作品タイトル不明
36、二年生になりました
そうして時は過ぎ。
「二年生かぁー」
ラゼはセントリオール皇立魔法学園の二年生になった。
三年生はそれぞれ選んだ道に進み、新しく入ってきた後輩たちには新鮮さを感じる。
アリサとマリーが使っていた部屋に移り、自分たちの部屋には可愛い後輩が。今度は自分たちが彼女たちに色々と教えてあげる番になった。
冬季長期休み明けでまた少し体重が落ちたが、学園で美味しいご飯を食べられるのですぐに戻る。
カーナとフォリアに一緒に遊ぼうと言われたが、今回も断ってしまったので次の休みは意地でも参加したい。
「ラゼ!」
「カーナ様。おはようございます」
一年生と変わらない座席に座って本を読んでいると、カーナが少し興奮した様子で話しかけてくる。
「これを見て。今年、学園祭をやろうと思っているの!」
「セントリオール学園祭計画」と書かれた冊子を渡されて、ラゼは目を細めた。
乙女ゲームのシナリオ通り、学園祭を開催するようだ。きっと前までの彼女ならば、破滅フラグを気にして実行に移れなかっただろうが、今では殿下と青春したいという思いが先に出ている。
「良いですね。楽しそうです」
「でしょう? それで、ラゼにお願いがあるの。学園祭運営委員会に入ってくれないかしら?」
「え?」
「前世の記憶があるラゼが入ってくれると心強いんだけれど。駄目?」
そんな上目遣いでお願いされてしまったら、答えはイエス以外ない。
「駄目じゃないです。是非、お手伝いさせてください」
ラゼは食い気味でオーケーを出した。
「皆さん。今回は学園祭の開催にお力を貸していただきまして、誠にありがとうございます」
運営委員会に集まったのは、ラゼを除いて当たり前のように乙女ゲームの役者の皆さん。
使わなくなった教室を拠点にして、これから秋に行われる学園祭を成功させるべく動き出す。
初めての試みなので、色々と失敗もあるだろうが、きっとやりがいのある仕事になることだろう。
(学園祭編か……。これはまたイベントが待ってるよ)
一人だけ他の心配をしながら、ラゼはこれからのスケジュールについて話を聞く。
まずは生徒の皆さんに学園祭とはどういうものなのか、ということについて理解してもらう必要がある。
イメージが湧かないと運営が進まない。
「という事で、学園祭のイメージ動画を作ろうと思います」
この世界でそんな事をやろうとするカーナには尊敬する。
それならば、軍にある戦闘シミュレーション用の機械を使えば簡単にできると思うのだが、さすがにそうとは伝えられない。
どうするのかなと様子を伺っていると、ルカが手を挙げた。
「それなら、僕の魔法でなんとかできると思う」
さすが金の卵。自力でどうにか出来ることに驚きだ。
「ありがとうございます、ルカ様! 内容はわたくしとラゼで作ります。お願いしてもいい? ラゼ」
「はい」
ラゼにも前世の記憶というものがあるが、それは記憶というだけで、自分自身ではやったことがない。
少し不安になったが、意欲に満ち溢れたカーナを前にすると、どうにかなる気がしてくる。
こうして、学園祭編が幕を開けた。