作品タイトル不明
神凪の各事業部にいらっしゃい〜理結
親父に【銀の三日月】と話し合いをして来いと言われてから、3日後に予定を立てた。
つまり今日なんだけどな。
虹樹(こうき) と 琉樹(りゅうき) に連れられて、
【銀の三日月】のメンバーが到着するのを待っている。
神凪(かんなぎ) コーポレーションの会議室だ。
いつもみたいにギルドの会議室ってわけにはいかないだろ?
俺は 理音(りおん) と共に待っていた。
待っている間に、理音がオレ必要か?とぶつぶつ言っていたが、
必要だろ?お前の工房の仲間になるかもしれないんだぞ?
会議室にノックの音が響いて、
「お客様をお連れしました」
神凪の社員に連れられて、虹樹たちと共に【銀の三日月】が会議室に入ってきた。
【銀の三日月】のメンバーは、俺を見た瞬間に「あっ!」って顔をした。
ギルドショップで認識阻害の魔導具売ったのを覚えていたらしい。
「初めまして、ではないですね。
私は神凪コーポレーションの神凪 理結(りゆう) と申します。
ようこそいらっしゃいました」
ニコリと笑うと、
「先日は魔導具の相談にのっていただき、ありがとうございました」
たぶん、 明夜(あくや) が頭を下げた。
その後に続き全員に頭を下げられてしまった。
「顔を上げてください。
とりあえず座って話をしましょう。
今日は認識阻害の魔導具はしてらっしゃらないのですね?」
「はい。みなさん、素の自分たちを知ってらっしゃるので先ほど解除しました」
なるほどね。
どうぞ、と俺は自分の対面の席を示す。
【銀の三日月】のメンバーは失礼しますと座る。
「虹樹たちはこっちに座りな」
俺と理音の並びに座らせる。
「まずは、お越しいただきありがとうございます」
いえ、と明夜が答える。
「みなさんは、探索者を辞めたいとのお話でしたが、合ってますか?」
4人は頷く。
「神凪コーポレーションで働いてみませんか?」
「「「「えっ!?」」」」
あれ?想定して来たんじゃないのか?
「ですが、自分たちは何も出来ないと思うのですが」
「そうでしょうか?私たちはあなたたちの職業を聞いてとても可能性を感じました」
「可能性、ですか?」
明夜は怪訝顔だな。
「はい、たとえば明夜さんの複写師。
スキルや能力までコピー出来るのであれば、
かなり有用な職業ですよね?」
俺がそう言うと、明夜は、
「ほとんど使ったことがないので、
姿がコピー出来ることしかわかりません」
琉樹に聞いてた通りだな。
「そこは訓練?練習?をしてもらうことになるとは思いますけど、
私の能力、真偽をコピー出来るのであれば、
手分けして採用業務を回せるようになるのではと、期待してます」
「採用業務ですか?」
「はい。今、神凪コーポレーションの採用はすべて私が担っているのです。
企業スパイなどが紛れ込むことがありますので、
真偽を使って確認しながら採用してるのです」
ほんと、俺の負担デカいんだよ。
もし明夜が真偽使えるようになれば、俺的には万々歳だ。
明夜は企業スパイ…と呟いている。
「でも人のコピーとか、犯罪にならないのでしょうか?」
「コピーされる本人が納得していれば大丈夫なのでは?」
この場合は俺だし?
鑑定した結果は、丸ごとコピー出来ると出ている。
ギフトが演技だぞ?
絶対コピー元になりきれるだろ?
ただレベルを上げるのは必須のようだが…
そこは経験値900倍とかで、何とでもなるだろう。
「考えてみてください。
他のご兄弟姉妹の方ともお話しさせていただきますので」
「わかりました」
「次に白夜さんですね。バランサーでしたね?」
「はい、ですが使い道がないですよね?」
「いやいや、そんなことないでしょう?
人と人との関係を調整するなど誰にでも出来ることではありません」
「そうでしょうか?簡単なことですよね?」
あー、白夜にとっては出来て当たり前なことなんだな?
だから自己評価低いのか?
「簡単ではないのですよ?
世の中には色んな考えや価値観の人がいます。
その人たちを調整出来ると言うのは、才能だと私は思います」
「それは、自分がバランサーだからでは?」
「そうおっしゃるのなら、バランサーは有能だと言うことでは?」
白夜は考え込んでしまった。
絶対に部署と部署を円滑に繋げてくれるだろう?
確かに琉樹の言う通り、人に嫌われないタイプの人間だな。
鑑定結果では、ギフトが無意識の意識と言うらしい。
どうも悪意を好意に変えられるもののようだ。
それは嫌われないだろう。
「白夜さんも考えてみてください」
「はい」
「次に輝夜さんですね。カルキュレーターでしたよね?」
「はい。ハズレ職業ですよね…」
キリッとした美人なのに、
眉毛がしょんぼりと下がるだけで、ずいぶん印象がかわるな。
「私は当たりでは?と思ってますよ?計算する人、いいじゃないですか」
輝夜は、首を傾げる。
「計算と言えば足したり引いたり掛けたり割ったりですよね?」
「はい、それ以外にありますか?」
「たとえば、この会議テーブルのここからここまで計算できますか?」
俺はテーブルの端から、適当なところまでを示した。
「7分の2ですね」
輝夜は即答だった。
「はっ?」
虹樹の間抜けな声が響いた。
「普通の人の反応は、あんな感じですよ?
瞬時に返答出来るのは輝夜さんくらいでしょう」
「えっ?」
輝夜が驚いている。
いや、戸惑っている。
たぶん、この兄弟姉妹は自分に出来ることは、
誰でも出来ると思ってるんだろうな。
出来ないからな?
「たぶん、輝夜さんは空間や距離を把握しているのでしょうね」
だから、ギフトが正確な視界と言うのだろう。
双子のライブの舞台装置の設置とか、
空間のプロデュース的な事をやってもらいたいよな。
そういうの向いてそうな気がするけどな。
「私はその認識力はすごいと思います。考えてみてください」
「わかりました」
「さて、最後に咲夜さんですね。錬金鍛治師ですね?」
「はい」
輝夜とは、別で可愛らしいタイプのようだ。
理音より年上のはずだが、並んだら年下に見えるかもな?
「私の隣にいるのが、神凪の錬金鍛治師である神凪理音です」
俺が理音を紹介すると、
「神凪理音です。よろしくお願いします」
「 月城(つきしろ) 咲夜です。よろしくお願いします」
あー、【銀の三日月】は、月城さんだったのか。
初めて聞いたな。
全員のこと鑑定してるのに、名字は気にしてなかったな。
「咲夜さんには、錬金鍛治師としての仕事か、錬金鍛治師をしたくなければ、神凪での仕事かを選んでいただけます」
「えっ?」
「私としましては、錬金鍛治師として、理音をサポートしてもらえればと思っていますが」
俺がそう言うと、咲夜はあたふたして、
「あの、私クギしか錬金出来たことないんですけど…」
だんだんと声のボリュームが落ちていく。
「それって、鋼を錬金してだよね?」
理音が問うと、咲夜が頷く。
「大丈夫、オレも鋼でナイフとかハサミしか錬金出来ないから」
いや、自慢気に言うことではないと思うぞ?理音?
「えっ!?」
「なんか錬金鍛治師って、ミスリルとかファンタジー素材の方が相性いいみたいなんだ」
他にミスリルとか加工出来る職業が今の所無さそうなんだよな。
だから、ファンタジー素材の武器は、ほぼ理音作なんだよな。
「だから1度やってみない?それでもやりたくなかったら、 理結(りゆう) 兄(にい) にお願いすればいいよね?」
理音が俺を見て、聞いてくる。
「あー、それで問題ない。
その時はやりたいことがあれば言ってくれていい」
「だってさ、どう?」
理音が聞くと、咲夜は、お願いしますと頷いた。
他の3人もお互いの顔を見合わせて、頷いて言った。
「自分たちもよろしくお願いします」
これで、一応なんとかなったかな?
細かいことも説明しないとな。
ってか、細かくねぇかな?
給料とかはもちろんだけど、敷地内にマンションがあることと。
家賃は不要なこと。
魔力の実をギルドより格安で購入できること。
他にも特典的なものがあること。
神凪ダンジョンと 一(にのまえ) ダンジョンがあり、
敷地内に居住している場合は、当番制で討伐の必要があること。
神凪内部の情報は漏らさないこと。
秘密厳守だ。
みんなで相談するので少し時間が欲しいと言われた。
もちろんだ。
いきなり今日の今日で引っ越しますとはならねぇだろう?
引っ越してくれた方が、【銀の三日月】の精神的負担は減らせるんじゃないか?
ストーカーとかは、入って来られないしな。
待ってるぜ。