軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74 宝探し 3

どんよりとした眼の、私と中隊長さん。

どうやら、この邸には、金塊や金貨の山は無さそう……、って、ちょっと待った!

さっき、私は最初に中隊長さんの巾着袋を探知した後、探知機をどう設定した?

そう、『対象は金の量が300グラム以上にして』だ、確か!

地球での金貨1枚の価格が、手数料を取られるとはいえ、25000円相当。そして、金貨1枚の重さは、10グラムもない。500円玉より僅かに重いような気がするから、多分、8~9グラムくらいだろう。地球の4分の1オンス金貨と同じくらい?

ということは、硬度を増すために他の金属で増量されていることもあり、20枚程度ならば、金の重さは150グラム前後? それならば、探知機が反応しないはずでは?

私は、急いで探知機を弄り、金庫の対象外指定を解除した。そして、探知対象を「500グラム以上」に設定。

……針は、金庫を指し示した。

部屋を飛び出す私に、何事かと、慌ててついて来る中隊長さん。

そして私が向かったのは、勿論、金庫が置かれた壁側の隣室である。

鍵が掛けられていなかったその部屋は、どうやら中隊長さんの、というか、「子爵様」の執務室だった模様。まぁ、金庫室の隣を子供部屋にするような者はいないか。色々な配慮から。

しかし、もしかして、すごく無礼で非常識なことをしちゃったかな、私。

まぁいいか、中隊長さんも、固いことは言わないだろう。

そして、室内で探知機の針を見ると。

……うん、隣の部屋、金庫室の方を指し示している。

「壁を剥がしましょう!」

「う……、うむ!」

そして、使用人達が呼ばれ、書斎側から慎重に壁を剥がし始めた。金庫室側からやらないのは、金庫を動かすのが大変だからである。

そして、しだいに壁が削られ、遂に金属が!!

うん、隣の部屋の、壁にぴったりとくっつけて置かれた金庫の背面だよね、当然……。

どうやら、壁を貫通したようだ。そして、壁の中には、本来の壁の構成物以外、何もなかった。

「では、小金貨1枚分は、このくらいで……」

「待て! ちょっと待てええええぇ~~!!」

そっと帰ろうとした私の襟首を掴む、中隊長さん。

あんまり興奮すると、ハゲるよ。

と言うか……。

「首! 首、締まってますうぅぅ~~!」

まぁ、当たり前か。

「どういうことだ……」

さすがに、不機嫌そうな中隊長さん。使用人達は、既に下がらせている。

ま、期待させられた上に、邸の壁を壊されて、何も無し、というのでは、無理もないか。

仕方ない、こうなったら、奥の手だ!

「宝石探知機ぃ~!」

肩に掛けたままのバッグに手を突っ込み、掴み出した新たな機械。これぞ、宝石探知機型のポーション容器だ。

「探知対象、コランダム、ダイヤ、真珠。捜索範囲、半径80メートル。セット、レディ!」

ルビーとサファイアが属するコランダム、ダイヤ、真珠を対象とすれば、金以外の財宝ならば必ずヒットする。そして今度は、位置が判りやすいように、方位指示方式ではなくPPIスコープ(Plan Position Indicator scope)で行く。あの、現代地球で普通に使われている、平面上に棒が回って、目標を探知するとその場所がピカッと光るやつだ。

そう、私は学習する女性なのである。

よし、探知開始、スイッチ・オン!

探知反応なし。

……うん、知ってた。

そもそも、特定の宝石とかではなく、「財宝」とか言われて、金製品がほとんど無いとか、あまり考えられない。では、これはどういうことか。

1 アンチディテクションフィールドに覆われている。

2 財宝は、金でも宝石でもないものである。

3 ここにはない。

4 どこにもない。

5 中隊長さんの頭の中にだけある。

そして。

A 元々、そんなものはなかった。

B 御先祖様の、『一切れのパン』作戦であった。

C 以前はあったが、とっくに使い果たされた。

複数回答可。

中隊長さんにそう言ってみたら、両手の拳で頭を挟まれて、コメカミをぐりぐりされた。いわゆる、「ウメボシの刑」というやつである。地味に効く。

そして、中隊長さんが完全に無表情なのが、怖かった。とてもとても、怖かった……。

まずい。何とかしなくては。

余裕がなくなってきた様子の中隊長さんに、さすがに危機感が募ってきた。明日の朝、川辺に浮かぶのは嫌だ! 考えろ、考えるんだ、私!

うぬぬ、ぐぬぬ、ふぬぬぬぬぬぬ!

あ。

あああああああ!

私は、最初の探知機、金を探知する方のをバッグから取りだした。

スイッチ、オン!

そして、その指し示す方へと探知機を突き出すと、壁に開けた穴を通過して、穴の向こうの金庫の背にぴったりと……。

私は、物も言わずに部屋を出た。そして、慌ててついて来る中隊長さん。

廊下で方位を確認。

金庫室より向こうへ行って、再び方位を確認。

……うん、間違いない!

鍵が開いたままの金庫室へと戻る私。

開けっ放しとか、不用心な!

まぁ、白昼堂々と貴族家に盗みにはいる者はいないか。そもそも、貴族家が完全に無人になるようなことはない。幾人かの使用人は、必ず残っているのだから。

そして、金庫の前に立つ、私と中隊長さん。

中隊長さんは、わけが分からないながらも、私の様子から何かを察している模様。そして……。

「何か、傷が付いても構わない、硬いものを!」

「う、うむ!」

中隊長さんがすぐに差し出してきたのは、巾着袋から取りだした銀貨。

まぁ、純銀じゃないし、アレよりは硬いか。

なので、銀貨を受け取って、おもむろに引っ掻いた。……黒塗りの金庫を。

がり。

がりがり。

がりがりがりがりがり……。

そして、何重にも重ね塗りをされた塗装が削れ、その下から金庫の地肌が現れた。黄金色をした地肌が……。

「おお! おおおおおおお!!」

両眼を見開き、床に両膝を着く中隊長さん。

「おおお……。父上、御先祖様、そして神よ! 我がラルスリック領の民は、 此度(こたび) の危機をも乗り越えて、雄々しく未来へ向かって進みますぞ……」

「……でも、そんなにしょっちゅう不作だ何だと危機に陥っていたら、そのうちこの財宝も使い果たしちゃって、いつかは滅びるんじゃ……」

「う、うるさいわ!!」

感動のシーンに水を差したからか、本気で怒られた。