軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

978 フレデリックの懇願

バーハルを探索した結果、望んだ量の食料は手に入らなかった。発見したのは、邪気を放つ魔法陣だけだ。

今回はイザリオたちも呼んで、確認をしてもらった。まあ、専門家ではないので、詳しいことは分からなかったけどね。

結局、邪水晶を外して、現れたイビル・バーサーカーを俺たちが瞬殺して終わりにした。

イザリオとシキミが、今後の動きを相談している。

「当初予定していた巨人型はすべて殲滅したとみていいでしょう。この後、どう動きましょうか?」

「そうだなぁ。他の部隊からの救援要請はないんだろ?」

「はい。まあ、この辺りの町はほぼ壊滅状態ですので、連絡が取れないだけかもしれませんが」

「それだって、早馬くらいは送ってこれるだろうよ。指示がない以上、好きに動いても文句は言われんさ」

「では――」

「そうだな――」

そうして話をしていると、こちらへと近づいてくる集団がいることに気づく。空に上がって確認すると、500名ほどの部隊が、こちらへかけてくるのが見える。

冒険者と騎士、兵士の混成部隊であることからも、俺たちと同じように、各都市で結成された救援部隊なのだと思われた。俺たちとは違う都市から、出陣したのだろう。

その部隊から、指揮官たちが接触してくる。

彼らも、バーハルの様子を見にきたそうだ。バーハルの住民が僅かに脱出できたらしく、近隣で助けを求めたという。

イザリオたちが彼らと話し合い、避難民はここで彼らに引き渡すこととなった。戦闘力では圧倒的にこちらの部隊が勝っており、第二部隊が自由になる方が大陸のためになると判断したのだ。

これで自由になった第二部隊なのだが、そこに新たに接触してくる者がいた。いや、部隊にというよりは、フランに接触してきたというほうが正しいが。

それは、サーテの住民たちの護衛を救援部隊に引き継いだ直後であった。

再び何かが近づいてくる気配を、俺たちは捉える。凄まじい速度だ。伝令か何かか?

いや、伝令じゃないな。明らかに邪気を纏っている。しかし、抗魔の気配ではなかった。邪人――でもなかった。

竜人だ。邪気を放つ、竜人であった。イザリオたちも邪竜人の存在は知っており、即座に遠距離攻撃を放つような真似はしない。

ただ、警戒しながら、邪竜人を待った。すると、その気配の正体が、俺たちの知人であると分かる。

放つ邪気が圧倒的に強くなっているが、間違いなくフレデリックであった。走っているのではなく、翼を使って大地スレスレを滑空するように近づいてくる。

以前のフレデリックには、翼はなかったよな? ベルメリアには生えていたけど……。

「フレデリック」

「嬢ちゃん、知り合いかい?」

「ん」

フランの知人だと分かっても、イザリオやシキミは警戒を緩めない。竜人の一部が限りなく黒に近い行動をしているし、あの邪気だからな。仕方ないだろう。

それこそ、邪神に生贄でも捧げて力を授かったんじゃないかってくらい、濃密な邪気を放っているのである。

自分が、疑われる気配を放っていることが分かっているのだろう。フレデリックは翼を一回はためかせると、急ブレーキをかけて第二部隊の手前で止まった。

敵意を持っていないと示すため、こちらに向かって両手を上げる。それでもイザリオたちが警戒を崩さないのは、フレデリックの浮かべる表情のせいだろう。

フレデリックの顔は、どう見ても平静ではなかったのだ。怒りか焦りか、それとも違う感情か。眉は顰められ、一目で分かるほどに感情を押し殺している。

それでも、冷静な部分は残っているのだろう。フレデリックはこちらを刺激しないよう、ゆっくりと口を開いた。

「……このような姿ですが、害意はありません。ただ、そちらの黒雷姫殿に緊急の用事があり、不躾ながらこのような形で接触させていただきました」

フレデリックが声をかけているのは、イザリオだ。この中で、自分を瞬殺できる可能性がある相手に、自分が敵ではないと訴えているのだろう。

「……まあ、悪さはしなそうだな」

「ん。フレデリックはだいじょぶ。どうしたの? ベルメリアは?」

「黒雷姫……頼む! ベルメリアを、助けてくれ!」

ベルメリアの姿が見えないことに首を傾げるフランに対し、フレデリックはいきなり土下座をしていた。冷静だと思っていたが、やはり追いつめられているようだ。

「どういうこと?」

「ベルメリアは、竜人王に捕らえられてしまった……」

フレデリックが、ここ数日にあったことを語り出す。

「俺たちは、ベルメリアの母親を救い出すため、竜人王の居場所を探していた……」

「お母さん、竜人王に捕まったの?」

「ああ、そうだ……」

ベルメリアの母親であるティラナリアは、南の竜人の居留地にいたらしい。しかし、北の居留地の竜人による襲撃があり、彼らによってどこかへと連れ去られてしまったそうだ。その際、彼らは、竜人王との繋がりをうかがわせるような発言をしていたという。

2人は竜王会の幹部や闇奴隷商人を潰して回りながら、ティラナリアの情報を集めた。その結果、竜人王はトリスメギストスと何らかの繋がりがあると確信したそうだ。

「トリスメギストスとティラナリア様の力を使い、自分が超越者になると嘯いていたらしい。トリスメギストスと協力関係にあるのか、ただ利用しようとしているだけなのかは分からなかったが……」

ベルメリアたちは母親が大陸中央へと連れ去られたと確信し、救出に動いた。だが、異常に強い竜人たちに邪魔をされ、ベルメリアは捕まってしまったらしい。しかも、同時に抗魔にも襲われたそうだ。

その危機から脱出するため、フレデリックは半邪竜人の能力を使い、邪気をあえて吸収してパワーアップを果たしたらしい。

邪気で暴走する限界ギリギリだそうだ。

フレデリックの雰囲気が剣呑なのは、怒りや焦りだけではなく、邪気によって怒りやすくなっているからだろう。

「俺だけは脱出できたが……ベルメリアは連れ去られてしまった!」

「竜人、そんなに強かった?」

「ああ。それこそ、どいつもこいつも上位戦士並みだった。それに……」

「それに?」

「あの、抗魔たち……」

フレデリックは、そこで言葉を切る。どうも、自分の発言に自信がないらしい。しかし、すぐに絞り出すように、自分の感じたままのことを口にした。

「あの抗魔たち……。まるで、あの竜人たちが抗魔を操っているかのようだった……」

俺もフランも、馬鹿な話をと笑い飛ばすことはない。余りにも竜人王の都合よく現れる抗魔たちを見て、薄々俺たちも感じていたのだ。

竜人王は、抗魔を何らかの方法で操っているのではないかと。

フレデリックの言葉によって、その確証はより深まったのであった。