軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

389 反 撃 3

聞きたいことは、全て聞いた。

なので、もうこの連中は用済みだ。

でも、攻撃する意思がない者に対する私刑、私的制裁というのは、法治国家で育った私とレイコには、ハードルが高い。

…… 私とレイコには(・・・・・・・) 。

だけど、この連中を官憲に引き渡すのは、ちょっとねぇ……。

コイツらは、色々と、 知っちゃいけない(・・・・・・・・) コトを知りすぎた(・・・・・・・・) からねぇ。

あ、いや、怪しいクスリで記憶を、という方法はあるけれど、頭の中を弄るのは、あまり気が進まないんだよねぇ。

頭の中を弄って、記憶や思考を操るのは、それはその人を殺すのと同じ、いや、それ以上にタチが悪い行為だと思うのだ。

それは、人間というもの、生命というものに対する 冒涜(ぼうとく) だ。

頭の中を弄られて、自分が自分でなくなる。

何と恐ろしいことか……。

本人達も、そんなことをされるくらいなら死んだ方が、と考えるだろう。

そう思い、レイコと恭ちゃんに相談していたら……。

「記憶の一部消去、大歓迎です!」

「「「「「「バッチ来~い!」」」」」」

……あ、そうなの?

でも、私としては、それは気が進まないなぁ……。

「あああ、忘れたい! 自分が盗賊の真似事をする依頼を受けたことと、それを実行したことを全部忘れて、真っ当な人間として生きて、かあちゃんに恩返しがしたいなぁ!」

「「「「「「したいしたい!!」」」」」」

「……うん、それなら……」

「騙されちゃダメだよ!

コイツら、今回の犯罪行為をなかったコトにしたいだけだよ!

本人達が覚えていなきゃ、罪に問えないじゃないの!」

「あ……」

恭ちゃんが言う通りだ。

本人が覚えていなきゃ、冤罪だとしか思わず、反省のしようがないよね。

そして、もし自白ポーションを飲ませたとしても、自分は無実だ、としか言わないよね……。

いや、自白ポーションも、あまり使いたくはないんだよね。

そういう、精神を操る系は、ちょっとね……。

まあ、騙されて私達が無実の人に対して攻撃したりすると大変だから、そこだけはちょっと確認するけどね。

それと、急いでいる時とか、人命に関わる時とかは、別だ。

アレだ、アレ。

『それはそれ、これはこれ』、『心に棚を作れ!』ってヤツだ。

あ、そういえば、このままじゃマズいよね。

さっきからの私達3人での会話では、コイツらをどうするか、という話の中で、犯罪奴隷という話題も出たのだけど……。

コイツら全員、両足を消し飛ばしたから、戦場でも鉱山でも働かせられないじゃん。

「みんな、これ飲んで」

そう言って、空中から次々とポーション瓶を取り出して、盗賊達に配った。

そして、素直にそれを飲む、盗賊達。

まあ、殺そうと思えば簡単に殺せるのだから、今更騙して毒を飲ませる必要なんかないということくらい、とっくに理解しているだろう。

だから、飲むのを拒否することには、何の意味もない。

ただ、私達からの不興を買うだけの、愚行。

……そりゃ、素直に飲むか。

そして……。

「あ、あああ、足があぁ!」

「「「「「「は、生えたああああぁ!!」」」」」」

そう。

盗賊達の足が生えた。

……片方だけ。

生えたのは、右足か左足が、それぞれランダムに。

いや、左右に散っていれば、27人に対して、靴が14足で済むかと思って……。

こんな島で裸足じゃキツいだろうから、靴も用意してあげようと思ったんだよ、うん。

「両足がないと、あまりにも動きづらいだろうからね。

片足あれば、松葉杖とかを使えばかなり自由に動けるでしょ。

何なら、反省度が大きければもう片方も生やしてあげてもいいし……」

「「「「「「あああああああああ!!」」」」」」

ありゃ、みんな、大泣きだ。

ま、そりゃそうか。

こんな文明レベルの世界で、足がないのはキツいだろうからねぇ……。

そして、既に私達が女神か御使いであると疑ってもいなかったらしき連中が、更に私達3人を女神だと駄目押しされた感じに……。

これはもう、私達が死ねと言えば死ぬよね。

いや、女神の命に従って死ぬなら、死後の世界や来世での幸せは約束されたも同然、とか言って、嬉々として死にそうだよ、本当に……。

「それじゃあ、私達は黒幕を潰してくるね。みんなをどうするかは、その後に決めるよ。

だからみんなは、それまでこの島で待っててね。

黒幕達は、力押しでプチッと潰すのなら一瞬だけど、反省するための時間をたっぷりと取ってあげるから、ちょっと時間が掛かるかも。

一応、水場とかを示したこの島の地図と、釣り道具、そして見本として松葉杖を3本、置いていってあげる。あと、靴もね。

見本を元にして全員分の松葉杖を作ったり、入れ物を工夫して水を運んだり、食べ物を確保したりと、ま、色々と頑張ってね。

あ、特別サービスとして、薪に火を付けてあげるから、雨が降る前に火種を守れる場所を確保した方がいいよ。

……何か、質問は?」

「「「「「「…………」」」」」」

うん、質問はないみたいだ。

展開が速すぎて、頭が追いついていないだけかもしれないけどね。

ま、殺されても文句が言えないのに、ここまでサービスしてあげたんだ、不満はないだろう。

「よし、撤収!」

「「了解!!」」

* *

天(あめ) の 浮舟(うきふね) に乗って、3柱の女神達が飛び去った後……。

しばらくの間、声もなく立ち尽くして……、いや、 転がり尽くしていた(・・・・・・・・・) 27人の男達は、徐々に再起動し始めた。

「あのお言葉から考えて、女神様達がお戻りになるのは、早くて数日後、遅ければ数カ月後ということもあり得るぞ! みんな、それまで頑張って、力を合わせて生き抜くんだ!

幸いにも、女神様は多くの御慈悲を賜れた。

とりあえず、3人で松葉杖とやらを使って、全員分の杖を作るための材料と、道具として使える石とかを集めよう。

その後、杖の構造を調べながら残り24人分の杖を作る。

それが終われば、全員で水場へと移動。その後、狩りをするグループ、果物や野草を採取するグループ、釣りをするグループ、そして洞窟か何かの、火種を守れる寝床を探すグループに分かれて行動してはどうだ?」

お目付役であった御者の男は、呆けて使い物にならない。

そして他の者達も皆、どうしようもない連中達のはずであった。

……しかし、奇跡的にも、その中にひとりの目端の利く男がいたらしい。

何の権限もない、偶然そこに交じっていただけの、ただのゴロツキのひとりに過ぎない男。

だが、なぜかその男は、片足を失ったというのに、少し楽しそうに見えた。

そして皆は、その様子に縋るべきものを見つけたかのように、のろのろと動き始めるのであった。