作品タイトル不明
465 危 機 3
「カオル、ここは一旦引き揚げて、仕切り直そう。
……でも、その前に確認しておきたいことがあるんだ」
困った事態に陥ったというのに、不敵な笑みを浮かべている、レイコ。
よし、レイコが本気を出した!
私達3人のうちで一番頭の回転が速く、知識量も多いレイコ。
そのレイコが『確認したい』と言うなら、それは確認しなきゃならないことなんだ。
なので、こくりと頷く、私と恭ちゃん。
「 搭載艇(これ) じゃデカ過ぎるから、4座の小型艇で出よう」
「「 了解(ラジャー) !!」」
* *
4座の小型艇で搭載艇から出た、私達。
勿論、ファルセットとレイアも乗っている。
ちょっと詰めれば、小柄な私達なら5人くらい問題なく乗れる。
そして、高度を下げて魔物達が視認できる高さで静止。
「まず、私が魔法で攻撃してみるね。
アイス・ランス!」
火災が起こらないよう、火系統は避けて氷の槍を放ったレイコ。
それが単独で行動していた1頭のオーガに命中し、どさりと倒れた。
「サンダー・アロー!」
次に、レイコは雷系の単体攻撃魔法を放った。
そして、倒れる1頭のオーガ。
「うん、問題なく攻撃が通るね。上空からの攻撃だから防がれる、ってことじゃないか……。
そして、実体弾でも電撃でも問題ない、と……。
じゃあ、今度は大きなやつで。
広範囲雷魔法、サンダー・シャワー!」
おお、レイコの奴、大技を出してきたな。
空中にたくさんの稲妻が走り、それらが一斉に地上に向かって……、落ちなかった。
「「……あれ?」」
地上に向かった雷は、全て途中で消滅した。
「ふむふむ……。じゃあ、次は……」
レイコは、何やら呟きながら、次の攻撃魔法を放った。
「アイシクル・アロー!」
そして単発ではなく、多数の 氷柱(つらら) がオーガ達がいる地面に向かい、……途中で消滅した。
「ふむ、大体分かった。
じゃあ、カオルと恭子も各種パターンで確認してみて」
「……あ、うん……」
レイコが何を確認しようとしていたのか、概ね分かった。
なので、私は爆裂ポーションを投下したり、ナパーム弾のようなものを投下したり……。
恭ちゃんは、小型艇の武装である小口径のビーム砲だとか、携行武器であるビームライフル、ビームガンとかを試していた。
この小型艇には、爆弾やミサイルのようなものは搭載していないらしい。
そしてその後、レイコの指示で火薬式の武器……機関銃、自動小銃、狙撃銃、拳銃とかを創らされた。
……勿論、ポーションの容器として私が創ったのだ。
創れるだろうとは思っていたけれど、今までこの手のものは創ったことがなかった。
いや、私には射撃の才能なんかないと思うし、絶対に事故ると思っていたからね。誤射とか、暴発とか、盗まれるとか……。
でも、今はそんなことを言っている場合じゃないから、とにかく色々と創って確認作業をするのが最優先事項だ、とか言われたから、仕方なく……。
『最優先事項』って、お前はみずほ先生か!
……いや、レイコなら、ゲンドウ氏の方か……。
あ、火薬式の銃器での射撃は、レイコが行った。
さすがに、ど素人の私に撃たせるのは心配だったらしい。
レイコと恭ちゃんは、前世で国外の射撃場とかで色々な銃器での射撃訓練をしたらしいのだ。
だから恭ちゃんも撃てるはずなんだけど、……レイコが『私が撃つ!』と言って引かなかったのだ。
……まあ、理由は分かる。
恭ちゃんに火薬式の銃器は持たせられないよなぁ、常識で考えて……。
火薬式の武器は、恭ちゃんの母艦で造ることもできるだろうけど、今は時間がないからと言って、私に創らせたらしい。
まあ、私が銃器の詳細を知らなくても、セレスの命令に従っているのであろう『魔法っぽいことの担当システム』さんが良きに計らってくれたのだろうな、うむうむ……。
改造拳銃やジャンクガン、サタデーナイト・スペシャルみたいに、しょっちゅう故障したり銃身炸裂したりはしないだろう。
……しないよね?
そしてその後、地上に降りて、上空からではなく地上での攻撃についても実験を繰り返し……。
「……よし、帰投!」
ようやくレイコが検証作業の結果に満足してくれたので、今日はこれで引き揚げることになった。
……森の一部が、ちょっと荒れちゃったなぁ……。
まあ、大規模な自然破壊を回避するための 貴(とうと) い犠牲だ。森の木々も、分かってくれるだろう。
* *
「じゃあ、分かったことを纏めるわよ」
お店の2階に戻って、お茶とお菓子の用意をしてから、みんなで検討会。
まあ、ファルセットは聞き役に徹するだろうし、レイアは黙々とお菓子を食べ続けているから、実質的には 私達(KKR) 3人での話し合いになるだろうけど……。
そして、今回の仕切り役はレイコだ。
検証作業の内容を一番理解しているのはレイコなので、これは当然だ。
「まず、検証の結果分かったことだけど……。
上空からの攻撃、地上での攻撃の別に関わらず、結果は同じ。
魔法、実体弾、エネルギービーム等の別に関わらず、通常の単体攻撃は有効で、あまりにも強力なものとか、対集団用の攻撃、面制圧の範囲攻撃とかは無効化される。
爆弾系は、火炎瓶か威力の弱い手榴弾や 擲弾(てきだん) 程度ならOK、それ以上は無効化される。
つまり、私達は数十頭の魔物相手ならある程度無双できるし、バリア、乗り物の船体強度、そして空を飛んで逃げられることから、安全性も高い。
……相手が数十頭とか、いつ逃げても問題ない場合は、ね」
うん、それは分かる。
でも、それって……。
「だけど、大量の魔物が森から溢れ出て村や町を襲ったり、魔物の 大暴走(スタンピード) が起きたりした場合は、止められないよ。
数千、数万の魔物が一度に突っ込んで来たら、いくら私達が頑張っても、ショボい単体攻撃だけじゃあ焼け石に水でしょ?
かといって、毎日少しずつ間引いたって、その反動で増える数の方が多くちゃ逆効果だし……。
セレスが戻るまでに魔物が森から溢れたり、 大暴走(スタンピード) が起きたりすると……」
「「「「…………」」」」
今度は自分にも理解できる話であり、かつ内容が非常にマズいものであるため、 私達(KKR) だけでなく、ファルセットも顔色が悪い。
いくら戦闘狂かつ手柄を立てたいと思っていても、大勢の非戦闘員が魔物の群れに殺されるというのは、本意ではないらしい。
バーサーカー(エインヘリヤル) であるファルセットにも人間らしい感性があるようで、ちょっと安心した。
……いや、戦いで活躍する機会を得た時の、フランセットのあの満面の笑みとグルグル目、そして『うひひひひ!』という奇怪な歓びの声を何度も見聞きしているから、 女神の守護騎士(エインヘリヤル) というものにはどうしても不安感があるんだよ……。
普段は、温厚で優しいお姉さんだったのだけどなぁ、フランセット……。
軍人はみんなそう、ってことはないよね、さすがに……。