軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

938 ノクタに集う者たち

イザリオに模擬戦を断られたフランは、傷心を癒やすために町へと出ていた。ソフィと出会ったあのカフェで、やけ食いをするためだ。

その道中、急に人々のざわめきが耳に入ってくる。どうやら、北門の方で何かがあったらしい。

抗魔の襲撃かと思ったが、どうもそんな雰囲気ではなかった。悲鳴というよりは、歓声に近いのだ。

気になったので門へと向かってみると、歓声の理由が分かった。どうやら、有名な軍勢が到着したらしい。

フランの横を駆け抜けていく人々が、今度はどんな人が来たのか楽しみだという感じの話をしていたのだ。

ノクタは多くの人々が訪れる中継地点だし、有名な冒険者パーティや騎士団、傭兵団などが頻繁に訪れるのだろう。町の人々にとって、そういった面々を野次馬するのが一種の娯楽のようになっているらしい。

しばらく歩いていると、大通りをこちらへと向かって歩いてくる一団がいた。周囲を野次馬が囲んでいるし、彼らが騒ぎの中心で間違いないだろう。

足を止めて見ていると、通り過ぎる一行の姿がよく見える。

先頭の者たち全員がお揃いの鎧を着こんでおり、どこかの騎士団だということが分かった。騎士とその従者などを含めたら、300人ほどの集団だろう。

というか、騎士の白銀の鎧には見覚えがあるな。

(聖騎士?)

『ああ。こいつら、シラードの騎士たちだ』

陽光を反射して輝く白銀色の鎧に、交差した剣と馬のエンブレム。先日見たばかりなのだ。見間違うわけがない。こいつらは、聖国シラードの聖騎士だった。

もしかして、この中に神剣騎士もいるのか? 国旗を掲げながら歩く儀仗隊のせいで、一行の中心は見えない。気配なども感じることができなかった。

ただ、これはマズいのではなかろうか? センディアから逃げ出した聖騎士たちが、本隊に対して自分達に都合のいい報告を上げていたら?

フランは聖騎士に敵視されている可能性もあった。全員があんな奴ばかりだったら、こちらの言葉なんか聞く耳持たないだろう。

『フラン。とりあえずこの場を去るぞ』

(ん)

フランが野次馬に紛れてその場を離れようとした、その時だ。再び門の方から騒めきが上がった。また有名な団体がやってきたらしい。

聖騎士たちから離れつつも、門の方へと向かってみる。すると、そこにはやはりお揃いの装備に身を包んだ、異様な雰囲気を放つ集団がいた。

数は全部で1000人を超えるだろう。ただ、騎士団ではなく、兵士団という感じだ。しかも、全員が老人で構成されていた。

地味な漆黒の軽装備に身を包んだ、老槍兵の集団。それが、門をくぐって現れた一団の姿であった。

さらに、中央には馬車が見える。地味な老人たちの装備と違って、非常に豪奢な白馬車だ。曳いているのは、8本足の馬だった。

ランクCモンスターである、スレイプニールであった。それだけでも十分目立つが、中からは不思議な魔力が漏れ出している。

強力な魔術師でも乗っているのだろう。指揮官もあの馬車の中なのかね? 旗印は、赤地に黒い剣と、それと交差する白い大輪の花だ。禍々しさと高貴さを感じさせる、一目見たら忘れられない旗だった。

「あの旗、ハガネ将国の旗だ」

「ハガネって、北の? シラードと犬猿の仲なんだろ?」

「おいおい、ノクタで小競り合いしたりしないよな?」

フランと共に、人々の会話に耳を澄ませる。この兵士団は、ハガネ将国の所属であるらしい。北の大陸を聖国シラードと二分する、軍事大国だったはずだ。

俺たちにとっては、神剣ベルセルクの保有国という印象が強い。

両軍事大国が、ノクタにやってきたという訳か。

(神剣、どっかにある?)

『うーん、馬車の中かね? さすがに視認できない場所にあると、分からんな』

(残念)

フランとしてはベルセルクを一目見てみたかったのだろう。

『あとで冒険者ギルドにいってみよう。何か情報が得られるかもしれん』

(ん)

とりあえず、当初の目的であったカフェに向かう。すると、その道中で見知った顔と再会していた。

「あら? フランではないの!」

「おお、戻っていたか!」

「ジェイン、オーファルヴ」

そこにいたのは、カステルで世話になった女王様コンビである。魔族の女王ジェイン・ドゥービーに、ドワーフの女王オーファルヴ・ファルニィスだ。

やはり仲が良いらしく、護衛を5人ずつ引き連れて一緒に行動しているようだった。

「久しぶりね!」

「壮健そうであるな」

「ん。まだ残ってくれててありがと」

「約束したのだから当然よ!」

「抗魔の季節が終わるか、目覚めるまでは付き合うさ」

彼らはナディアの護衛も兼ねて、この都市に残ってくれていた。律儀に、ここに留まり続けてくれていたらしい。

「それにしても、また強くなったんじゃない? こう、放つオーラが違うわ!」

「うむ。センディアでの戦いは、凄まじかったようだな。よければ詳細を聞かせてはくれぬか?」

「わかった」

「やった! じゃあ、お勧めのお店があるの。そこ行きましょう」

「あそこならば個室もあるからな」

そう言って2人に連れていかれたのは、裏通りにある隠れ家的なレストランだった。ただ、中に入るとかなり広く、女王の護衛たちも食事ができるだろう。

さらに奥には個室まであるのだ。実は高級レストランであるらしい。料理の値段もかなりお高いが、気にするような面子でもない。

適当な料理と一番高い酒を頼んで、テーブルへと着いた。

「じゃあ、友との再会に!」

「うむ!」

「ん!」

そして、和やかな雰囲気の中、互いに分かれていた間のことを語り合う、食事兼報告会が始まる。

フランの報告は相手を驚かせっぱなしだったけどね。ただ、俺たちも驚かされることがあった。

なんと、ジェインが神獣化について知っていたのだ。まあ、本当にわずかではあったが。

「大昔の魔王が、神獣化スキルを持った獣人のアンデッドを眷属にしていたはずよ。王の友で、死んだ後は自分の体を有効利用しろと言い残していたんだとか」

「どうやったら神獣化を覚えられるか、知らない?」

「うーん、詳しいことは伝わってないわね。ただ、伝承では、神に認められし白狼って言われてたはず」

「神に認められし……」

つまり、神様に認められるだけの功績を上げたらいい? 少なくとも、ただステータスを上げりゃいいってもんじゃなさそうだった。