軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

56.新しい関係

ブレイズはようやく自分の立場を理解したようです。旦那様に土下座し、ガタガタと震えながら、『許して下さい!』と床に額を擦り付けるように謝罪しました。

やっと夢の国から帰還したようです。

「悪いがお前に関心は無い。ホワイトと返済について話し合え。それで終わりだ」

ブレイズは何度も頭を下げて退出しました。

「よかったのですか?」

「…………面倒臭いからいい」

何だかお疲れのようです。ダイアナ様絡みで仕事が溜まってしまった自業自得ではありますが、それでも子供達の為に毎日時間を作ってくれているのですよね。

「もう少しで落ち着きますよ。そうしたら、またフェミィ様達と一緒にピクニックでもしましょう」

励ます為にそう伝えると、旦那様がジッと私を見つめて来ました。

「何かありました?」

「……君はそれでいいのか?」

なんとも大雑把な問いかけです。ピクニックのことでしょうか。まさかブレイズのこと?

何だかよく分からず、つい、小首を傾げてしまいます。

「ずっと……私の妻でいてくれるのか」

……それですか。

コニー様にも聞かれましたよね。『お家でもミッチェ母さまになるの?』と。

あの時は何となく有耶無耶にして終わってしまいましたが、でも……どうなのでしょう。

「旦那様は、白い結婚をお望みでしたか?」

「君が受け入れられるまで待つつもりだった」

……それは白くない結婚です。

旦那様は本当に夫婦になる気があったということですか。

では、離婚する気も無く、これからもずっと本当の夫婦として?

「あんな、詐欺まがいの押しかけ花嫁でしたのに、よく結婚しようと思いましたね」

「……今考えれば、詐欺師は私だろう」

「どうしてですか?」

「あの時、おかしいと思ったのに君に婚姻届にサインさせた。……私に 怯(ひる) むことなく、真っ直ぐな瞳で私に向かってくる貴方が……その……とても好ましいと思った」

──チョロい。旦那様はチョロいです。

ダイアナさんの時といい、第一印象で決めてしまうのは如何なものでしょうか。

「ユーフェミアとコンラッドもすっかり明るくなって……私との仲も取り持ってくれて、本当に感謝している」

「そんな、お二人がとってもいい子だったのです。私も二人に癒やされまくっていますよ」

「貴方が来てから、家の中が優しい空気になった。

私は……貴方の、その優しさに……その、癒やされているし……ひ、惹かれている、と、思う」

「え…」

惹かれている……旦那様が!?

「君が今後も白い結婚を望むならそれでいい。ただ、できればずっと家族としてこの家にいてほしいと願っている」

家族として。それだけでいいの?

「そんなのでいいのですか」

「何故だ。抱き合うばかりが夫婦ではないだろう。お互いを尊重して、この家と子供達を共に守っていけたら……嬉しい」

あぁ、そこで真っ赤になって黙らないで下さいませ!

結婚して10年以上、二人も子供を授かったくせに、どうしてそんなに純情なのですか。

「ありがとうございます。あの、お気持ちを言葉にして下さって嬉しかったです」

「……君が教えてくれたことだ」

「それでもですよ」

すると、少し照れ臭そうにしながら、私の頭をそっと撫でて部屋から出て行ってしまいました。

──少し前まで大きな子供だったくせに!

不器用な手付きで……でも、大切そうに触れられました。

……ああ、ノーランにも頭を撫でられたことがありましたね。

その2つの違いは?

恋愛初心者には難しいです……。

でも、違いが分かったからといって何か変わるのでしょうか?だって私はすでに旦那様の妻です。

ただの政略結婚ではなく、旦那様が私を思って下さっていることが分かって喜ぶべきなのでしょう。それから白い結婚ではなくなることも……いえ、どうなのでしょうか。私は旦那様と本当の夫婦になりたいのかしら。

だって……夫婦になっていなくても家族として 十分(じゅうぶん) 幸せなのが困りものなのです。

困った。本気で困りました。

誰かに話を聞いてほしいです。でも、誰に?

「それで私に相談に来るだなんて、貴方、頭は大丈夫?」

貴方に頭の心配をされる日が来るとは思いませんでしたよ、ダイアナさん。