軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34.悪いのはだれ

「父さま!お残しはだめですよ!」

腰に手を当て、父親を断罪するコニー様は格好いいです。

「コンラッド……だが仕事が」

「父さま!お残しはっ!?」

「……駄目なのだな」

「そーですよ!」

旦那様は、まだ残っていたチキンを口に放り込みました。

「父さま、すぐ、ごっくんしたらダメよ?」

「……なぜ」

「ぶたさんになります!ぼく、ぶたさんな父さまはちょっと……」

「噛む。しっかり噛むから安心しなさい」

「あ、父さまのだいすきなブロッコリさんがのこってます!もぐもぐかんばって!」

和みますね。お二人のやりとりは。

残念な旦那様が、コニー様達と一緒なら愛でる対象になれることが素晴らしいです。

「旦那様、果実水をどうぞ」

高速でもぐもぐしている旦那様に飲み物を渡そうとすると、ピタッと動きが止まってしまいました。

「父さま、こわれた?」

「お父様は人間よ。壊れたのではなく、何かに困って固まっただけよ」

フェミィ様のツッコミはとても冷静です。

「旦那様、不審者になっています。困っているなら何に困っているのか話してくださいね」

「あ……」

待ちます。ちゃ~んと待ちますよ?私は待てる女です。イラッとはしませんから。

「……君が……被害者だと……」

ああ、それですか。話が途中で終わりましたものね?

「それ。ここで話します?」

子ども達の前ですよ。いいのでしょうか。

「……子ども達が眠ったら」

「ずるい!父さま、夜にミッチェとあそぶの?なにするの?ぼくもあそぶっ!」

「……コンラッド。遊ばないから」

「あ!じゃあ、いっしょにねる?ミッチェね、おうたがじょうずなの!」

凄いわ。的確にダメージを与えています。

というか、旦那様と一緒になんて寝ませんよ。

「ねえ、父さま。おでかけはいつなの?」

子ども特有なのでしょうか。コニー様のお話しはポンポン飛んでしまいます。ところで、お出掛けとは?

「どこに行きたいんだ」

旦那様も分かっていないみたいです。あ、もしかして……

「ちがうよ。父さまのお友だちのおうちよ?」

……やっぱりです。間に合わなかったことを伝えていませんでした。

「コニー様、実は……」

説明を終えると、コニー様は怒ってしまいました。

「だからヤダっていった!父さまのうそつき!」

「……すまない、ほんとうに悪かった」

「そだよ!悪いのよ!どうするの!ぼく、おっきくなるのに!おそろいの、きれなくなっちゃう!」

コニー様はどれほどの勢いで大きくなるおつもりでしょうか。

「そうか。コンラッドは大きくなったものな」

───何ということでしょう!

旦那様が……あの旦那様が、コニー様の頭を撫でていますっ!!

「……ぼく、おこってるの」

「ああ、悪かった」

「なんでいいこいいこするの?」

「何でかな。……コンラッド。駄目な父様をちゃんと叱ってくれてありがとう」

「ん~?いいよ。だって父さまダメダメだもん」

「そうか。駄目駄目か」

「そうなのよ。だからね、ぼく、おしえてあげるね?ぼくね、おしえるのとくいなの!」

一緒にお絵描きする?と聞いているコニー様はやはり最強かもしれません。

でも、こんなにも和やかになれるのですよね。それならなぜ?

「旦那様はどうしてもっと子ども達とお話しやお食事を一緒にされないのですか?夜だって一緒にお休みになったらコニー様も喜びますのに」

「父さま、いっしょにねる?おうたうたう?」

あら。なぜかもじもじ君になってしまいましたね。子ども達がやると可愛らしいのに、ゴツい三十二歳がやると何も可愛くありません。

「……泣かないか?」

「ぼく?つよいよ?なかないよ?」

「もしかして、泣かれたことがあるから避けていたのですか?」

「……だって、凄い泣き方で止まらなくて、気絶したから……」

それは泣き疲れて眠ってしまっただけでは?

というか、そこまでなる前に誰も助けて差し上げなかったのかしら。それは酷というものです。

「えー、ぼくじゃないよ。なかないもん」

「私だって、そんなはしたない泣き方などしないわ」

「…………そうか」

きっと記憶にないくらい幼い頃のお話ですね。

「赤ちゃんは泣くものですよ」

「だが、顔が真っ赤になって!」

「皮膚が薄いので、すぐに赤くなるのです」

「気を失ったのだぞ?!」

「赤ちゃんは体力があまりないですから、疲れて眠ってしまったのでしょう。誰も教えてくれなかったのですか?」

「温室で散歩を。ダイアナが呼ばれて、待っててと言われて……死ぬかと思って怖かった」

慣れないと怖いですよね。

「私も、たぶんコニー様くらいの頃に、弟を抱っこして歩いていたんです。そしたら転んでしまって。

落としてはいませんが、本当に驚きました。

泣いたから生きてる!と喜んだら、次は全然泣き止んでくれなくて。とっても怖かった覚えがあります。旦那様と同じですね」

その後でお父様に頬を叩かれてもっと怖かったのですけどね。やだ、手を上げられたことはないと思っていたのに、ありましたわ。

「でもですね、それって本当に悪いのは私達ではないのですよ?」

「……何故だ。私のせいだろう」

「いいえ。赤ちゃんの扱いが不慣れな私達に任せてしまった人の責任ですよ」

だって慣れていても扱いに困る事は多々あるものです。それを、まったく慣れていない人間と二人きりにするなんてありえませんもの。

「だが、」

「ダイアナ様も、その頃はまだお世話になれていない新人のお母様だったのです。ミスがあって当然でしょう?乳母を同行しなかったことがそもそもの間違いなのですよ」

「いや、彼女は間違いなど」

「間違いますよ?だって人間ですから」

「はいはい!ぼく、おぼえてるよ!かんぺきな人はいないんだよね?だからがんばるの!」

あら、お利口さんですこと。

「そうですね。凄いですわ、コニー様。旦那様よりも物知りです」

「えへへっ」

旦那様が困っています。否定したいのに、否定したらコニー様を否定することになりますものね。

ダイアナ様は、女神でも何でもなく、ただの一人の女性だと早く気付けるといいのですけど。