魔法もたくさん種類があるけれど、どれも素敵な力だと思うの」

にこっと笑って見せるフォリアは、まるで天使の若く清い。

鈴の音のような声も、聞いていてとても心地が良い。

「そうだね、ありがとう」

ラゼも素直に答えながら、フォリアの腕に覗いたチャーム(魔石のついた道具や装飾品などを指す)を確認した。

ブレスレット型のチャームには、白い魔石。

得意型の属性に合った石を使うと、魔法の質も上がる。

いいチョイスだとラゼは思った。

「可愛いチャームだね」

「ありがとう。ラゼちゃんはピアスなんだね? 穴開けるの、怖くなかった?」

「ん? 魔法で開けてもらったから、平気だったよ。ピアスだと無くさないから、これが一番なんだ」

ラゼのピアスは石が綺麗にカットされて埋まっているだけ。魔法でがっちりピアスを留めているので、何かの弾みでとれることは無い。

これは軍で作ってもらったものなので、お洒落で付けているアクセサリーではない。

戦闘用と言っても過言ではなかった。

貴族サマのデザイン性が高いチャームを見るとそれは一目瞭然だ。

ただ、魔石の大きさと内包する魔力の強さは比例しない。

大切なのは、魔物自体の強さと、採集した魔石の核となる部分をうまく削り出せるかというところ。

ラゼが付けている魔石は、彼女自身が採集して、軍の優秀な友人に頼んで加工してもらったので、小さくても十分な威力が出る。

魔石の力を引き出すことができなければ、ただの石っころでしかないのだ。

言わずもがな彼女の魔石起動は玄人のそれである。

まあ、見ただけでは確かめることはできないので、誰もラゼの実力など知る訳がない。

「ここが訓練場な。向こうに見える〈時の塔〉は職員用だから、よっぽどの事がない限り入るなよ。東には花畑がある。荒らすとすげー怒られるから気を付けろ」

外廊下に出て見えたのは、広い校庭。ここを訓練場と言うらしい。

その奥に見えるてっぺんに大きな時計が見える塔は〈時の塔〉。ゴシック建築で緻密なデザインが美しい。

教員たちも学園に住むことになっているので、大切なプライベート空間だ。

花畑には今度足を運んでみるとしよう。

「凄い広いね」

「うん……」

ラゼは色々な場所に偵察している身なので、学園の広さをあまり感じなかったが、ここに張ってある結界については興味が惹かれた。

彼女は他の生徒とは違い遠くを見つめ、どこまでが防御範囲なのか調べてみたいと思う。

尤も、そんなことをしたら問題児になるのでやめておくが。

来た道を引き返し、突き当たりを今度は左に曲がる。扉を開いて外に出ると石畳の道が続き、その先には門が見える。

「向こうは、〈フィーザ商店街〉だ。庶民の町並みを意識して作られた街で、普段気軽に外に出掛けられない君たちも、ここでは気兼ねなく買い物ができる。出店している店も様々だから、楽しめるはずだ」

これには生徒たちが目を輝かせる。

庶民からすれば、商店街などいつでも行ける場所なのだが、彼らからすればちょっとしたテーマパークのようなものなのかもしれない。

(貴族サマも苦労してるんだな〜)

呑気にそんな様子を伺っていると、ラゼは衝撃的なものを目にする。

「アディス様。今度よろしければ一緒に商店街に遊びに行きませんか?」

「あ、わたくしが先に誘おうとしていましたのに!」

「いいえ、わたしと!」

「アディス様、次のお休みの日、私とどうですか?」

——………なんだ、あれ。

いつの間にか、死神の息子がクラスの女子を侍らせている。

ラゼは呆然として小さな人だかりを観察する。

一体、死神の息子は何と答えるのか?と。

「お誘いありがとう。じゃあ、今度みんなで一緒に行こうか」

「「「きゃあ〜!!」」」

「………うわぁ」

「無いわね」

非難の声が重なり、ラゼは慌ててフォリアとは反対側の隣を見る。

「よかったわ。同志がいて」

「モーテンス様……」

そこにいたのは外務大臣の一人娘。

カーナ・フット・モーテンスだった。

彼女は薄い紫色の縦巻きロールが似合う、可愛らしいと表現するべきフォリアとはまた違う綺麗系な女の子だ。

笑うと目の下のほくろが色っぽい。

ラゼは思わず見惚れてしまった。

「さすがにあれは無いわよね。まともに話が出来そうな子がいて良かったわ」

「と、とんでもないです」

「ふふ。そんな無理はしなくて良いのですよ? ここは同じ試験を突破してきた者たちが集まる場所。あなたは特待生なのでしょう? もっと自信を持っていいと思うわ。

わたくしのことは、是非カーナと呼んでください。ラゼさん。それにフォリアさんも」

A組の女子のなかで、一番位の高いお嬢様に話しかけて頂けるとは光栄だ。

ラゼはにこりと笑う。

「わかりましたカーナ様。これからどうぞよろしくお願いします」

「カ、カーナ様。わたしまで、ありがとうございます」

「いいのよ。わたくし、フォリアさんとは絶対に仲良くなるって決めていたんだから」

それはフォリアのことをずっと前から知っているかのような口振りだった。

ラゼはカーナの言葉に少し引っ掛かったが、きっとフォリアが可愛いから入学式の時にでも声をかけようと決めていたのだろうと納得し、それ以上は考えなかった。

「そうだ。殿下! クロード! ふたりも一緒にどうかな?」

アディスがルベンを巻き込む声が聞こえて、再びラゼはそちらに顔を向ける。

今の一声で、さらにアディスのもとに足を踏み出すお嬢様が増えた。

——ああ、クラスの男の子が可哀想だ。

あの殿下さえため息をついていらっしゃる。

殿下と乳兄弟にあたるクロード・オル・レザイアも、眼鏡の下から冷たい目線をアディスに送っていた。

この世界の人間は前世と比べて成長が少し早く、大人びた少年少女が多いとは思っていたが、こんなマセた男子生徒がいるとは。

彼女はクラスの男子たちに哀れみの目を向けた。

「何というか、その。凄いわ。いろんな意味で」

「う、うん。そうだね。でもみんなでお買い物は楽しそうだよ?」

——なんて心の清い子なんだ。

ラゼはフォリアの手を掴む。

「私が一緒に行ってあげるから、フォリアはフォリアのままでいて」

「えっ、一緒に行ってくれるの?!」

「うん」

「やったぁ」

まだ出会って数時間だというのに、ラゼはフォリアが彼の餌食になることは見逃せなかった。

こんなに純粋な子、すぐに悪い奴に騙されそうで危なっかしい——。

「カーナ様もいかがでしょうか?」

「是非。嬉しい。誘ってくれてありがとう」

カーナも誘ってみると、彼女も満面の笑みで頷いてくれる。

正直、自分が男だったら今ので落ちていたな、とドキドキしながらラゼはいつの間にか両手に華を携えていた。