軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

976 超巨人型撃破

巨人型の右足を奪った代償に、精も根も尽き果てた様子で崩れ落ちるマツユキ。

しかし、誰も彼女を助け起こそうとはしなかった。すぐ脇に立っている護衛役のサカキすら、動こうとはしない。荒い息を吐くマツユキの横で、守るように立っているだけだった。

そんなマツユキに近寄ったのは、アジサイである。馬車から軽い身のこなしで飛び降りると、マツユキに小走りに近寄っていった。

その手には、これまた漆黒の鞘が握られている。ベルセルクの鞘だろう。

未だに膝立ち状態のマツユキは、震える手でベルセルクを持ち上げると、眼前で水平に保持する。

それに対しアジサイは、鞘を両手で抱えてベルセルクをゆっくりと納めていった。数秒の後、カチンという音と共にベルセルクが完全に納刀される。

すると、サカキが即座に動き、マツユキを抱き起こした。もしかすると、ベルセルクを抜いている状態では触れたりできない理由があるのかもしれないな。

マツユキは意識を失ったのか、サカキの腕の中でグッタリとして動かない。

開放せずともあの消耗。そりゃあ、本気を出したら死んでしまうのも納得である。

(師匠。巨人をやっつける)

『そうだな』

巨人型同士が融合したことで、凄まじいパワーアップを遂げた超巨人型。だが、片足を失ったことで、大地に倒れ伏している。

『やっぱり再生しない。ベルセルクの能力か? ともかく、今が好機だ!』

(ん!)

起き上がろうともがいている今こそが、最大のチャンスだった。皆、それが分かっているのだろう。

シキミは再び兵士たちをまとめ上げ、冒険者たちはその援護に回る。

「嬢ちゃん! 5分くれ!」

「分かった!」

イザリオは神剣開放せず、溜めを長く取ることで高威力の攻撃を放とうとしているようだ。

俺もフランも、神剣開放をしてほしいとは思わない。神剣なんて、そう頻繁に使うものではないのだ。反動と消耗だけでも、凄まじい負担なのである。

今なら、獣人国でアースラースが神剣の力を解放して見せてくれたことが、どれだけ驚くべきことだったかが分かった。

イザリオにしてはかなり長い溜めが必要だが、それだけ超巨人型が強いってことだろう。

『フラン。残った左足を潰すぞ』

(ん!)

『ウルシは、奴の腕をボトムレス・シャドウで攻撃するんだ。上手く行かなくても、踏ん張りを邪魔できればいい』

(オン!)

ボトムレス・シャドウは地面に開いた影の空間へと相手を飲み込んで、消滅させる術だ。ただ、飲み込む速度が遅いうえ、敵の全身を飲み込めなければ完全発動せず抜け出されてしまう。

この巨体を飲み込むことは、まず不可能だろう。ただ、発動中の影は底なし沼のような状態になるので、普通の地面よりは踏ん張りが利かなくなるのだ。

「ウルシ、がんば」

「オン!」

俺とフランが狙うのは、巨人型の足首である。奴が起き上がろうと丁度力を入れた瞬間、雷鳴魔術を連続で叩き込んだ。

「はぁぁぁ! 閃華迅雷! カンナカムイ!」

『カンナカムイィ!』

フランと俺で、計4発のカンナカムイが、巨人型の足首を打ち砕いていた。起き上がるためにブリッジ状態に移行しようとしていた超巨人型が、支えを失って再びその背を大地へと打ち付ける。

『フラン! 追撃だぁ! 再生される前に、さらに足にダメージを与える!』

「ん! はあぁぁぁぁ!」

空を駆け抜けて巨人型の足首へと近づいたフランは、全力で剣技を発動した。溜めの必要な天断ではなく、即座に使用できる剣聖技だ。

「ブレイド・ロンド!」

レベル8の剣聖技、ブレイド・ロンド。まあ、要は超高速の連続斬りである。3秒で12発ほどの斬撃が縦横無尽に繰り出され、巨人型の膝に大きな傷を穿っていた。

本来は複数の敵を攻撃するための技だが、フランはその攻撃を一点に集中させている。今のフランなら上位の剣聖技であっても、かなり使いこなせていた。

だが、巨人型もただやられているわけではない。

「む?」

『あぶね!』

技後硬直中のフランに対して、自爆するのも厭わず魔力弾を放ってきやがった。転移の準備をしておいてよかったぜ。

やはり、舐めていい相手ではないな。

すでに膝の再生が始まっているが、完全に治るまでは数十秒かかるだろう。そこから起き上がるまでは、さらに時間がかかる。

(師匠、次は腕!)

『了解!』

左腕はウルシがボトムレス・シャドウで攻撃している。沈み込む感覚を嫌がっているようで、上手く突っ張ることができないでいた。

『俺たちが狙うは、右腕だ!』

「ん! はぁぁぁぁ!」

「ブルルオオォォォ!」

空気抜刀術で残った右腕に切りつけ、さらに連続で雷鳴魔術を発動する。ダメージよりも、動きを阻害して体を起こすことに使えなくする目的だ。

巨人型が嫌がって、咆哮を上げるのが聞こえた。上手くいかない状況に焦ったのか、巨人型は俺たちを無視して無理矢理起き上がろうと腕を突っ張る。だが、俺はこれを待っていたのだ。

『ここ!』

奴が腕を地面に突いた瞬間を狙い、全開の念動を叩きつけた。内側からカックンするように不可視の力を加えられた巨人型の肘が、大きく曲がっていく。

「ブオオォォ?」

巨人型は、なぜ自分の肘が勝手に曲がるのか分からないと言った表情で、再度その体を地面に横たえていた。その体が叩きつけられた衝撃で、ズンという揺れが周囲に走る。

すでに何回も巨人型が起きては倒れを繰り返すせいで、その体の下は大きく陥没してしまっていた。

「また膝をやる!」

『おう!』

こうして、俺とフランが巨人型の四肢を攻撃しながら時間を稼いでいると、イザリオの叫び声が響き渡る。

「待たせたな! 離れろ!」

同時に、イザリオの立っている場所から炎の柱が吹き上がった。丁度、巨人型と都市の間だ。

できるだけ被害を出さないようにという配慮なのだろう。

フランとウルシが後ろを振り返ることもなく、最大速度で距離を取った直後であった。

「はぁぁぁぁ! 灰になりやがれ!」

イザリオが放ったのは、巨大な火炎の球体だった。

大地を飴のように溶かしながら、真っ赤な火の玉が走る。そして、巨人型の胴体に直撃すると、その上半身を飲み込むような真紅のドームが生み出されていた。

「ブルウルォォォオ!」

炎で形作られた直径100メートルを超える巨大なドームの中からは、巨人型の上げる憐れな悲鳴が聞こえてくる。

不思議なことに、俺たちにはそれほど熱が伝わってはこない。どうやら、炎と熱がドームの中に閉じ込められているようだ。

その証拠に、ドームと接している大地が、少々赤熱する程度で済んでいる。

イザリオが、できるだけ周囲への被害が少なくなる攻撃を選んだのだろう。

それから数十秒。次第に炎のドームが縮み始め、1分もすると完全に消え去る。そして、巨人型の上半身は跡形もなかった。灰となって消え去ったのだろう。

残った下半身や腕の一部は、サラサラと崩れて消滅していった。どれだけ凄まじい再生力を持っていようとも、上半身が消し飛べば復活はできないようだ。

「ふぅぅぅ。しんど……」

勝利を見届け、イザリオがその場でうずくまる。イグニスを支えにしてなんとか倒れずに済んでいるが、その顔には明らかな疲労と憔悴が見て取れた。

以前巨人型を倒した斬撃よりも、消耗が激しいように思える。それでも、神剣開放よりはこちらの方がマシってことなんだろう。

あくまでも、体力と魔力を消耗しただけの今回と違い、神剣開放はもっと根源的な部分が消耗してしまうのだ。神剣ではない俺でも、それは理解できた。

「イザリオ! だいじょぶ?」

「おう、なんとかなぁ……。ただ、ちょっと休みたいところだねぇ」