軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#067 「……どういう感じの子にしたんですか?」

「あぁ~、落ち着きますねぇ」

シャトルを降りて地上に着くなりライラがしゃがみ込み、地面をぺたぺたと触って息を吐いた。他の面々もフィア以外は同じように地面を触ったり、深呼吸をしたり、空を見上げたりと地上という環境そのものを満喫している。

「フィアは平気なんだな」

「はい、私は元々地下暮らしだったので……ちょっとだけ怖かったですけど」

「怖かった?」

「壁を一枚隔てて外は死の空間、というのは怖いものですよ、旦那様」

「そういうものか?」

首を傾げる俺を見てフィアが苦笑いを浮かべる。俺としては当たり前の事過ぎて全く気にならないんだが、まぁそういうものなのか? 地上暮らしだと基本的に空気の心配とか要らないものな。

俺にしてみればどこでも気軽に焚き火だのなんだので火を熾している方が異常に思えるんだが。航宙コロニーや航宙艦の中で木材燃やして火なんて熾したら、速攻で消火装置が作動してセキュリティチームとかダメージコントロールチームがすっ飛んでくるぞ。

「リーダー、ご無事で何よりです」

エリーカ達と手分けしてシャトルから物資を運び出していると、留守を任せていたティエンが様子を見に来た。一緒についてきた他のタウリシアン達やフォルミカン達も物資の運び出しを手伝ってくれている。今回は上でしか買えないハイテクコンポーネント類の他、少しだけだが娯楽用品を買ってきたからな。ミューゼンが買ってきたボードゲームの他にもいくらかカードとかも買ってきたし、甘味の類なんかも買ってきた。

狙ったわけじゃないが、うちは女所帯だからな。フェリーネの中には男もいるけど、それ以外は全員女だ。お土産について聞いたらやっぱり甘いものだろうとエリーカ達も言っていたので、そういう類のものも少しだけ買ってきた。

「ああ、少しだが土産もあるぞ。甘い菓子とかだけどな。それと、フォルミカンを中心に数日間警戒態勢を敷く。フェリーネ達には周辺の警戒を頼むぞ」

「ああ、それはそうですね。良くも悪くも来客が増えそうです」

俺の指示を聞いたティエンが納得したように頷いた。俺達の乗ったシャトルが大気圏に再突入してこのグレン農場へと降下したので、その軌跡を目撃した連中がこのグレン農場を目指して押し寄せてくる可能性があるのだ。

それが何にせよ、大気圏外から墜ちてくるモノには価値がある。このリボースⅢに住む人々は経験則的にそう考えている。それは物資の入った貨物ポッドであったり、航宙艦であったり、或いはその残骸であったり、自律型駆逐兵器の降下ポッドであったりするわけだが、いずれのパターンにおいても 宇宙(そら) から墜ちてきたモノには価値があるのだ。

もっとも、墜ちてきたのが自律型駆逐兵器だった場合には危険もあるわけだが、撃破さえすれば自律型駆逐兵器が装備しているハイテク武器やその部品を手に入れることができるわけだし、航宙艦の残骸だとしても部品を漁れば売れるものがいくらでも見つかる。物資の入った貨物ポッドであれば大当たりだ。

ちなみに、一番のハズレは降下してきた航宙艦であるらしい。よほど運が良くない限り航宙艦に乗って降りてきた人員がセットで居る上に、上から降りてきた以上は間違いなく光学兵器などで武装している。そもそも、場合によっては航宙艦そのもの武装で圧倒される。

リボースⅢの住人が装備している火器類で対艦用の光学兵器にすら耐えるシールドと装甲を破れるはずもないので、確実にワンサイドゲームになるわけだな。

間抜けにもクルーが全員船から降りていて、しかも油断して応戦する間もなく仕留められた場合には一番の実入りになるだろうが……まずそんな幸運には恵まれないだろうな。降りてきた航宙艦のクルー達もそれが一番危険だとわかっているから、そんな危険な真似はしない。

俺? 俺は良いんだよ。強いから。しっかりと警戒もしていたしな。

「グレンさん、それじゃあ暫くはキャラバンとかも出さない感じですか?」

「そうだな。ティエンの言う通り、良くも悪くも来客が多くなるだろうから人手は多いほうが良いだろう。来客の対応が必要だろうからな」

「そうだね。旦那の言う通り人手は多い方が良い。戦利品の回収や整理にも人手は要るわけだし」

「やる気満々」

ガンケースを抱きしめるスピカの横でミューゼンが触手を使ってシャドーボクシングのようなことをしている。自分の拳じゃなくて触手でシュッシュってやるのかよ。まぁ拳よりそっちのが強いのかもしれんが。

☆★☆

というわけで翌日――ではなく、その晩。

俺は娯楽室で食後の娯楽タイム――ホロムービー鑑賞だとか――に突入するうちの面々を横目で見つつ、とあるアプリを立ち上げた。

何を隠そう反物質コアの中に住み着いているアイツのための筐体をデザインするソフトである。流石にエリーカ達の前で堂々とセクサロイドをデザインする勇気はないので、俺の視覚野にだけウィンドウを展開している。

「さて……」

ここからが難しい。何せコミュニケーション方法がコアの稼働率の上下くらいしかないのだ。一応俺の視覚野に投影される情報は見えているはずなので、反物質コアの反応を確かめつつセクサロイドの外観をデザインしていく。

まずは大まかに体型を決めて、そこからディテールを細かく詰めていく。これが物凄く時間がかかった。とても細かいところにまで注文つけてきやがるんだ、こいつ。

その他にも所謂『あっち方面』の機能とか、身体能力とか内部動力の仕様とか、決めるべき点はとても多い。もっとも、反物質コアの中にいるアイツにとって重要なのは外見とあっち方面の機能、あとは味覚などの機能だけであるようで、身体能力やエネルギーの出力に関しては殆ど拘りは無いようであった。結局のところ『外』に出て自分の身体で動くことができるということが重要なのだろう。

出来上がったデータを通信塔経由で武装商船団アルデティオスの女船長に送ると『いい趣味だねぇwww』と返信がきた。草を生やすな、草を。俺の趣味ってわけじゃない。客観的に見て良い出来だとは思うがな。

「む?」

全てを終えて意識を周りに向けると、いつの間にかエリーカとミューゼンに左右から挟まれていた。身体のデカい俺でも余裕を持って座れるソファに座っていたんだが、何故二人ともそんなに密着している?

「例のせくさろいど? とやらを作っていたんですか?」

「そうだが……何故睨む」

「嫁としては旦那様がお人形遊びに夢中にならないか心配」

エリーカの代わりにミューゼンがそう答え、触手で俺のデリケートなゾーンを擦ってくる。あまりに露骨過ぎる。やめないか。

「……どういう感じの子にしたんですか?」

ミューゼンの触手をペシペシと払いのけていると、エリーカが俺の腕に取り縋ってユサユサと俺の身体を揺らそうとしてきた。残念ながらエリーカの腕力では俺の体幹を揺らすことが出来なかったが。普通の人間よりずっと重いからな、俺は。女性の細腕ではびくともしない。

「来てからのお楽しみってことにしてくれ……」

正直、俺の反物質コアの中にいるアイツの口で説明して貰わないことには、俺の趣味だろうと言われた場合に反論も何もできん。別にそれでどうなるってわけでもないが、エリーカ達に嬉々として見せるようなものでもない。問題の先送りでしかないような気がせんでもないが。

「そういえばその、反物質コア? の中にいる人のお話を詳しく聞かせて頂いてないのですけれど」

「あー……それなぁ」

少し頬を膨らませたままアイツのことを聞いてくるエリーカを前に、どうしたものかと考え込んでしまう。実際のところ、かなり荒唐無稽な話だからなぁ……信じてもらえるかどうか。

「この話はな、俺が 不死身(イモータル) だなんて大層な二つ名をつけられていた話にも繋がるんだ。正直、与太話の類に近い話だぞ? それでも聞くか?」

「グレンさんの話ならなんでも聞きたいです!」

「うん、聞きたい。グレン、ここに来る前の話をあまりしてくれないから」

エリーカとミューゼンに左右からそう言われてしまっては話さないというわけにもいくまい。さて、とはいえどこから話したものかな。