軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#051 「そう言い張るのはそろそろ無理があると思うなぁ……」

戦闘が終了するまで五分ほどしかかからなかった。キルゾーンに誘導した上に全方位から包囲殲滅したんだからさもありなんといった感じだが。

『旦那、捕虜は取らないのか?』

「少なくともこいつらを捕虜に取る意味は見出だせんが。何か納得できる理由があるなら考慮はするぞ」

何人かは死なずに生き残っているのを確認はできている。対人レーザーによる熱傷は出血が抑えられることもあるからな。上手く処置すれば傷跡もマシにはなる。

『うーん、身代金を取るとか、人質にして交渉材料にするとか、メッセンジャーにするとか使い途は無くもないと思うけど』

「そもそも戦闘が起こったこと自体を隠蔽するために全員始末するというのが俺の方針だ。純血人類同盟はコルディア教会ともタウリシアン達とも敵対してるだろう? 双方と親密な関係を築く予定のうちの農場が敵対するのも既定路線だ。本格的な敵対を遅らせるためにそもそも接触していないという体を取ろうとしている」

『あぁー……なるほど。まぁ始末はすぐにできるし、とりあえず拘束するのもアリだとは思う、くらいの話だよ』

「エリーカやミューゼンに生きたままの捕虜を見せた後、処刑するのを見せるのは気が進まんな」

『……旦那、過保護だね』

「放っておけ」

スピカにそう返しながら俺は腰のホルスターから大口径レーザーガンを抜いた。

☆★☆

「グレンさん! お怪我はないですか!?」

後始末(・・・) を終えて農場に戻ると、エリーカが俺に飛びついてきた。そして身体のあちこちを触り始める。心配してくれるのは良いが、少し大げさだと思う。

「無い。撃たれないように戦っているからな。俺よりもスピカ達の方は大丈夫か?」

「はい、スピカさん達も無事でした。良かったです」

そう言ってエリーカが安堵の息を吐く。恐らくスピカ達から俺が単独で敵の左翼を叩いたことを聞いたんだろう。実際のところ、熱光学迷彩マントで身を隠しながら攻撃を仕掛けた俺よりも防壁の上で身を隠しながらとはいえ正面から撃ち合ったスピカ達の方が危険ではあったんだよな。幸い、今回は攻撃がコイルガンタレットに集中したようで事無きを得たようだが。

うーむ、何か対策を取るか? とは言っても、対策もなかなか難しいんだがな……全面のみに展開できる簡易型のシールド発生器でも配備するか? そうなるとエネルギーキャパシターの調達がネックだな……ドワーフとの交易を急がせるか? もし俺が睨んだ通りであれば、エネルギーキャパシターを安定して確保できるかもしれん。

「エリーカ達の方も問題はなかったか?」

「はい、全員無事です。コルディア教会の皆も無事です」

「なら良かった」

運搬作業用ボットと構成器装備型の作業用ボットに戦利品の運搬と遺体の処理を指示しつつ、レーザーライフルを背に負ったままコルディア教会の訪問者達の元へと向かう。

ちなみに俺の背中には武器吸着ハードポイントがあるので、スリングなどを使わなくてもレーザーライフルなどの長物の武器を手を使わずに持ち運ぶことが可能だ。これは質の良いコンバットアーマーなどにもよく搭載されている。俺もまだ生身の頃はそういうコンバットアーマーを使っていた。

「お久しぶりぃ。相変わらずブイブイ言わせてるみたいだね」

「やはりペトラか。久しぶりだな」

エリーカと一緒にコルディア教会からの訪問者達の元を訪れると、そこには見かけたことのある顔があった。コルディア教会の実行部隊の隊長で、デルフィニという海棲生物の要素を身体に持つ 人類(ヒューマンレース) ベースの女性だ。彼女達デルフィニは身体が強靭で、戦闘向けの能力に優れる種族であるらしい。

「私達も戦闘に加勢しようと思ったんだけどね。エリーカちゃんに止められちゃって」

「気持ちはありがたいが、あの程度ではな」

「五十人規模の純血人類同盟の部隊を一蹴って普通のコロニーは防壁があっても難しいんだけど……そういえば、随分住民が増えたみたいだね? それ以上に農場というか要塞の発展具合が凄いけど」

「要塞じゃない。ここは農場だ」

「そう言い張るのはそろそろ無理があると思うなぁ……」

そう言うペトラを無視してここまで護衛されてきたと思しき人物に視線を向ける。

「グレン農場の農場主、グレンだ」

「はい、どうも。コルディア教会の司祭、ハマルと申します。よろしくねぇ」

そう言って柔和な笑みを浮かべながら俺に挨拶をしてきたのはエリーカと同じくらいの背丈の女性だった。初老と言っても良い年齢だろう。頭には捻れた立派な角が生えていて、修道女服のベールから見事に飛び出ている。角の形はヘレナと似ているように思うが、同じ種族ではないようにも思える。

「オヴィシアンを見るのは初めて?」

「ああ、初めてだな。イビリスやタウリシアンとも違う種族なのか」

「角を持つ種族は結構多いですからねぇ」

「ふふ、タウリシアンの方々に比べれば能力的には 人類(ヒューマンレース) にとても近い種族なんですよ、私達はね。普通の人よりは耳が良かったり、少し脚力が強かったりはしますけどれど、誤差の範囲ですねぇ」

ライラの言葉にハマルがクスクスと笑いながら応じる。なるほど、角があるだけでほぼ 人類(ヒューマンレース) と変わらんのか。覚えたぞ。

「それで……お前も来たのか」

「はい、お世話になります」

そう言って生真面目な表情を俺に向けてきたのはシスティアであった。エリーカと同じアーソディアンであるという話だが、彼女がどのような特異な器官を身体に持っているのかは俺は知らない。

「システィアちゃんは私の助手で、将来的には司祭となってこのグレン農場の教会施設を管理する予定なのよぉ」

「なるほど……?」

「私もこの歳だし、老い先もそんなに長くないだろうからねぇ」

そう言ってハマルがクスクスと笑う。いや、反応のし辛いジョークはやめて貰いたいんだが。そうだなとも言えないだろうが。

「そういうことだから、私共々システィアちゃんのこともよろしくね。ああ、ミューゼンちゃんもね。エリーカちゃんはもうよろしくされていると聞いたけど、ミューゼンちゃんとはどうなのかしら?」

「本人は俺の嫁になると息巻いているぞ」

どういうわけかこの場には居ないが、ミューゼンは一体どこに行ったんだ?

「コルディア教会としてはグレンさんとミューゼンちゃんがそういう関係になるのは歓迎だから、本人がそのつもりだというなら貰ってあげてね。あの娘はちょっと個性的だけど、とても良い子だから」

「……そうだな」

正直に言うと、ミューゼンとそういう関係になるというか、そういう雰囲気になることができるかどうかすら俺は懐疑的なところがあるんだが……まぁなるようになるか。

「教会施設には居住スペースは無いから、居住スペースは別に用意してある。エリーカ、すまんが案内してやってくれ。俺は後始末の続きをやる」

「わかりました。ハマルさん、システィアさん、こちらへ。ペトラさん達も同じ方向に宿舎を用意してあるのでどうぞ」

「はい、お世話になりますねぇ」

「ありがとう、エリーカ」

「助かるよ。あー、早くシャワーを浴びたいね」

エリーカに案内されてコルディア教会の面々が宿舎のある方向へと誘導されていく。さて、俺はスピカ達の様子を見たり、鹵獲した装備や補給物資の検分と処分をしないといかんな。