軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

435 御用聞き 9

……勝った……。

いや、王様との謝罪合戦に、ね。

これは、決して負けるわけにはいかない戦いだった。

王様に頭を下げさせたなんて既成事実作ったら、後が大変だよ……。

そんなの、王様の弱味じゃなくて、こっちの弱味になっちゃうよ。

まあ、何とか謝り勝った。

……何か、よく分からない言葉だけどね、『謝り勝つ』って……。

満席の馬車の中では土下座はできなかったけど、まぁ、何とかなったから、これでいいや。

ファルセットは私が人間風情に頭を下げるのが我慢できなかったらしく、ブルブルと震えながら、必死で自制していた。

よかった、ファルセットも最低限の常識はあったか……。

「いったい、何と戦ってるのよ……」

レイコが、ポツリとそう呟いた。

多分、本当はその言葉のアタマに『ふたりとも』って付けたかったのだろうけど、それを付けちゃうと王様に対する不敬な発言になっちゃうから、私だけに向けた言葉のように取り繕ったのだろう。

……多分、みんなにはモロバレだろうけどね。

その後、王宮で少し話して、解散。

何とか早めに、という案件は今日のふたりだけらしいけれど、他にも、戦争やら魔物との戦いやらで手足を欠損した貴族とか、慢性的な病気の者とかがいるらしい。

でも、みんなすぐにどうこうという状態じゃないから、一度に治す必要はないみたいだ。

……一度に全部治しちゃうと、私の ありがたみ(・・・・・) が薄れるからね、うん!

御使い様らしからぬ発言?

いやいや、別に私が口に出してそう言ったわけじゃないし、そもそも、私は一度も自分のことを『御使い様』だなんて言っていないよ。

王様達も、具体的にそう言ったわけじゃないしね。

何となく、 そういう雰囲気(・・・・・・・) を 醸(かも) し出していただけだよ、うん。

あ、ついでに、『お友達が、王宮を見学したがっている。王子様と王女様の案内で』って言ったら、快く了承してもらえた。

これで、恭ちゃんの御機嫌取りができる。よかった……。

王様達の顔が少し引き攣っていたような気がしたけれど、気のせいだよね、多分……。

レイコとファルセットが、『気のせいじゃないと思う……』とか呟いているけど、小さいことは気にしない!

* *

「本当? やったぁ! カオルちゃん、よくできました!」

お店に帰って、恭ちゃんに今日の首尾と、王宮の見学・王子様と王女様付き、について報告したところ、恭ちゃんにとっての最上級の褒め言葉である、『よくできました』をいただいた。

余程、嬉しかったみたいだな……。

「で、見学は、いつ? 明日かな? 明後日かな?」

あ〜〜、舞い上がってるな、恭ちゃんのヤツ……。

「日程はまだ決めていないよ。

次のお店の定休日で、調整してみるよ」

そう、お店が休みの日でないと駄目なのだ。

見学には、本人である恭ちゃんと、エスコート役の私は絶対に外せない。

更に万一の時に恭ちゃんを抑えるためには、私だけでなく、レイコも必要だ。

……そして、私達3人全員が登城するのに、ファルセットがついてこないわけがない。

なので、まだ店を店員と護衛達だけには任せられない以上、休みの日にするしかないのである。

* *

「連続で来て、すみません……」

翌日、私はファルセット……メイドモード……だけを連れて、再び登城した。恭ちゃんには内緒で、こっそりと……。

いや、恭ちゃんの見学日を伝えなきゃならないし、王様達に 注意事項(・・・・) を教えておかなきゃなんないからね。まだ、この世界を破滅させるわけにはいかないから。

日程だけなら、昨日のうちに伝えておくこともできた。

……でも、バタバタしていた昨日ではなく、落ち着いた場所で、じっくりと説明しておかなきゃならないことがあるんだよ……。

なので、連続の訪問に嫌な顔ひとつしていない王様達に、超重要な注意事項を説明した。

誠意を込めて、 真摯(しんし) に……。

「……いいですか? まず、当日訪問する4人のうち、私とおとなしそうな方のメイドは、多少のことがあっても構いません。

しかし、この子には、私達が危険だとか危害を加えられそうになっているとか思わせることが絶対ないように!

音を立てずに私達の後ろに立つとか、 懐(ふところ) に手を入れるとか、急な動作をするとかの行為をされました場合、その方の安全は保証いたしかねます」

「「「…………」」」

自分のことを危険物呼ばわりされたファルセットは、不愉快に思っている素振りなんか、欠片もない。

……というか、それは 女神の守護騎士(エインヘリヤル) としての、自分の当たり前の任務なので、誇らしそうに胸を張ってやがる……。

「……そして、それよりも重要なのが、王城の見学と王子様・王女様に会いたいと望んだ私のお友達、商人サラエットを、 絶対に怒らせては(・・・・・・・・) ならない(・・・・) 、ということです」

「「「…………」」」

王様達3人の顔が、引き攣っている。

まあ、無理もないか。女神の加護持ちの自由巫女が、一国の国王に向かって、『平民の新米商人である小娘を怒らせないように気を付けろ』って言っているんだ。殆ど、不敬行為だよねぇ。

「あ、これは別に『命令』とか『お願い』とかじゃないですよ?

ただ、 不幸な出来事(・・・・・・) が起こらないようにという、ただのアドバイスに過ぎませんよ?」

「「「…………」」」

* *

今、我々は、いったい何を言われているのか……。

成人しているかどうかという年若い女性商人を、 怒らせるな(・・・・・) 、と?

この国の国王、王太子、宰相に向かって?

…… アドバイス(・・・・・) 、だと?

そして、それは『御使い様』である自分や、『 女神の守護騎士(エインヘリヤル) 』である護衛の女性より危険であり、優先して配慮しなければならない者である、と?

……そんなもの、女神様本人以外にいるものかああああぁ〜〜っっ!!

宰相も息子も同じ結論に達しているのか、蒼白になっている。

そんなの、当たり前だ! 気絶していないことを褒められてもいいくらいだ!!

「……ど、どのような点に気を付けるべきか、そのあたりをもっと詳しく教えていただきたい……」

そう、失敗は許されない。……絶対に!!