軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

957 大きな異変

竜人たちを捕らえて色々と聞き出したんだが、重要な情報はほとんど得られなかった。というか、碌な情報を知らされず、命令されたままに動いていただけだったのだ。

それでも、いくつか分かったことはある。

「竜人王の命令ってことか」

「ん。北の竜人が敵」

「居留地ごと、竜人王に協力してるみたいだしねぇ」

捕まえた竜人たちは、ただのチンピラではなかった。

北の竜人居留地の、見習い戦士たちだったのである。厳しい訓練が嫌になって逃げだしたはぐれ者ではなく、正式に命令されて竜人王に協力しているらしい。

「でも、何をしているかは分からないと」

「居場所も知らないって」

ただ、それ以上のことは分からなかった。まあ、竜人王が暗躍しているという確信が得られただけでも十分だろう。

「彼らの証言が本当なら、竜人王がこの辺りを封鎖しようとしているってことになる。何を企んでるのかは知らないけど、きっと碌なことじゃないだろうよ」

「証言、嘘じゃなかった」

「へぇ? もしかして、嘘看破持ってるのか?」

「女の勘」

「はっはっは! そりゃあ頼もしい!」

「どうする?」

「そうだねぇ。もう少し詳しく事情を知ってる竜人から、話を聞いてみたいところだ。そう言えば、さっきの脅しは良かったねぇ? 次も頼むよ」

「ん! 任せる」

竜人たちから得られた情報は、大きく3つ。

北の居留地の竜人たちに侵入者を排除しろと命じたのが、竜人王であるということ。竜人王は、強大な力を得て超越者になろうとしているということ。そして、その力を以ってこの大陸を竜人のものとし、新たな竜人王国を建国しようとしているということ。

「竜人王の目的とトリスメギストスがどう関わるのか分からんが、絶対に碌なことにならんでしょ」

「ん。行ってみる」

「うーん、どうしようかねぇ。お嬢ちゃん、中央への立ち入り許可、下りてないよね?」

「緊急事態」

「ふーむ……。まあ、ランクS冒険者が許可を出したってことで、ゴリ押しするか。普段ギルドに協力してるんだし、こういう時に権力は使わんとねぇ」

「おお! じゃあ、トリスメギストスに会いに行っていい?」

「竜人王を見つけるのが最優先だよ?」

「分かった」

なんか、なし崩し的に大陸中央へ立ち入ることになってしまったな。本来はギルドの許可が必要なはずだが……。イザリオが一緒だし、彼が後で口添えしてくれるなら大丈夫か?

それに、イザリオの言う通り、竜人王への対処が最優先なのだ。放置すると、それだけ暗躍が進みそうだからな。

ああ、竜人たちはその場で放置だ。

敵ではあるが、イザリオが命は取らないって約束しちゃったしね。それに、闇奴隷売買には関わっていなかったのだ。

弱いと言っても竜人だ。そのうち自力で脱出するだろう。

竜人王が目的を達成する前に、発見して捕まえる。そう決意した俺たちだったが、すぐにその足を止めることとなってしまう。

ゴゴゴ……。

「揺れたか?」

「ん?」

地響きのような音がした直後、イザリオが足を止めて呟いた。どうやら、地面が揺れたと感じたらしい。だが、俺とフランは気づけなかった。

ウルシの上だったからだ。ウルシが駆ける際の震動しか、伝わっていないのである。

『ウルシ。どうだ?』

「オン!」

コクコクと頷くウルシ。本当に揺れたらしい。

ゴゴゴゴゴゴ!

さっきより大きい地鳴りだ!

「揺れた!」

「オン!」

「嬢ちゃんたちにも感じられたか! 一体何が起きている……? ゴルディシアで地揺れが起きるなんざ、聞いたことがねーぞ」

どうやらゴルディシアは、地震そのものが発生しない大陸であるらしい。ということは、何らかの異常事態が発生しているとみて間違いないだろう。

その直後だ。

「なんだぁっ?」

「!」

「グルッ!」

フランたちが、同時に身構えた。明らかに異常な量の邪気が、周辺を一気に覆い尽くしたのだ。

同時に、地面が激しく震動をし始める。

ガタガタ――ゴゴオオォォォォ!

フランたちの体が軽く上下するほどの、凄まじい震動が大地を揺さぶっていた。それこそ、震度5くらいはあるんじゃないか?

揺れはそのまま収まるどころか、さらに激しさを増していく。

「何か、出てくる!」

「ありゃあ、トリスメギストスの居城がある方角だ!」

フランが指さした方角に、突如として巨大なナニかが出現していた。大地を突き破って現れたソレは、舞い上がる粉塵のせいで姿形がよく分からない。

しかし、空気中を覆った塵のヴェールの向こうに、明らかに数十メートルはありそうな巨大な影が見えていた。

いや、この距離からでもあんなに大きく見えているのなら、100メートルは超えているかもしれない。

サイズ感で言えば、超巨大な高層ビルだ。

「嬢ちゃん、この場で待機だ。何が起きてるか、俺にも分からん」

「……わかった。トリスメギストス、大丈夫かな?」

「はっ! 奴の無事を心配する人間なんざ、初めて見たぜ? それに、奴は不老不死の存在だ。殺せる奴がいるなら、知りたいもんだよ」

そもそも、誰が何をしたのかもわからん。竜人王の暗躍か、トリスメギストスが何かしたのか。それとも、抗魔そのものに異変が起きたか。

情報が少ない以上、ここで待機するしかない。

ヤキモキしながら待つこと数分。

粉塵の向こうに、微かにシルエットが浮かび上がる。

「少し見えた!」

「オフ!」

「おいおい……なんだありゃぁ……」

最初は塔か何かだと思っていたそれは、建造物ではなかった。

影が蠢き始めたのだ。蠕動を繰り返すソレは、明らかに生きていた。