軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

156 懐かしの母国

バルモア王国の王都、グルアにとうちゃ~く!

……ブランコット王国の王都?

誰が行くもんか、そんなトコ!

多数決で、5対1。完勝だったよ。

私とロランドを危険に晒すことは絶対に許容できないフランセット。

私に絶対の忠誠を誓うエミールとベル。

そして、何も分かっていないけれど、私の味方をしてくれるレイエットちゃん。

……多数決で、私が負ける要素がない。

そういうわけで、悔しがるロランドを無視して、予定通りブランコット王国の王都アラスを避けてかなり南方のルートを通り、無事、バルモア王国の王都に到着したというわけだ。

下手にブランコット王国で情報収集を行うより、さっさと帰国して王様から最新情報を聞いた方が余程早くて正確な情報を入手できるに決まっている。

それに、そもそも、王様から『早く帰ってきて』との伝言を受け取ったのではなかったのか!

ロランドにとっては弟だけど、一応は『国王陛下』なのだから、その指示、というか、『命令』は聞かなきゃダメだろう……。

そして今、懐かしの王都、グルアに帰り着いたというわけだ。

ここ、バルモア王国は、私とレイエットちゃん以外の4人にとっての母国である。

本当の母国がこの世界にはない私にとっても、まぁ、母国のようなものである。

この世界に降りた場所はブランコット王国であり、最初はしばらく滞在したけれど、どうもあそこを母国と呼ぶ気にはならないし、そんなことを口にすれば、あの国の連中が、調子に乗って何を言い出すか分からない。

とりあえず、王宮へと向かう、私達。

王宮へ行けば、何か食べさせて貰える……、じゃなくて、とにかく情報を仕入れて、急ぎの案件があるかどうかを確認するのが先決だ。

勿論、国境線を越えてバルモア王国に入ってから、 戦闘馬車(チャリオット) はアイテムボックスに収納して、変装も解除している。この国では変装している必要はないし、 戦闘馬車(チャリオット) のことはあまり宣伝する必要もない。

……この国では私のことは知れ渡っているから、 戦闘馬車(チャリオット) の持ち主が私だと分かれば、また余計なちょっかいというか、『お願い』をしてくる連中が湧くかもしれないから。

正直、あれはウザい。

『お願い』だとか『招待』だとかは、相手を殴り飛ばしたり爆発で吹き飛ばしたりするわけにはいかないから、面倒なのだ。1回や2回断ったくらいで諦めるような連中じゃないからね。

それなら、いっそ襲ってくれた方が、気兼ねなく潰せるから気が楽なんだけどなぁ……。

でも、この国には、そんなことをする者なんていやしない。

……あ、いや、『いなかった』、かな。

今は、ルエダの残党とかブランコット王国の間諜、いや、暗殺者がいてもおかしくない。

あの、ベリスカスで私に取り入ろうとして、それが果たせぬとなった途端に私を殺しにかかった、ブルースとかいう司教。

あれは、態度の豹変が早過ぎた。元々、『御使いを殺す』という考えがあったとしか思えない。

多分、あわよくばうまく丸め込んで利用し、駄目ならばさっさと殺す、という既定路線だったのだろう。……というか、そう命じられていただけで、本人としては最初から私を殺したかったんじゃないかなぁ。

ルエダの滅亡、というか、『ルエダの宗教関係者の滅亡』の原因となった大罪人、仏敵、神敵、邪教徒、悪魔の使い、とか思われていそうだな……。

でも、あれ、とどめを刺したのはセレス本人だよねぇ、どう考えても……。

信仰する女神様御本人にとどめを刺された宗教団体。

うん、ないわ~。

ちょっと、他に聞いたことないわ~……。

まぁ、女神様を殺しにいくこともできないだろうから、全ての怨みと憎しみが私にくるのは、仕方ないか。あの、私が旅に出る切っ掛けになった襲撃事件も、ルエダの腐敗神官のひとりだったし。

……あの神官が、最後の一匹とは思えない。

いや、事実、他にも逃げ延びたのが大勢いるということは、ベリスカスで私を襲ったブルースとかいう司教がはっきりと証言している。それも、貯め込んだ財貨のかなりを持ち出して、工作資金には不自由していないらしき連中も、何人かいるらしいし。

いや、考えるのは、王様から話を聞いた後でいいか。すぐに情報が得られるというのに、今考えても仕方ない。

そう思って、前を歩くロランドの足下を見ながら少し俯き加減で歩いていた私は、頭を上げた。道を歩くときは、ちゃんと頭を上げて背筋を伸ばして、堂々と……、って!

「うわっ!」

道のこっち側も向こう側も、大勢の人が立ち止まって、嬉しそうに両手をぶんぶんと振り回していた。そして……。

「「「「「御使い様、ばんざ~い! フラン様、ばんざ~い! ロランド様、ばんざ~~い!!」」」」」

……当たり前か。女神の御使い様に、救国の大英雄、聖騎士フランに、王兄ロランドの揃い踏みだ。しかも、御使い様に至っては、国からいなくなったと聞かされていたものが、数カ月振りに姿を見せたわけだから、そりゃ熱狂するよねぇ。

そして、私が姿を現したとなると、アレだ。ポーションが再び出回るかも、と期待されるわけだ。販売用も、……そして女神の慈悲たる、『女神の涙』の方も……。

いや、『女神の涙』の方はともかく、販売用は復活させるつもりはない。

あれは、医学と薬学の進歩を止め、医者と薬師を根絶やしにする、悪魔の薬だ。普及させるべきものじゃない。

もしあれが大量に出回り続け、そして50年後に、いきなり私がいなくなったら?

洒落にならない、大惨事だ。

でも、私がいないのであればともかく、私がいるのに、ポーションが出回らなければ。

人間というものは、一度知った贅沢は二度と手放せなくなるものだ。

……やはり、用事が終われば、私は再びこの国を去るべきなのかもしれないな。私がいれば、孤児達、『女神の眼』の連中も、私の許から離れず……、そう、飛び立とうとしないだろう。

それは、一種の呪縛であり、呪いなのではないのだろうか……。

「カオル、着いたぞ!」

「あ……、う、うん」

いかんいかん、ぼ~っとして考え事をしているうちに、王宮に入って、王様の執務室に到着していた。

このメンバーで、謁見の間とかを使うわけがない。直接、王様の執務室へ一直線、というわけだ。

「入ります!」

軽くノックをした後、そう言ってドアを開けるロランド。相手の返事を待つことなくドアを開けたのであるが、ここは、そういうやり方で問題ない。中で王様がプライベートなことをしているような場所ではないのである。

そして、いくら相手が弟であっても、ここでは国王と、その兄。ロランドの方が下位としての言葉使いをするのが当然であった。ふたりきりとか、身内だけの時には『兄弟としての関係』に戻っても構わないであろうが、少なくとも、他者の眼がある廊下においては、それは許されることではなかった。

* *

「兄さん、よく戻ってきてくれました!!」

そして、私達が入室してドアが締められた瞬間、泣きながらいきなりロランドに抱きつき、『兄弟としての関係』全開の国王、セルジュ。決して無能というわけではないが、今まで困った時には有能な兄ロランドに支えられていたため、ロランド不在で戦争の危機が近付いて、心細かったのだろうな。

まぁ、戦争が始まってしまえば、それなりにちゃんと王様らしい仕事はできるのだろうけど、やはり隣にロランドがいるといないとでは、安心感が全く違うのだろう。

私も、学生時代には、付き合っている男に別れ話を切り出すクラスメイトや後輩達に、よく同席を頼まれていた。私が同席していると、相手がビビって、脅されたりしつこくからまれたりせずにスムーズに別れられるらしい。なので、『別れ話のプロ』、『男と別れる相談なら、その道の専門家、長瀬先輩に!』って評判が……、って、うるさいわ!

自分自身が男と別れたことなんか、一度もないわ!

そもそも、一度も男と付き合ったことがないのに、別れようがないわ、ドちくせう!!

……はぁはぁはぁ……。

とにかく、ロランドの弟である、国王セルジュから詳しい話を聞いて、やることを決めるのは、それからだ。

そう、『 殺(や) ること』を決めるのは……。

レイエットちゃんと孤児達を傷付けたこと。

私の名を、簒奪行為の理由のひとつとして利用したこと。

私を騙して利用しようとして、それに失敗した途端、殺そうとしたこと。

それを、私が何もせずに見逃すとでも?

いつまた私の大切な者達に危害を加えようとするか分からない連中を、放置して。

私達に手出ししても何の問題もない、などという認識が広まるのを放置して。

……雉も鳴かずば撃たれまいに……。

……で、どうして顔を引き攣らせて腰が引けているのかな、国王陛下?

うん、ふたりしかいなかった親友達に、よく言われていたなぁ、『絶対に、子供がいるところで微笑んじゃ駄目だよ』って。

……うるさいわっっ!!