軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

950 ベルセルクの使用者

アルファの情報を教えてもらった俺たちは、他の神剣に関しても詳細を聞いていった。アルファの次に気になるのは、やはりベルセルクだろう。

「狂神剣・ベルセルクは、ハガネ将国傘下の月下美人という組織が保有、運用を行っております」

「月下美人?」

『一晩で散る、花の名前だな』

美しいが、不吉な意味合いも含む名前だ。

「アジサイとマツユキっていう女の子がいた。あの子たちが月下美人?」

「間違いなく、その少女たちがハガネ将国によって作られた、ベルセルクの装備者でしょう」

「作られた?」

「はい。初代の血と、優秀な者の血を混ぜて作り出される、ホムンクルス。それが月下美人の神剣使いです」

まさか、神剣の使用者として育てるどころか、それ用のホムンクルスを生み出しているとは!

ただ、そこまでする理由はなんだ? アドルのように、適性者を育てるのではいけないのか? 俺たちの疑問が理解できたのか、銀の女がさらに説明をしてくれる。

「ベルセルクの使用者が必ず死ぬという話は聞いたことが?」

「ん。ある」

「ですが、初代の使用者は、暴走はすれども死にはしなかったらしいのです」

「そうなの?」

「はい」

この話には、ベルセルクの使用者制限が深く関わっているらしい。

ベルセルクには元々、初代使用者と、その血筋の者しか使うことができないという制限があった。血を引かぬものが長時間触れていれば、それだけで命を奪われるという。

だが、そこで大きな問題が起きる。

なんと、初代の血筋が、様々な理由で途切れてしまったのだ。戦争、疫病、暗殺。そして、自らの意思で血を残さぬと決めた者。

当時ベルセルクを所有していた国は、大混乱に陥った。突如最高戦力が使えなくなったのだから、当然だろう。結局、その国は内乱や外憂によって滅んでしまったそうだ。

その後、研究者や王族とともにその国の人員を取り込んだのが、当時のハガネ将国だった。

その時はまだシラードの属国でしかなく、搾取される側だったハガネは密かにベルセルクの研究を進め、なんとか運用する方法を編み出す。そして、その力を使ってシラードの支配から脱却したのだ。

そのため、亡国の人員によって構成されていたベルセルク運用研究組織は、ハガネ将国のなかでも特別な地位を築いていた。

研究所の後継組織である月下美人も、ハガネ将国では大きな権限を有しているそうだ。

「多くの失敗の果てにハガネ将国が考え出したベルセルクの運用方法が、初代の血を引くホムンクルスの製造でした。ただ、完全な子供ではないせいか、ベルセルクを使うことは可能でも、その後必ず死亡してしまうそうです」

制限が中途半端に作用するってことか。触れたり、神剣開放は可能。しかし、初代のように生き残ることは不可能。それが、ベルセルクを使用すると必ず死ぬという噂の正体だった。

「老人兵たちは、ハガネ将国で選ばれた露払いです。できるだけ、神剣使いの損耗を避けたいのでしょう。老人ばかりである理由は分かりません。彼らはあまり無駄口を叩かないので」

嫌な想像を働かせると、姥捨て的な発想に思い至るが……。それにしては、老兵たちのやる気が凄い気がするんだよね。

「ベルセルクの制限は暴走と、血による縛り。能力は、アルファ以上のステータス強化。それと、その人間の持つ才能や潜在能力を引き出すことができます」

「持ってる才能で、強化される力が違うってこと?」

「はい。そのため、使用者によってどのような能力が引き出されるか、不明だそうです」

同じ血を引いていても、才能や能力は完全に同じにはならない。だとしたら、月下美人の神剣使いは、開放するまでどんな能力を発揮するか分からないってことか?

しかも、使えば必ず死ぬというのなら、毎回使用者が違う。つまり発揮される能力も違ってくるのだ。敵としては、対策が不能ってことなんじゃないか?

アルファを有するシラードが、ハガネ将国との全面戦争を避けた理由が分かった。下手したら、アルファでもどうしようもないような化け物が生まれる可能性も、ゼロじゃないのだ。

しかも、戦闘中にアルファは弱体化し、最悪死亡する。メリットがなかった。

「使用時に、巻き込まれないように注意してください」

「……ん」

アジサイのことを考えて、フランのテンションが目に見えて下がったな。

「ベルセルクの代償に関しては分かりません。使用したホムンクルスたちが死んでしまうので」

「そう……。ねぇ、ガイアとかイグニスの代償は? だいじょぶなの?」

そこまで聞いて、他の神剣の代償が気になったらしい。特に、知り合いの神剣使いの命が大丈夫なのか、心配になったのだろう。銀の女が情報を持っているという、ガイアとイグニスの名を口にする。

だが、銀の女は表情を変えず、しかし申し訳なさそうに首を振った。

「申し訳ありません。ガイア、イグニス、双方ともに代償に関しての情報が不足しております」

アースラースもイザリオも神剣の使用を最低限にすることで、消耗を極力抑えているらしい。そのため、どのような代償なのか、判明していないようだった。

アルファやベルセルクに関しては、同行者や部下たちの会話を盗み聞きしたことで集めたものも多いみたいだしな。

基本ソロのアースラースたちの情報は、意外と集まりにくいのだろう。

「ですが、最初の神級鍛冶師ウルマーの神剣は、似た代償である可能性が高いと思われます。実際、クリスタロス、テンペストはアルファと同じ代償でした」

アルファとイグニス、ガイア、クリスタロス、テンペストは同じ作者の神剣だったのか。

ウルマーの作る神剣は、汎用性が高く、使いやすい神剣が多い印象だ。弟であるディオニスが、癖が強くて凶悪な神剣ばかり作っているのとは対照的だろう。

「じゃあ、イグニスとガイアも、レベルが代償?」

「かと思われます。あくまでも予測ですが」

ついでに、イグニスやガイアの能力も教えてもらった。まあ、ガイアを見せてもらったことがあるし、開放前のイグニスの能力をガルスに教えてもらったこともあるので、予測通りだったけどね。

ガイアは地。イグニスは炎。クリスタロスは水。テンペストは風。これらの属性に特化し、使用者にその属性を操る力を与える神剣だ。

さらに神属性を付与することで、耐性があってもダメージを通すことができる。近接、遠距離、物理、魔術。全てで活躍できる、万能の能力を持っていると言えるだろう。

因みに、クリスタロスがゴルディシア大陸で最後に観測されたのは1000年近く昔。テンペストはさらに前の事らしく、現在の所有者などは知らないということだった。

クリスタロスの形は、青と白のサーベル。俺と似た色使いかもしれん。ちょっと親近感湧くね。開放すると、水や霧のような不定形になるらしいが。イグニスの水版ってことだろう。

テンペストは緑を基調としたエストックで、開放後は少々豪華になる程度らしい。ただ、刃がロケットペンシルのように無数に分離し、その間を見えない風の剣身が繋ぐことで、鞭のようにも使えるようになるそうだ。

一撃で大地を削り、大軍を撃滅する風の鞭。アマンダの鞭でも大概恐ろしい威力だったが、神剣ともなればあれを遥かに超えるのだろう。

イグニスの凄まじい力を見たばかりだからな、クリスタロスもテンペストも、負けずに恐ろしいに違いない。