軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

50.一番大切な人

「ほら!完全に愛の告白よ?」

何故そこで勝ち誇るのでしょう。本当に私とは違う世界の住人のようで、旦那様が女神と言った理由が分かる気がします。

別次元の生き物だから、話が通じない。そういう意味なのでしょう。なのに子供達はあんなにも可愛らしいのですから、女神がおこした奇跡なのかもしれません。

「聞いてるの?ほら。早く彼に答えてあげたら?」

あら。つい、現実逃避していました。

早く子供達に癒やされたいです。

「下世話な女性は本当に嫌ですね。一番大切なことがどうしてすべて恋愛だと思うのです?」

「意味が分からないわ」

「頭の中がお花畑のようですから、分からなくても仕方がない」

ノーランは本当にダイアナ様のことが嫌いなのですね。でも、旦那様の前なのでさすがに控えてほしいです。

「私はミッシェル様の優しさと誠実さに心打たれました。まだ18…19になったか。そんな幼さで、家族に恵まれず、たった1人でここに放り込まれたのです。

不安だったでしょうに、訳も分からずこの家の厄介事に巻き込まれて、最初は不憫で仕方がありませんでした。

それでも弱音を吐かず、子供達を大切に慈しみ守ろうと頑張っている姿は本当に尊いと思いました。

そんな方だからこそ、もっと大切にされるべきなのに……」

そこでノーランは旦那様を 睨(ね) めつけました。

「だから絶対に私はこの幼い主人を大切にお守りすると勝手ながら誓ったのですよ。

私はミッシェル様にお仕え出来ることが本当に嬉しいんです」

尊いって、お守りするって……そんなこと生まれて初めて言われました。なんだか顔が熱い気がします。

でも、19歳は幼くないですよ?

「……どう聞いたって愛の告白じゃない」

「貴方には絶対に理解出来ない感情でしょうからこれ以上説明する気にはなりません」

「ダイアナ、止めなさい」

「グレンは許せるの?ふたりが想い合っていても」

いえ。思い合ってはいませんよ?信頼し合っている。ええ、そんな感じなのだと思います。

「あの、捏造しないでいただけますか」

「なぁに?ほんとうに違うと言えるの?一度も彼にときめいた事はないのかしら」

ときめき……は無い。ざわめきならばありましたけど。

「ダイアナ」

「だって!」

「止めろと言っているのが分からないのか」

ようやく旦那様が本気で怒っているのが分かったのだろう。やっと口を 噤(つぐ) んだ。

「貴方は本当に何も理解していないのだな。

未だに愛だの恋だのと騒ぎ立てて……」

そういえばそうですね。仲良く世間話をしていたわけでもないのに、突然恋愛物語に展開できる思考が心配になります。

「憲兵に突き出さないのは貴方を愛しているからじゃない。貴方が大切だからじゃない。

ミッシェルの言う通りだな。ちゃんとこうして会えて良かった。お陰様で、僅かに残っていた貴方への情は綺麗に消えたよ」

「グレンッ!?」

「ミッシェル、すまない。どうやら君の優しさは彼女には通じないらしい」

「旦那様……」

ようやく今の状況が理解出来たのでしょうか。

ダイアナ様は蒼白になって震えています。

なぜ、もっと早くに理解できなかったのか。

「ノーラン、感謝する。言い難いことを言ってくれて」

「お二人はかなり甘くていらっしゃる。さすがに見兼ねてしまいました」

「……彼女は子供だった私にとって幸せの象徴だったんだ。だからどうしても……信じたいと思ってしまった。今度こそ、と。

私は本当に愚かだな。何度も同じ過ちを繰り返して……」

「今回は子供達を思ってのことでしょう?それなら、今までとは違いますよ。旦那様はちゃんと変わることが出来ます。大丈夫です」

「……ありがとう、ミッシェル」

ふふ。なんと 微(かす) かな笑みなのかしら。ほんの1ミリ程度しか表情筋が動いていないですよ?それでも、変わっている証拠ですね。

「ダイアナ。君には分かりやすく契約書を作ろう」

「契約書?」

「ああ、簡単さ。決めごとを破ればその瞬間から君を罪人として扱う。横領の罪で捕らえ、厳罰に処す。それだけだ」

「……そんな酷いこと、貴方に出来るはずがないわ……」

「ただの気弱なお人好しが、いくら頑張ったからといってここまで稼げるとでも?私は 情(じょう) が絡まなければ狡猾になることも出来るよ」

怖いです。魔王の微笑を見てしまいました。

お仕事バージョンの旦那様は怖い人なのでしょうか。

「……私をずっと愛していたのではないの?」

「私はね。だが、お前には愛など無かっただろう」

「そんなこと!」

「正直に言うといい。……そうだな。もし、本当の気持ちを言えたなら、契約内容に手心を加えるかもしれないぞ」

ダイアナ様の瞳が泳いでいます。何が正解か分からないのでしょう。

「お前にとって、私との結婚は何だった?」

「……私は……だって、マイルズと結婚するはずで……だから抱き合えて嬉しくて……なのに死んじゃうから!

あの時から私の人生がおかしくなったの!

……そうね。貴方の呪いは本当にあったのかもしれないわね。貴方の大切なものはぜ~んぶ壊れていくのよ!

貴方との結婚?貴方への愛など初めからありませんが。それが何?

私はね、マイルズを愛していた。私を救おうとしてくれたフィル・ブレイズを愛している。

でも、貴方への愛など一欠片もないわっ!!」

涙を流しながらダイアナ様が叫びました。旦那様を睨みつけながら。

でも、ご自分の言葉に傷付いているようにも見えるのは気のせいでしょうか。

「……でも、子供達は本当に大切だったの。これでもちゃんと愛していたのよ。大切に育ててきたの。本当に可愛くて大好きで愛おしくて……

どうして私は……自分自身以上にあの子達を愛せなかったのかしら……」

そう言って泣き崩れてしまいました。

こんこんこん、こんこんこん

「……え……このノックは……」

『父さま、コニーです!はいっていい?』

あの、今は修羅場ですが!?