軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

373 次の段階 1

拠点の整備が概ね 調(ととの) い、 次の段階(ネクストステージ) に進めることとなった。

……そう、『上層部への、聖女エディスのバージョンアップのお知らせ』だ。

勿論、偉い人達全員にではなく、その内の話が分かりそうなまともな人、そして他の連中から私達を護ってくれそうで、秘密を守ってくれそうな者限定で、慎重に人選をして……。

普通の者達には、ぽんこつ巫女として。そして一部の者にのみ、力と恐怖を見せつける。

そうすれば、事情を知らない者には私のことは『一部の物好きな権力者が、野良猫に餌をやるような感覚で世話をしてやっている』と認識されて、わざわざ手出ししようとは思わないだろう。

そして サラエット(恭ちゃん) と キャン(レイコ) も、それぞれ遣り手商人と凄腕ハンターとして名を売る。

……あ、もう私とレイコは恭ちゃんのお店を手伝うのはやめて、それぞれの活動を再開しなきゃね。

3人がお友達になって、お店の3階に一緒に住んでいる、という設定はそのままで。

お店の開店時だけ、友人として一時的にお手伝いをしていただけ。

あとは、店員と警備員を雇って、恭ちゃんだけで経営してもらわなきゃ。

警備員は、チンピラ程度を追い払えればいいから、若手のハンターで十分だ。

本格的な『敵』が現れれば、私かレイコ、そしてファルセットが 出張(でば) ればいい。

……いや、勿論、恭ちゃんひとりでも対処はできるから、恭ちゃんや従業員の心配はない。

私とレイコが心配しているのは、恭ちゃんや従業員ではなく、 相手の方(・・・・) だ。

だから、そういう場合には、なるべく早く私かレイコが介入すべきなんだよ。

みんなの平和と幸せのために……。

ファルセット?

あはは……。アイツが、私達に敵対する者を懲らしめる恭ちゃんを止めるとでも?

「というわけで、そろそろ『偉い人』に接触しようと思うんだけど……」

「異議なし!」

「同じく!」

よし、レイコと恭ちゃんの同意が取れた。

「……で、接触する相手の人選なんだけど……」

私の言葉に、レイコが思案しながら……。

「 王都(ここ) でカオルと面識があって、権力を持っていて、カオルのことをただの野良巫女だと思っている現時点で好意的な、信頼できそうな人物。

今までのカオルの話の中に出てきた、それに該当しそうな者って……」

「「「王様と、宰相さん!!」」」

皆の台詞が重なった。

「……いきなり、ラスボスかいっ!」

そりゃ、私がそう叫ぶのも、無理ないだろう……。

「でも、カオルの口から出た、条件に該当する権力者って、他にいないでしょ?」

「う……、それはまぁ、確かにそうだけど……。

でも、王様はマズくない? もし何か要求されたら、止められる人がいないじゃん……」

私がそう主張すると……。

「その場合は、私が斬り捨てますので、問題ありません」

「問題、大ありじゃ~い!」

ファルセットがボケをカマし……、いや、コイツ、大真面目で言ってやがるな。

「 女神の守護騎士(エインヘリヤル) が王様を斬ったりすれば、この国とバルモア王国が戦争になっちゃうでしょうがっ!」

「いえ、その場合、この国の王を斬り捨てたのは『バルモア王国に所属する私』ではなく、『女神の配下である私』であり、敬虔なるしもべが女神に 仇成(あだな) す者を 誅(ちゅう) したことになります。

……それに異を唱えるということは、即ち女神に敵対するということです。

それは、世界中の国々、神殿勢力、そして全ての人々を敵に回すということです。

なので、罪に問われることはなく、国家間の争いになることもありません」

「あ、なる程! ならば、安心……、できるかああぁ〜〜っっ!!」

はぁはぁはぁ……。

危うく、納得するところだった……。

「この世界で女神として認められているのは、セレスだけでしょうが!」

「カオル様が神罰でちょっと王宮を吹き飛ばされれば、皆、納得しますから安心です」

「だから、全然安心できないっつーの!!」

全く、 ファルセット(コイツ) は……。

「カオル、王様から『困ったことがあれば、いつでも相談しに来なさい』って言われたんでしょ。

なら、遠慮なく相談に行けばいいじゃない。

…… 困ったことになる(・・・・・・・・) のは、多分向こうの方だと思うけど……」

「「なる程!」」

レイコの言葉に、私と恭ちゃんの声がハモり、ファルセットはうんうんと頷いている。

……いいのかな、それで……。

* *

「陛下、御予定にない訪問者が来ております」

「え?」

取次ぎの者が慌ててやって来て、そんな報告をした。

それは、国王がぽかんとするのも無理はない。

国王に飛び込みの来客などあるはずがない。

面会の予定はずっと先まで詰まっているし、いくら高位の者であっても、事前の調整もなく突然王宮を訪れることなど、あり得ない。

遠方からの客であっても、必ず数日前に先触れの者がやって来る。

なので、予定にない客などあり得ないし、万一そのような非常識な者が訪れたとしても、門前払いされるだけであり、わざわざ国王自身にまで報告が上がることはない。

さすがに、他国の国王とかであれば話は違うが、勿論、そのような者が事前調整なしで訪れることなど、絶対にあり得ない。

なのに、そのような報告が来るということは、余程の異常事態が……。

「ま、まさか!」

目を剥いた国王に、こくりと頷く取次ぎの者。

「自由巫女様です」

「と、ととと、通せ! 丁重に扱うのだぞ!

お茶と茶菓子は最高級のものを出せ! 急げ!!」

慌てた国王の指示に、皆がバタバタと執務室から飛び出していった。

門番、取次ぎ・接遇要員達には、エディスという名の自由巫女が訪ねてきた場合には最優先で案内し、決して粗相があってはならないと、国王の名で直々にお達しが出されている。

そのため、皆はその人物が出家したどこかの国の王族であろうと思っていた。

なので、異例のことであるがきちんと対応され、国王に直接の報告が来た。

……危機管理。

この国は、かなりしっかりした運営がなされているようであった……。