軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第9話・開発は容易くはいかないようで

さてさてさてさて。

そもそも? 俺のスキルは本来は営業であって、職人でも専門家でもない。だから? 水車作りみたいな作業はもともと得意ではないのであって? 職人技が必要な作業はさっさと職人に任せるとしまして? お次に取り掛かるのは木炭作りである。

動画配信サイトでサバイバル動画を見た時に見たのか、何かの漫画でやっていたのか覚えていないが、水をろ過するのに木炭が良いという知識だけは知っていた。少し前だったらそんな事に木炭なんて贅沢な、水なんて川からダイレクトで飲め! くらいの常識だったかもしれないが今は違う。アルメルライトのおかげで燃料関係には余裕が出来ている。

そのろ材としての木炭数本を、樹皮で巻き寿司のように囲って麻縄で縛る。樹皮は木炭よりも長くしてあるので、ここに水を流せば水はろ材である木炭を通過してからしか下へ落ちる事が出来ない。これで、ろ過器の完成である。

囲っているのが樹皮である、という事を考えると樹皮から水がボタボタ漏れてくるのでは? と思うかもしれない。

聞いて驚け、全然出て来ない。え? ペットボトル? ってくらい出てこない。長時間立てば浸透してくるのかもしれないが、俺はその状況を知らない。――実は、特定の樹皮は耐水性が高いのである!

これを知った時はぶったまげた。木の皮を剥いで形を整えれば、それで水もご飯も頂ける。水を入れた樹皮のお椀を焚火にあてれば沸騰させてお湯に出来る。そのままでは建材になり、木炭になれば燃料にもろ材にもなり、皮は条件次第で耐水性も対火性も高い。万能アイテム! 木!

なんでこれを知ってたかって? 勿論営業――ではない。シンシアである。

クリスティーナとサーシャと俺とシンシアの4人でエレメンタルのコアを調達しにサバイバルした際、シンシアが教えてくれたのである。どの木がおススメかも、その時の経験で知っていた。

汲んだ川の水をそのろ過器に通し、出て来た水を樹皮のコップに注ぎ、そして、試飲!

「…………」「…………」「…………」「…………」

せっかくなので、俺、クリスティーナ、サーシャ、シンシアの4人で同時に飲んだのだが、皆一様に、反応が無い。残念ながら、同じ感想だったと思うべきだろう。

気を遣って、シンシアが言った。

「なんかこう、少し感触が柔らかくなっているような?」

プロのソムリエみたいな事言ってる。

サーシャが代表して言う。

「……違い、解らない」

完全に同意である。

しかしまぁ、ろ過しただけであり、安全な水にしただけだ。ミネラルウォーターみたいに味が変化するわけでも無ければ、そのための開発でも無い。浄水装置の心臓、ろ過器が完成した。これが一番重要だ。

では次、貯水槽。ろ過した水を溜めなければならない。ただこれは、気持ちとしては大きくして沢山の水を保管したいが、小さくしたほうが良いだろう。

現代日本の水道水。これが何故沢山の水を保管し、一斉に送れるのか。数日置いた蛇口からも安全な水が出るかというと、次亜塩素酸という殺菌成分をごく微量だけ混ぜる事で菌が発生しないようにしているためだ。だから現代日本では大量の貯水が可能となっている。

しかし、この世界のこの時代にそんな殺菌成分をごく僅かだけ定量注入する装置なんてあるわけが無い。殺菌成分の注入は、上水では不可能だ。菌だけ殺して人に害しない程度の注入量というのは至難の近代技術なのである。

というわけで、大量保管は諦める。小さな水槽で良い。

と、なればやる事は決まっている。――そう、外注である。本当は本人に来て欲しかったけどフラれ、自分の娘と父親を送り込んできた鬼畜職人、ケイシーに依頼の手紙を送った。こういう水槽を鉄で作って欲しい、と。

返事は早かった。『ミリアムにやらせろ。他の奴にやらせたら金輪際お前の依頼を請けない』短文の圧が怖かったので従う事にした。ミリアムには悪いが、水車作りが終わったらすぐに水槽作成をしてもらおう。

では。

これはトライ&エラーが必要な工程になるだろう。

上水配管作りである。

ひとまずは、安牌な土魔法配管から始める。

土魔法でカチコチに固めた土を数メートル作成。水を通す。無事に通る。

では、先端に蓋をして、高さを付けて、土配管内部に水を溜める。数メートルサイズの水筒みたいなものをイメージしてくれたら良い。

無事に水漏れ無し。

よし、よし、いいぞ、とガッツポーズを内心に決め、次の工程。配管を何度か曲げつつ、距離を伸ばした、その時。

当然のように、曲がり角で配管が割れ、溜めた水がそこから噴き出した。

その作業は数日に渡った。

何度試験しても、曲がり角で配管が割れる。曲がり角は中の水の力(水圧)の掛かり方が変わるのか? と思い、分厚くしてみる。すると、分厚くしていない箇所が引きちぎられるようにして配管が破損した。

「………………」

土魔法では限度があるらしい。となれば、土魔法に依存し過ぎない配管作りが必要だろう。

土配管の次は、木配管である。接続部の加工が難しい箇所は土魔法で補強しつつ、基本は木を加工して作る配管。

本当は竹のような物があれば理想的だったが、残念ながらこの近郊に竹は無いようだ。

しかし、結果は同じだった。

土配管、木配管の両方がダメになってしまった。比較的加工が容易な銅配管にするか? 銅は鉄より安価だが安物では無い。俺の今の資産があれば問題は無いが、再現性の無い土地開発にいまいち魅力を感じない。どうせなら、他の地域でも真似出来るものが理想だ。

何か、何か無いか。

土配管と木配管の改造と試験のみで――数か月が経過した。