軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

54.これからのこと

フェミィ様の言いたかったこと。ちゃんと吐き出すことが出来てよかったです。

……でも、本当はまだありますよね?

「……ごめんなさい……、ユーフェミア」

それは初めて見るダイアナ様の素顔。

それまでは、涙を流していても、震えていても、どこか芝居がかっていて、美しく見える自分、可哀想な自分を意識して演じているように感じていました。

でも、今は───

本当の恐怖を、後悔を味わっているのでしょう。

子供達に見捨てられる恐怖。愛する者を失ってしまうことへの悔恨。

「ごめんなさいごめんなさい……ばかでごめんなさい、愛しているの、本当なの、貴方達を……愛してるの……なのに……母じゃなくて、ただのダイアナとして愛されたいと思ってしまった……

決して貴方達が嫌になったわけじゃない……不満だったわけじゃなくて……ただ、馬鹿なだけで……

だいすきなの…お願い…、嫌わないでっ…!」

それは、とても 拙(つたな) い謝罪と懇願でした。

それでも、彼女が初めて見せた心からの言葉。

「……お母様は馬鹿ね」

「うっ…、うぅ~~っっ」

身も蓋もないフェミィ様の言葉に、ダイアナ様は泣き崩れてしまいました。

やっと。やっとです。ようやくダイアナ様に届きました。

虚栄心や自己愛、そんなもので固められていた彼女の心に、やっとフェミィ様達の思いが届いたのです。

本当に遅過ぎます。どれだけ馬鹿なのか。

それでも、子供達を本当に愛していると言ってくれてよかった……それだけは真実で本当によかった。

「私はお母様が好きよ」

ビクッとダイアナ様の体が震えました。涙でグシャグシャの顔をそろそろと上げ、呆然とフェミィ様を見つめました。

「……え……」

「大好きだったの。綺麗で優しくて、自慢のお母様だった。置いて行かれて寂しかった。会えなくて悲しかった。私達よりブレイズを選んだことに腹が立った。お父様を虐めていることが情けなかった。

……それでも好きなの。だってお母様だもん。ずっと大好きだったお母様だもん!」

「……ユーフェミア」

「そんなに泣くなら変わってよ……本当に私達が好きなら変わってよ!優しかったお母様を本物にして!間違ってるの知ってるならっ!ちゃんと頑張ってよっ!!」

そんなユーフェミア様に駆け寄りたかったのでしょう。バランスを崩して倒れてしまいました。それでも、

「ユーフェミア、ごめんなさい!コンラッドも!こんなお母様で……本当にごめんなさいっ!!」

まるで痛みなど気付いていないかのように、必死に子供達に謝罪の言葉を投げかけていました。

「母さま、ぼくもね、母さますきよ?ミッチェが大好きだけどね、母さまもすき!父さまもすきだから、いじめたらダメだよ?」

「……コンラッド……ごめんね、貴方をちゃんと愛してるの…すき…だいすきよ……」

それから、しばらくダイアナ様は泣き続けました。フェミィ様がそんな母親を抱きしめ、コニー様が頭を撫でてあげていました。

正直、自分の欲求に素直なダイアナ様が本当に変わることが出来るのかは分かりません。

でも、子供達に見せた涙と愛の言葉は本当であったと信じたい。信じさせてほしいと、心から願いました。

◇◇◇

「ユーフェミア、コンラッド。これからのお話をしようか」

「「はい」」

ダイアナ様を落ち着かせる必要があった為、彼女はポーラと、念の為に侍従も付け、私達は別室に移動しました。

お茶とお菓子を用意して、少し休憩してから今後のお話になりました。

「お母様は……ダイアナはもうこの家には住めない。それは分かるかい?」

「はい」

「彼女は私達が迎えに行った、あの王都の家に住むことになる。もちろん、一人ではないよ。

ダイアナが死ぬかもしれない病だったのは聞いたね?その時に、右脚を失ったんだ」

「あんよないの?」

コニー様は、スカートで見えないから気が付いていなかったようです。フェミィ様は何も聞かないということはご存知だったのでしょう。

「そうだ。だから、まずは普通に動けるようになる練習とかが必要なんだ。そのお手伝いをしてくれる人が一緒に住むから、それは心配しなくていい」

「……ブレイズじゃないの?」

「どうかな。彼も仕事を見つけて働かないとご飯が食べられないからね。ずっと側にいるのは難しいだろう。

結婚するかどうかは……お祖父様にも相談してからだね。とっても怒っていたし、心配もされていたから」

「おじいちゃま、あえる?」

「お手紙を書くかい?コンラッドから会いたいとお手紙が届いたらきっと喜ぶだろう」

まあ、旦那様の情緒がかなり成長しているようです。要するに、子供達との報告日誌でのやりとりが嬉しかったということでしょう。

「お母様は捕まらないの?」

「……どうしてだい?」

「お金。たくさん使っちゃったんじゃないの?」

ピキリと旦那様が固まりました。まさか、フェミィ様がお金の持ち出しに気付いているとは思っていなかったみたいです。

「ユーフェミアは本当に賢いね」

そう言うと、フェミィ様の頭をソッと撫でました。その行為に今度はフェミィ様が固まっています。

フェミィ様はまだ旦那様との触れ合いに慣れていないご様子。まだまだ努力が必要です。

「いいな~!ぼくは?ぼくはダメ?」

「コンラッドももちろんいい子だ」

コニー様はすっかり旦那様と仲良しです。

二人の頭を撫でてから話を進めます。

「お金はね。盗む気は無かったんだ。自分のお金だと勘違いしていただけだったから。治療の為だったし、私とはお別れしたけど、お前達の大切な母親だから今までの分はもういいんだ」

「でも……」

「大丈夫だ。領民の為のお金を使った訳じゃない。夫人の維持費は私がすでに補ったから問題無い。

ただ、ブレイズの生活費として使った分はこれから彼に返済してもらうけどな」

彼の借金は結構な額になるでしょうね。ホワイトさんがしっかり算出してくれているはずです。

「伯爵家内でのことだから、私が被害届を出さなければ犯罪にはならない。

使われたのは私が稼いだお金だからね。使いみちは私が決められる。その私がそれでいいと判断したんだ。

こんな事で伯爵家に傷を付ける気は無いし、誰の得にもならないことをする気も無い。

それよりも、私はユーフェミア達の願いを叶えたいんだ」

「……私達の?」

「彼女に頑張って欲しいと言っただろう?それはきっと、牢屋に入ってしまっては叶わないと思う」

「どうして?」

「ユーフェミア達が私に少しずつ教えてくれただろう?同じことがダイアナにも必要なんだ」

罰を与えれば後悔はするでしょう。でも、心の成長には繋がらない。それでは意味が無いと仰っているのでしょう。

「でも、ぼくたち、すむのココだよ?」

「そうだな。だからダイアナにも手紙を書いてあげよう。あれは嬉しい」

「父さま、うれしいの?」

「すごく」

「じゃあ、おじいちゃまと、母さまと、父さまにもおてがみかくね!」

「楽しみにしている」

コニー様はすっかり旦那様マスターです。

「……変われるかな」

「すごく大変だと思う。家事だってやったことが無いし。だからサポート兼監視人は付ける。

これにかかるお金も気にするな。お前達を産んでこんなにもいい子に育ててくれた感謝の気持ちだ。お前達との約束通り頑張れるようにちゃんと支援するから。

あとはお祖父様達と話をして決めよう」

今、監視人って言ってしまいましたね?

でも、フェミィ様はホッとしたようです。ダイアナ様の信用の無さが泣けてきます。

「じゃあ、ミッチェは?お家でもミッチェ母さまになるの?」

……まさかの不意打ちを食らいました。