軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#091 「ただいま、エリーカ」

「あらぁ……これはまたなかなか立派な山狼の毛皮ですねぇ」

「けがわにほとんどきずがない……だんな、これどうやってたおしたの?」

「ぶん殴った」

「「「……わぁ」」」

翌朝、トゥランに戻ってきたライラとミネラ達に昨晩返り討ちにした山狼どもの生皮を見せたんだが、何故かドン引きされた。なんでだよ。

え? この生皮はどうしたのかって? 夜中はあまりに暇だったんでな。偵察ドローンに警戒を任せている間に撃ち殺したり殴り殺したりした山狼どもの死骸を回収して、毛皮を剥いでおいたんだよ。残念ながら山狼の肉は臭くて固くて食えたもんじゃないって話だったから、毛皮以外は構成機で有機素材になってもらったがな。

「まぁ、グレンさんですからねぇ……大丈夫ですか? 怪我とかしてません? 指とか千切れてたりは?」

「別に生体プラズマ弾をぶっ放してくるわけでも、生体単分子クローを振り回してくるわけでもなし。デカいだけの犬畜生相手に大袈裟過ぎんか?」

「でっかいけものはそれだけできょういだよ、だんなー」

「そういうものか?」

戦場に投入される生物兵器の脅威度はあんなものじゃないからな。正直ヌルいというか、俺から見ればヘキサディアと大差無いんだが。向こうから向かってきてくれる分、狩るのが楽なくらいだ。毛皮にしか利用価値が無いから獲物としては微妙だが。

「まぁ戦利品は箱に詰めて持って帰るとして……どうするかな、この集会所」

「毛皮も驚きですけど、こっちも驚きですよねぇ」

「どうしてひとばんでちょっとしたとりでができてるの……?」

ライラとミネラが合成装甲板で強化され、監視塔が増設された集会所とその周りに張り巡らされた合成有刺線のバリケードを眺めながら感心したり呆れたりしている。どうしてってそりゃアレだよ。

「頑張ったからな。これ、このままにしておくと賊の根城になりかねんよな?」

「そうですねぇ……適当な勢力に引き渡すことができるなら良いんですけどぉ、ここって程よく他の集落と遠いですから難しそうですねぇ。恐らくそうなっちゃうと思いますぅ」

「それじゃあ解体するか。さほど時間はかからないから、少し待っていてくれ」

集会所の中から残った物資を引き上げ、リバーストライクも外に出してから解体を始める。構成機を使えばこの作業もさほど時間はかからない。合成有刺線も撤去しておく。

「なんかあれだよねー。ひげんじつてきなこうけいだよねー」

「というかグレンさんの動きが早すぎてちょっと気持ち悪いですねぇ」

言いたい放題だなオイ。待たせるのも悪いから頑張って急いでいるだけなんだが?

ライラとミネラの心無い言葉に心を痛めながら三十分少々で構築した防御陣地を解体し終え、出発の準備を完了した。

「こいつはたまげたなぁ……」

「なんだろうね。この、格差? 私達は歩きで三日かけたんだよ、片道で」

「ゆっくり走っても二時間くらいで着くらしいぞ」

「マジかよ……」

セリノ、イサドラ、テオの三人が輸送用の高機動車両に乗り込んで半ば放心している。護衛のフォルミカンがいるし、俺も同行するんだからもう銃は必要ないんだが……それでも銃を手放さないのは感心だな。いざとなれば自分達も戦うという意思を見せるのは良いことだ。

☆★☆

俺のリバーストライクの方が足が速いから先に帰っても良かったんだが、急いで帰る理由も特に無いので帰りはゆっくりと同行することにした。高速でかっ飛ばすのも良いが、こうしてゆっくり走るのも悪くないな。周りの風景や動植物に注意を払う余裕がある。

「この辺はうちの周りと違って植生に乏しいな」

「乾燥してますからねぇ。その分、グレン農場の周りには生えてない植物も生えてますけどぉ」

「ああ、あのなんとかいう酒の材料とかな。トゲトゲの柱みたいなよくわからんのもあるな」

「あれはさぼてんだねー。はしらみたいなやつはだめだけど、あっちのひらべったいのはたべられるよー。みもなるしねー」

「ほう、美味いのか?」

「はっぱのほうはまぁまぁ? みのほうはあまくてすき」

「採って帰るか」

「わたしものせてってー。とりかたおしえてあげる」

「うぐぐ、私も行きたいのにぃ」

すまん、小柄で軽いフォルミカンのミネラはともかくライラを乗せていくのは無理だ。リバーストライクが動かなくなってしまう。下手したらフレームが逝く。

ミネラをリバーストライクのケツに乗せ、道を外れて『ひらべったいさぼてん』とやらを収穫しにいく。

「うえのほうのあたらしくてひょうめんがやわらかいはっぱだけとるんだよー」

「全部じゃ駄目なのか?」

「したのほうはかわがあつくてたべづらいし、ぜんぶとったらはえてこなくなっちゃうからねー」

「なるほど。お、この赤いのが実か?」

「そうそう、だんなとってー。わたしじゃとどかないー」

「あいよ」

ミネラに言われた通り、柔らかい葉っぱや実をナイフで切り取って収穫していく。どれくらいの量を採ったら良いかわからないので、採れるだけ採っていくことにしよう。人気があるようだったら栽培も視野に入れても良いかもな。ああ、でもうちの農場の気候や土に合うかな? その辺はエリーカと農業統括機に投げれば良いか。

「だんな、たべてみてー」

「おお……お、結構甘いな。好きな味だ」

「えへへ、おいしいよねー」

ミネラが剥いてくれたひらべったいさぼてんの実とやらを食べてみると、思った以上に甘かった。野イチゴや野生種のリンゴよりも甘い。これは有りだなぁ。

「簡単に増やせるのかね、これ」

「どうだろー? でも、このさぼてんをそだててるところもあるよー」

「じゃあ大丈夫そうだな。エリーカに相談してみるか」

「さんせい!」

山狼の毛皮とさぼてんの葉っぱと実で土産としては十分だろう。多分。あの毛皮も結構デカいからな。敷物とかにできるかもしれん。帰ったら毛皮の加工に詳しい奴がいないか探してみるか。

☆★☆

「グレンさん、おかえりなさい!」

「ああ。ただいま、エリーカ。土産があるぞ、ほら」

「あ、ウチワサボテンの葉と実ですね! サラダにしたり、炒めたり、色々食べ方があるんですよ」

俺がリバーストライクから下ろしたウチワサボテン? 入りのバッグを見てエリーカが笑みを浮かべる。なるほど、ひらべったいさぼてんとやらの本当の名前はウチワサボテンなんだな。ウチワってなんだ? まぁいいか。

「あと山狼の毛皮もあるぞ。あっちの高機動車に積んである」

「山狼に襲われたんですか!?」

「おう。パンチで一発だ。まぁレーザーガンとかレーザーライフルも使ったが」

「えぇ……? パンチ……? グレンさんはやっぱりグレンさんですね……」

どういう意味だよ。エリーカまで俺のことを非常識の塊みたいな言い方をして。拗ねるぞオイ。

「……こっちに送ったトゥランの連中はどうしてる?」

「子供達は無事です。怪我人も命に別状はないそうですが、動けるようになるまでは少し時間がかかるとハマル司祭やシスティアさんが言ってました」

「そうか。まぁ今後に関しては傷が癒えて動けるようになってからだな」

「この農場で働いてもらうんですか?」

「希望するならな。どこかに去るとか、元の場所に戻りたいって言うなら止めはしない。その前に、まずは約束の酒を納めてもらうがな。契約は契約だ」

「そうですか……グレンさん、ありがとうございます」

「何に対するありがとうかよくわからんが、どういたしまして」

俺がそう言うと、エリーカは輝くような笑みを浮かべてから抱きついてきた。ふふん、思惑通りだな。