軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

447 他大陸への旅行 6

「……ねえ、恭子。どうしてそんな 領主(ヤツ) 、そのままにしてるの?」

レイコから、至極尤もな質問が……。

うん、誰でもそう思うよね、普通。

「え? だって、 領主(アレ) がいなくなって、代わりに比較的マトモな領主が赴任してきたら、困るじゃない」

「「え?」」

まともな領主が来て、何が困る?

レイコと共に、頭の上にはてなマークを浮かべていると……。

「だって、いい領主が頭を下げてきたりすると、無下にできなくなるじゃん!」

「「あ……」」

確かに……。

恭ちゃんにとっては、相手が悪いヤツである方が、遠慮したり気を遣ったりせずに済むから、気が楽なんだ。

「それに、小悪党で嫌な奴だけど、領民を殺したり若い娘を無理矢理、とかいうのはやらないんだよね、アイツ……。

貴族としては、まあ、中の下か、下の上、ってトコかな。

だから、ちょっとからかってあげる程度でいいんだよ。別に、根切りだとか一族郎党皆殺しだとかの必要はないからね」

「…………」

おいおい、恭ちゃん。

私達はいいけど、ここには副ギルド長さんもいるんだぞ。

ほら、蒼くなって、固まってるじゃん……。

いや、固まってはいないか。プルプルと、小刻みに震えてるよ。

まあ、領主一族の皆殺し、なんてことをこんなに簡単に口にされちゃあ、 堪(たま) んないか。

誰かに聞かれれば、それこそこっちが一族郎党皆殺しにされちゃうよね。

……それが、恭ちゃん以外であった場合には、だけど……。

「まあ、いいや。

はい、これ、納品分と、副ギルド長さんへの個人的なお土産だよ。いつもお世話になってるし、馬鹿領主への防波堤役をしてもらってるからね」

「えええ! いつも、すみませんねぇ……。ありがたく戴きます!」

うん、こういうのは、遠慮なく、喜んで受け取ってくれる方がいいよね。

遠慮されると、せっかくの贈り物なのに、あまり欲しくないのかな、って思っちゃうからね。

大袈裟に喜んでくれる方が、贈る方も気持ちいいからね。

……そして、『まあ、いいや』なんだ、領主のことは……。

「いいの? 領主のこと、放置していて……」

「うん、どうせ私達はまた遠くへ行くから、連中には手出しのしようがないでしょ。

この件にはハンターギルドは絡んでいないし、いくら領主でも両ギルドに無茶なことはできないし……。

領主の配下も領軍の兵士も、妻や子供がいるし、みんな地元の住人なんだよ。商人やハンターに手出しするような命令はできないし、ギルドを敵に回すと、領内がぐちゃぐちゃになっちゃうから、馬鹿な真似はできないよ。

そういう小心者で、悪党にはなり切れない小物だから、ここの領主を続けさせておく方がやりやすいんだよね、みんな……」

あ、副ギルド長さんが、こくこくと頷いてる。

……そうか、確かに変に野心や向上心のある者が新領主としてやって来るより、現状維持の方がいいのか、みんなにとっては……。

どんな人物でも、需要というものがあるんだなぁ……。

「それに、領主邸を破壊すると、その修理に使われるお金は領の運営費から出るわけだからね。

税金が高くなっちゃうと、領民の皆さんに申し訳ないよね」

あ、恭ちゃんの追加攻撃に、副ギルド長さんのこくこくの勢いが激しくなった。顔色も、真っ青だし……。

そろそろやめてあげないと、副ギルド長さんのライフがゼロになっちゃうぞ、恭ちゃん……。

* *

そういうわけで、納品物と副ギルド長さんへのお土産を渡し、納品分の代金を受け取った私達は、旅行を終えて帰ることに。

「……でも、領主に何もしないのもアレかなぁ。以前、色々とちょっかいを出されたし……。

今回の供給元が私だとは気付いていないみたいだけど、商業ギルドやハンターギルドの人達に迷惑がかかってもいけないし……。

よし、ちょっと警告しとくか!」

「今回のは恭子だってバレていないのに、わざわざバラすの?」

「ううん、そんなことはしないよ。ただ、警告するだけ」

「「…………」」

何となく、恭ちゃんがやりそうなコトの見当が付く。

長い付き合いだからね、私達は……。

* *

どご〜〜ん!!

「「「「「「うわあああああああ〜〜!!」」」」」」

空から、領主邸の正門近くへと落ちてきた、鉄の女神像。

石ではなく鉄製にしたのは、落下の衝撃で割れないようにである。

大きさは1メートルくらいであり、落下の衝撃で破損しないように、細かな突起部分とかはなく、ずんぐりした作りになっている。

不可視シールドで覆われた搭載艇からの投下であり、あまり高高度からではない。

下手して死人や怪我人を出しては大変であるし、いくら鉄製でも、あまり強い衝撃だと、細部は壊れたり潰れたりする。

あまり大きなものにしなかったのは、鉄もこの世界ではそれなりの価値があるため、金目のものをプレゼントしたくはなかったからである。

……まぁ、天から降ってきた女神像を鋳つぶして売り払うなどという罰あたりな真似ができる者など、そう多くはないであろうが……。

小心者のこの領主であれば、恐れおののいて大切に祀り、女神の目を気にして己の行為に気を付けるようになるだろうとの恭子の配慮であったが……。

「おおお! 女神が、我が一族に祝福を賜れたぞ! おお、おお、おお!!」

これが警告だとはカケラも思わず、領主は大喜びではしゃぎ回っていた。

……確かに、天から女神像が降ってきたなら、そう受け取ってもおかしくはない。

自分が悪人だとは認識しておらず、女神に認めてもらえるような人物だと信じていた場合には、であるが……。

恭子も、まさかこの領主が自分のことを正しい人間だと認識しているなどとは思ってもおらず、悪人である自分への女神からの警告であると受け取るに違いないと、疑ってもいなかったのである。

……馬鹿は、無敵。

そんなことには気付かず、十分な警告を与えることができたと信じて、本拠地へと向かって飛び去る一行。

地球においてそれなりの人生経験を積んだはずの恭子とレイコも、ここまで図々しい人間がいるとは考えもしなかったようである。

世の中、自分の想像を超えた人間が存在する。

恭子がそれを知るのは、次にこの町を訪れた時であった……。