軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

974 成長した巨人型の力

明らかに怒りの表情でこちらを見る巨人型。

今まで、感情があるように感じたのは指揮官個体だけだったが、それ以上の存在である巨人型にも当然ながら備わっているのだろう。

「ルアァッ!」

『馬鹿の一つ覚えかよ!』

巨人型が再びしゃがみ込んで瓦礫を拾い上げる。だが、今度はさっきと全く同じではなかった。なんと、左右の手で瓦礫を掴んだのである。

驚く俺たちの前で勢いよく立ち上がった巨人型が、両手を同時に振り上げた。

「ルウウォォォォ!」

巨人型は、まるでニヤリと笑うかのように顔を歪ませると、左腕だけを振り下ろし始める。

『時間差で二連投するつもりか!』

(師匠、どうする?)

『俺を投擲しろ! フランは少し下がって、皆に直撃する奴だけ収納すればいい』

(分かった!)

フランは体を思い切り捻り、サイドスローのようなフォームで巨人型の左腕目がけて俺を投擲した。スキルと魔術で超加速するが、それでもろくなダメージにはなっていないだろう。ただ、これは距離を詰めることの方が主目的だ。

距離が近い方が、より念動を大きく作用させられるからな。

『まずは念動だ!』

先ほどと同じように念動を発動させ、巨人型の投擲を阻害した。ショルツの巨人型の投げた岩は、再びその足元に落下する。

しかし、巨人型の攻撃はこれで終わりではない。振り下ろした左腕の勢いを生かして体を捩ると、その反動を利用して今度は右腕をさらに勢いよく振り下ろしたのだ。

体のキレがありやがるな! だが、それも予測済みだ! 対処方法は考えてるんだぜ!

『自爆しやがれ!』

「ルオオォォン!」

巨人型の手の軌道を読み、その前にディメンジョンゲートを開く。動きが人間に近いため、予測は難しくはなかった。

魔法使いスキル、知恵の神の加護を全開にして、今作れる最も大きなゲートを作り出す。直径10メートルを超えただろう。

それでも、いくつかは時空の門を逸れて飛んでいってしまったが、大半はゲートに呑み込むことに成功した。

対となるゲートが生み出されたのは、すぐ近くだ。なにせ、奴の真後ろだからな。

ゲートから飛び出してきた無数の瓦礫片が、巨人型の背中に突き刺さる。

「ルウウウゥゥゥウッゥウッゥ!」

『ざまーみやがれ!』

「ルアァァァ……!」

強靭な体を持っていても、あの威力の攻撃を受ければダメージを食らうらしい。大量の岩が背中に突き刺さり、そこから魔力が漏れ出している。

こいつにとっては大ダメージではないだろうが、理解不能の事態に混乱しているようだ。背後をしきりに気にしている。

今の攻防で、ディメンジョンゲートを開くタイミングも完璧に掴んだ。次はもっと近くにゲートを作って、全部返してやる。

再びしゃがみ込んだ巨人型を見ながら、俺はそんなことを考えていた。だが、巨人型は中々起き上がってこない。

『うん〇座りしたまま、何して――』

「ルウウウウウウウッァァァアアアアァァァ!」

『なっ!』

ドゴンという衝撃音と共に、凄まじい魔力の奔流が周囲を吹き飛ばす。障壁を張ったので俺は無事だが、巨人型がいた辺りはクレーターのようになっていた。

咄嗟に上を見ると、巨人型の体が大きく跳ね上がっていた。奴は瓦礫を拾っていたのではなく、足を折り曲げて筋力と魔力を溜めていたのだ。

あの巨体の持つ力と、魔力放出の勢いを併用し、驚きの跳躍を可能としたのだろう。

投擲が上手く通用しないと判断し、直接攻撃に切り替えやがったらしい。ムカつくほど切り替えが早いな!

200メートルを超える超巨体が、その身長を超える高さにあった。巨大な影が大地をゆっくりと舐め、そのまま第二部隊の頭上の太陽光を遮る。

あの位置はやべー!

『うおおおぉぉぉぉ!』

俺は巨人型の後方に咄嗟に転移し、そのまま風魔術をぶち当てた。何とかその軌道を逸らそうと考えたのだ。

しかし、魔力障壁を纏う巨人型に対して、大きな効果は上げられなかった。だが、地上にいる者たちが何もしないわけがない。

竜の吐息を思わせる火炎の帯が、空中の巨人型へと放たれていた。さしもの巨人型も、イザリオの攻撃は防ぎきれないのだろう。

盾代わりにした左腕を焼かれた巨人型は、空中でバランスを崩して本来の軌道から逸れていった。それなりに離れた場所に落下するだろう。

だが、巨人型はそれでも往生際悪く足掻く。

なんと、腹から落下した直後、必死に伸ばした右腕を第二部隊目がけて振り下ろしたのだ。巨人型が落下した衝撃で大地が揺れ、第二部隊は咄嗟に逃げることができなかった。

高層ビルのようなその腕は、ギリギリ第二部隊に届いている。大型トラックよりも巨大な掌が、第二部隊の一部を押し潰すのが見えた。

「みんな!」

『くそぉぉ!』

慌てて第二部隊の下まで戻った俺たちは、その被害の大きさに歯噛みする。

冒険者、ハガネ将国の老兵も含め、50人以上が命を落としただろう。怪我人も同じくらいいるはずだ。

『フラン回復するぞ!』

「ん!」

兵士たちを回復しながら、急いで距離を取るようにフランが指示を出す。このままでは、起き上がろうとする巨人型によってさらなる被害が出てしまうかもしれないのだ。

直後、右腕を使って体を起こした巨人のすぐ脇で、赤い光が立ち上るのが見えた。

イザリオである。

神剣を開放したのかと思ったが、そうではないようだ。巨人型の気を引くため、魔力を派手に放出したらしい。

『フラン今の内にみんなを移動させろ!』

「ん。みんな、急ぐ!」

大打撃を受けたとはいえ、そこはさすが精鋭部隊。フランの指示に即座に従い、怪我をした仲間を担いで移動を始める。

そうしている間にも、膝立ちになった巨人型がイザリオに向かって右手を振り下ろすのが見えた。だが、その時にはすでにイザリオの姿はそこにない。

高速移動して、巨人型の攻撃を回避したのだ。そのまま側面へと回り込み、火炎を放って攻撃を加えている。牽制に見えるが、その火炎はランクS冒険者の放ったものだ。

巨人型の防御を貫き、体表を焦がしていた。即座に再生が始まるものの、多少のダメージが入ったことは間違いない。

巨人型の注意が、第二部隊からイザリオへと移ったのが分かった。完全に、イザリオを獲物と見定めたのだろう。

「紅蓮刃殿が引きつけている間に、儀式魔術の準備を行う! 冒険者組は怪我人の救護を!」

シキミの指示に従い、生き残りたちが陣形を組み上げる。俺たちはその前に陣取り、防御役だ。

(もう、被害出さない)

フランは魔力を練り上げ、いつでも大技を放てる体勢である。このままハガネ将国の儀式魔術で削り、俺たちとイザリオでとどめっていうのが一番手堅いだろう。

町に近すぎるが、もうこれ以上は配慮していられない。多少の被害はもう許容するしかなかった。

こちらが出方を決めて、身構えたその時である。フランが真横を向いた。

西の空を舞う、何かの影が目に入ったのだ。最初は鳥の群かと思ったが、違う。この大陸に、あんな大きな鳥はいない。

「なんか飛んでくる!」

『岩だ! 収納!』

「ん!」

それは、無数の岩石であった。瓦礫というよりは、そこらの岩を砕いて投げたような感じである。それが20以上、こちらに襲い掛かってきていた。

誰の仕業だ? 巨人型の動きはずっと注視していた。こいつの仕業ではない。

すると、遠くからこちらに凄まじい勢いで近づいてくるなにかを見つける。人の形をしているが、人ではない。巨大すぎるのだ。

『巨人型が、もう一体くるぞ!』