軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

971 邪気と巨人型

うつ伏せ状態に倒れ込んだ巨人型目がけて、俺たちは総攻撃を開始した。

「トール・ハンマー!」

『カンナカムイ!』

「ウオオォォン!」

俺の多重カンナカムイと、フランたちの魔術が巨人型の頭部に降り注いだ。それだけでも小さな集合住宅ほどもある巨大な頭部の上半分が砕け、脳漿の代わりに黒い謎物質が溢れ出す。

そんな巨人型に、今度は無数の火炎弾が降り注いだ。当然ながら、攻撃を仕掛けたのは俺たちだけではなかったのである。

イザリオの火炎。シキミのものと思われる岩の槍。その後は兵士たちや冒険者たちの矢と魔法が放たれていた。

上半身を中心に、数百もの攻撃が加えられただろう。しかも、これで終わりではない。

ハガネ将国の老兵たちがいくつかの場所に集まり、そのグループそれぞれから膨大な魔力が立ち上っていた。複数の人間で一発の魔術を放つ、儀式魔術だ。

一分を超える長い詠唱が終わると、イザリオにあわせてなのか、巨大な火炎の塊がいくつも放たれていた。

大きな弧を描いて、10を超える炎塊が巨人型に着弾していく。爆発というよりは、なかなか消えない魔術の炎で焼き続ける魔術らしい。

巨人型の上半身がほぼ火炎に包まれている。それでも、巨大な抗魔を倒すには至らない。ダメージはあるが、まだまだ元気だった。

『フラン! 奴を起き上がらせるな!』

「ん! ウルシ、右腕をやる!」

「オン!」

俺を肩に担ぐように構えたフランが、ウルシに指示を出す。上空から一気に駆け下りたウルシが、巨人型の右腕を掠めるような軌道で走り抜けていた。

すれ違いざまに俺をフルスイングしたフランによって、巨人型の右手首が深々と切り裂かれる。切断までとはいかなかったが、その行動を邪魔することは成功していた。

立ち上がるために腕に力を込めていた巨人型が、片腕を使えなくなったことで再び倒れ込んだのだ。その巨体が、右肩から再び地面に激突する。

「いいぞ嬢ちゃん!」

「ん!」

一撃で倒しきることはできなくとも、このまま削っていく作戦だ。

途中で巨人型が全身から魔力を放出し、周辺全てを吹き飛ばそうと試みたが、それでも第二部隊は負けなかった。

フランとイザリオ、ハガネ将国の兵士たちで多重の障壁を張り、魔力放出を防いで見せたのである。

結局、第二部隊は一兵も損なうことなく、巨人型を倒しきっていた。最後は、イザリオと俺の全力の魔術でとどめだ。

頭部を燃やされ、胸部に穴を開けられた巨人型。ついに再生力が追い付かなくなり、その巨大な体がゆっくりと崩れ落ちていった。

巨人型に完勝した第二部隊は、そのまま崩壊した町へと歩を進める。抗魔が残っていないか確かめるためだ。

生き残りの救助などは行わない。この部隊はあくまでも、巨人型討伐のための部隊だからだ。救助や再建、炊き出しは、後続の部隊の仕事であった。

「こりゃあ、町の放棄も視野に入るかもなぁ」

「そうなの?」

「再建には相当な時間がかかる。貴重な安全地帯だが、すぐに町として使うのは難しい。住人も全滅しちまってるみたいだしな」

「……ん」

抗魔がうじゃうじゃといる代わりに、住人の姿はない。

イザリオたちの推測では、巨人型の魔力吸収能力のせいで町の人間は身動きができなくなり、そこを抗魔に襲われたのではないかということだった。

抗魔がまだ町にとどまっているのは、安全地帯を破壊するためだと思われるが……。抗魔によって町が占拠されてる状態でも、その場に残り続けている理由は分からなかった。

何か、抗魔を引き付けるような物がこの町にあるのだろうか? どこかに生き残りがいて、その魔力に引きつけられている?

イザリオとシキミが話し合い、最初に巨人型が暴れていた場所を中心に、斥候を放って異変がないか探ってみることにした。

俺たちもウルシの背から、町の中の気配を探ってみる。すると、フランとウルシが同時に何かに気づいていた。

一瞬遅れて、俺にも分かる。

(師匠。これって)

『ああ。邪気だ』

地面の一角から、濃密な邪気を感じ取ることができた。

巨人型に踏み抜かれたことで、陥没してしまった場所だ。大きな穴に瓦礫の山が雪崩れ込み、完全に覆い尽くされてしまっている。

内部に上位の抗魔がいるのかと思ったが、邪気の位置が全く動かない。

『ウルシ、ここで見張りと抗魔の排除を頼む』

「オン!」

『俺たちは、瓦礫除去だ』

「ん!」

慎重に瓦礫を収納しながら、俺たちは穴の底を目指していった。半分ほど進んだ時、フランが足元の瓦礫の隙間を指さした。

「師匠、あれ」

『なんか、下から紫の光が出てるな!』

一番似ているのは、先日見た邪水晶の輝きだ。ここでも竜人王の暗躍があったのかもしれない。そして、この下に邪水晶がある可能性があった。

普通なら巨人型に踏み潰されたことで、邪水晶なども砕けているはずだ。だが、瓦礫の隙間などに入り込み、奇跡的に砕けなかった邪水晶があるのかもしれない。

ともかく、本当に邪水晶なのかどうか、正体は突き止めておきたいのである。

俺たちはさらに発掘を続けた。すると、邪水晶を発見することなく、穴の底へと辿り着いてしまう。元々は、地下20メートルほどの地下ホールだったのだろう。

そして、そこには邪気を発する意外なものが存在していた。床に、巨大な魔法陣が描かれていたのだ。暗い紫色の光を放つ魔法陣が、濃い邪気を周囲へと撒き散らしていた。いや、魔法陣の全体が見えるようにさらに瓦礫を除去していくと、邪水晶を発見することができていた。

魔法陣の中央に、小ぶりな邪水晶が置かれていたのだ。魔力の流れ的に、この邪水晶が魔法陣へと力を供給しているのだろう。しかも、ただ邪気で周囲を汚染するための仕掛けではなさそうだ。

俺の持つ金式スキルが、妙な反応をしていた。この魔法陣、抗魔に関する何らかの効果があるようだ。巨人型の行動から考えれば、抗魔を引き付ける効果があるのだろう。

『とりあえず、この邪水晶は収納しちまうか』

(あと、魔法陣も壊す)

『だな』

ただ、俺としては少し気になることがあった。

『センディアの地下には、邪水晶が大量にあったよな?』

それなのに、ここには小ぶりのものが1つだけだ。最初から少なかったのか? それとも、魔法陣の起動に使った以外のものは、誰かが回収したのか?