軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#078 「すまんな、これが俺のやり方だ」

労働リソースの再配分を始めて数日。南東にあるというアレックス達の集落の偵察を完遂したスピカ達が戻ってきた。

「無事戻ったな。何よりだ」

機動車両から飛び降りてきたスピカを出迎える。見たところスピカを含め全員特に怪我などもないようで何よりだ。機動車両も特に不調は無さそうだな。

「ちょっと退屈だったよ。こっちはどうだった?」

「お前達が出てった後に自律型駆逐兵器の降下ポッドが降ってきたくらいだな。それ以外は平和なもんだ」

「えー? なにそれ。こっちにいれば良かった……」

スピカがそう言って肩を落とし、ピカピカのレーザーカービンを撫でる。ああ、この前買ってやった新品な。試す機会を逃すことになったか。どうやら偵察中に使う機会は無かったらしい。

「そうしょげるな。これからも使う機会はいくらでもある」

スピカの触角を触らないように頭を撫でてやる。どうやら触覚は敏感で、直接ガシガシと触られると痛いらしい。向こうからペタペタと触れてくる分には問題ないみたいなんだがな。

「後で皆を集めて詳細を聞くが、偵察の結果はどうだった?」

「うん、問題なしってところかな。あいつら、まっすぐ集落に帰ってたよ。特に襲われたりするようなこともなかった。集落の位置もばっちり確認できたしね。特に気付かれた様子もなし!」

「完璧だな。慣れない追跡と偵察をよくやってくれた。今日のところはしっかり休んでくれ。報告会は晩飯を食った後にでもやろう」

「わかった。それじゃあ装備を降ろして皆とシャワー浴びてくるね」

「ああ。機動車両の整備はこっちでやっておくから、車両はそのままでいいぞ」

「ありがと、旦那」

スピカはそう言って俺の腹の辺りにぎゅっと抱きついてから機動車両の荷台へと走っていった。なんというか、可愛いヤツだよな。スピカは。そんな事を考えながらスピカ達が乗っていた機動車両の整備をするためにフィアや手隙のフォルミカン達を招集した。

☆★☆

「……というわけでさ。特に裏も何も無かったのが確認できたってわけ」

夕食の後、俺達は偵察に出ていたスピカ達からその詳細を聞いていた。

「後は今後の流れ次第、ですねぇ。私達が取引したことのある集落だったら良かったんですけどぉ」

ライラがそう言いながら溜め息を吐く。アレックス達の集落は純血人類同盟の勢力圏に比較的近い場所に位置するため、タウリシアンのキャラバンもあまり近づかないようにしているらしい。純血人類同盟の遠征軍とかにかち合うと、下手するとそのまま捕らえられて奴隷にされてしまうのだとか。そりゃ怖い。タウリシアンとしては近寄りたくはないだろうな。

「ボス、皆の後を尾けさせたのか……」

この場にはアレックス達も居た。秘匿しようかとも思ったのだが、隠してバレるよりも最初から開き直ったほうが良いだろうと判断したのだ。

「すまんな、これが俺のやり方だ」

「手は……出していないんだな?」

「誓って手出しはしてないよ。というか、旦那は道中であの人達が襲われたりしたら助けろって言ってたくらいだから」

「グレンさんは見た目の割にお人好しなんですよぉ」

見た目の割にってのは余計だ。それに別にお人好しでもなんでもない。契約を守ってもらいたいだけだ。

「なら、この件について俺から言うことは何もない。それと、報告がある。マニュアルを読み込んで醸造設備の使い方に目処がついた。ボスが人員を送り込んでくれたお陰だ」

「ほう? そりゃ朗報だな。労働リソースの再配分をした甲斐があったってもんだ」

料理分野に近いかもということで、料理の得意なエリーカやタウリシアンのプリマを送り込んだんだ。あと、ドワーフと言えば酒好きってことでフィアにも顔を出してもらうように言ったんだよな。

「今日から第一段の仕込みを始めている。マニュアルによると数日でメスカル並みのアルコール度数の酒が造れるようだ。ただ、味の方はどうなるかわからない」

「別に一発で最高のものを作れって話じゃない。こういうのは試行錯誤だろう? 原料に限りがあるからいくらでも好きにしろとまでは言えないが、まぁ良い感じにやってみてくれ」

「ああ、ボス」

多分大丈夫だろうが、アレックス達の動向は一応チェックしておくか。なんだかんだ言ってもアレックス達は人質だ。場合によっては俺達を裏切る可能性だってある。念の為、作った酒に関してはしっかりと成分を分析にかけるとしよう。

「他に何か報告はあったか?」

「あ、はぁい。明日、ノーアトゥーンに向けてキャラバンを出しますよぉ。朝から荷を積み込んで、一日かけて向こうで商売してきまぁす。向こうで一泊して、帰りにレイクサイドにも寄ってきますねぇ。帰りは明後日の予定ですぅ」

「メンバーは?」

「今回はぁ、ティエンをリーダーにしていつも通り護衛付きって感じですねぇ」

「護衛は偵察に出てないメンバーで構成することになってるよ」

「妥当だな。大丈夫だとは思うが、襲撃には重々気をつけるように。トラブルがあった場合には直ぐに連絡を寄越せ」

ノーアトゥーンまででの道程であれば、車載の通信機で十分に農場と通信が可能なはずだ。いざとなれば救援に駆けつけることも可能だろう。

「はぁい。ティエン、そういうわけだからよろしくねぇ?」

「はい、姉さん」

タウリシアン達のサブリーダー的な立場であるティエンがライラの言葉に静かに頷く。スピカも明日護衛に出ていく面々に護衛の心構えについて話しているようだ。

「他には何か共有するような事項はあったか? 無いなら今日のところは解散にするが」

「あ、ぼすー。きょう、ほくせいのほうのいわやまをこうせいきでけずってたんだけど、なんかへんなのみつけたよー」

そう言って手を上げたのは先日の防壁上での戦闘にも参加したフォルミカンの一人だった。名前はミネラだな。舌っ足らずな話し方ののんびり屋だが、マイペースながらよく働く奴だ。

「変なのってなんだよ、変なのって。報告は正確にしてくれ、頼むから」

「んーとねー、こうせいきでけずれないかべみたいなの。じんこうぶつっぽい?」

「構成器で分解できない壁だと?」

それはつまり、用意に壁を抜かれないように何らかの対策が講じられているある程度高度な素材で造られた壁ということである。それが山の中から? どういうことだ?

「この辺の山からはそういうのがよく出るのか?」

わけがわからないので皆にそう問いかけると、反応は二つに別れた。ワクワクしている組と、嫌そうな顔をしている組だ。比率は概ね二対八くらいである。目を輝かせているのはライラとフィア、あと数人のフォルミカン。嫌そうな顔をしているのはそれ以外の全員だ。しかしなんとも微妙な反応だな。何なのか見当はついてるって反応でもあるが。

「グレンさん……恐らく、数百年か、もしかしたら千年以上前から埋まっている耐爆シェルターの類かと思います」

「昔の耐爆シェルター? なんだそりゃ」

なんでそんなもんが岩山に埋まってんだよ。誰か説明してくれ。