軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7:素敵な生活

平民街に戻り、商店が立ち並んだ通りを散策しながらお昼を摂れそうなお店を探していたのですが、なんとなくどこも違うような感覚。

――――帰ろうかしら?

「ただいま戻りました」

「おう、おかえり。どうだった?」

「とても良き交渉と契約が出来ましたわ」

そう答えると、エドが柔らかく微笑んでくださいました。

「よかったな。昼は?」

「こちらでいただこうと思いまして」

「そっか。ほらメニュー」

たった一日なのに、このやりとりにホッとしている私がいます。きっとこの店に来るお客さんたちも、エドのこのフラットな対応に心癒されているのではと思います。

料理も飲み物も美味しくて、話しかけやすく、なんだか物語で読んだような優しいお母さんみたいな……。

いえ、男性なのですけどね。

なんというか、ずっと昔に諦めてしまっていた『温かい家族』を得られたような気分になるのです。

「カルツォーネって何ですか?」

「包まれたピザみたいなもんだな」

「美味しそうです! そちらをいただけますか?」

エドが半月型に包んだカルツォーネを焼き窯に入れたあと、手早くサラダとスープの用意をしていました。

そして直ぐに窯から取り出したカルツォーネを耐油紙に包んでお皿に載せていました。

「あちぃから気をつけろよ」

「はい」

中身は少しピリッとしたボロネーゼソースとチーズとのこと。それは聞くだけで熱そうです。

サラダを食べ、スープを飲み、少し時間を置いてからカルツォーネを手に取りました。

まだまだ熱いけれど、食べれなくはないかも?

「ふぁ…………はふっ、まら、あふかっはれふ」

「言っただろうが」

「っ、これ凄く美味しいです!」

「ん」

メガネの奥にある金色の瞳が柔らかく細まり、唇が弧を描いていました。

「おいおい、エド! 可愛いねぇちゃんに見とれてないで、こっちの飯も作ってくれよ!」

「見とれてねぇよ。あんたのグラタンは焼き途中だ。大人しく待てねぇなら、ホットミルクでも出してやろうか?」

「くっそ、ガキ扱いしやがって!」

野次を飛ばしてきたおじさんに、エドが絶妙な切り返しをすると、店内のお客さんたちがケラケラと笑いだし、おじさんも大笑い。

こういう雰囲気が、本当に心地よく感じるのだと思います。知り合ったばかりの私もそうなのですから。

部屋に戻り、ドレス店から貰ったレース糸や預かったものなどを分けて棚に並べました。

優先順位などを書いた紙を見つつ、早速取り掛かったほうがいい作業を開始。

こういうときに部屋に乱入してくる元夫もいなければ、申し訳なさそうに呼びに来る使用人もいません。

おかげで、長時間集中出来ました。

気付ば窓の外は薄暗くなっています。

「んーっ!」

両手を天井に向けて上げ、背中をググッと伸ばしたり、身体を左右に倒してストレッチ。

――――うん、お腹減ったわね。

のんびりやりたいことをやって過ごす、なんて素敵な生活でしょうか!