軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

924 神獣vs抗魔

「目がぁ!」

メアが自分の目を押さえて悲鳴を上げている。まさか、神剣の放つ光で自爆するとは……。鋼狼たちが周囲の抗魔を蹴散らしてなかったら、結構危険だったかもしれないのだ。

「グ、グギャ?」

リンド――いや、リンドヴルムも、困惑してるぞ? 自分の足元で喚いている自分の主人を、オロオロしながら見下ろしている。

そう、出現したリンドヴルムは、伝説の通り非常に大きかった。全長100メートル近いだろう。

以前見た水竜と比べても、倍以上の巨体である。放たれる力も、膨大であった。普段、このレベルのドラゴンに遭遇したら、まず逃げることを考えるだろう。

まあ、その威厳も、主のせいで台無しだけど。健気にも尻尾でメアの周りを囲い、襲い掛かる抗魔から守っている。

「ぬぅ……。よもやこれ程光るとは! 不覚であった!」

「グルゥ」

「ぬぉっ? リ、リンドか? ふははは! 勇ましい面構えになったではないか!」

「ガオ!」

感動的な場面なのかもしれんが、なんでこんなにコメディ臭が強いのかね! ともかく、今はほのぼのしてる場合じゃないぞ!

『メア! 今は抗魔の方が先決だ!』

「おっと、そうであったな!」

メアは俺の正体を知ってるからね。話しかけても大丈夫だ。彼女も、すぐに気を取り直したらしい。

「ふむ。強そうなのは5体か……。リンドよ、周囲の抗魔は任せる! 雑魚を殲滅せよ!」

「ガオオオオォォォォォ!」

俺たちで指揮官個体を倒し、リンドは雑魚が都市に向かうのを防ぐ。いざとなればその体を壁にできるリンドは、その役目に最適だろう。

「我らは指揮官をやる。異論はあるまい?」

「ん!」

「勿論よ!」

誰もメアの言葉に異論は挟まない。彼女の言葉には、自然と従いたくなるような威厳があったのだ。強化されたことで、カリスマ性のような物も強化されているのかもしれない。

外見も、いつもよりも少々威圧感がある。ゼフメートのようなケモノ顔ではないが、髪が長く伸びている。その長いザンバラ髪は、父親である獣王にソックリだ。似ているのは髪の長さだけではなく、雰囲気もであった。

さすが親子。その精悍で暴力的な雰囲気と、好戦的な笑みは、2人が親子であることを証明しているかのようであった。

今のメアは、まさしく王だ。

「では、いくぞ!」

「ん!」

そして、5人がそれぞれ自分の目の前にいる指揮官個体へと挑みかかった。

「私の相手はこいつ!」

『さすがフラン! 一番強そうなのを選んだな!』

(師匠は、狼たちを使って周りの雑魚をやって)

『分かった!』

フランが相手に選んだのは、最も体が小さく、それでいて内包する魔力が最も高い個体であった。

手に持つのは刀。全身はスマートで、明らかな剣士タイプだと分かる。

長い角を3つ持つ、真紅の騎士型だ。三本角も、フランを敵と見定めたらしい。前に出て、静かに構えた。

その動作はまるで、武人が強敵を前にして戦いを申し込んでいるかのようだ。抗魔に人格などないはずだが、指揮官個体ともなれば多少の個性はあるのかもしれない。

睨み合うフランたち。

「うらああぁぁぁ!」

「シイヤァァァァ!」

フランと三本角が一瞬の間の後、戦闘に突入した。目にも止まらぬ速度で動き回りながら、切り結ぶ。

その衝撃波だけで、周囲にいた上級抗魔たちが弾け飛んでいた。

なるほど、軽量タイプなだけあり、その速度は恐るべきものだ。しかも、再生力も高い。フランによって付けられた傷が、瞬時に癒えるのが見えた。

ソフィたちの歌によって強化されていなければ、相当苦戦していただろう。潜在能力解放を使っても、勝てるかどうかわからないレベルの相手かもしれん。

だが、今の俺たちなら、互角以上に戦えた。

速度でも上回り、剣術でも上回っている。再生力も今は互角だ。抗魔の刀で切り付けられても、瞬間的に再生している。

そして、武器に関しては比べるまでもない。なんせ、今の俺は絶好調過ぎるほどに絶好調なのだ。

(師匠、邪気。へいき?)

『おっと、少し漏れちまってるか! 大丈夫だ。気にせずいけ!』

(ん!)

俺の纏う神気の中に、邪気が僅かに混じってしまっていた。フランは俺の状態が不安になったようだが、全く問題ない。ちょっと邪気が大きすぎて、僅かに制御が甘くなっているだけだからな。

普通なら問題なんだろうが、俺には邪気の悪影響はない。魔力が溢れ出ている状態とほぼ変わりがなかった。今のフランならこの程度の邪気は全く無視できるし、この程度なら本当に何の影響もないのだ。

邪気と神気。そこに加え、金式スキルの効果も上乗せされている。

金式は、オーバーグロウスの持っていた金喰スキルを、アナウンスさんが改変したスキルだ。

抗魔から力を吸収する能力がなくなり、対抗魔能力が強化されている。このスキルで抗魔を斬りまくったとしても、ナディアのように抗魔化してしまうことはないだろう。そのおかげで、安心して使用することができた。

「しっ! せぇぇい!」

すでに影すら置き去りにするほどの速さだったフランが、さらに加速する。神獣化によって底上げされた身体能力に、完全に慣れたのだろう。

しかも、一瞬一瞬、瞬間移動にしか思えないような凄まじい動きをするのだ。どうやら神獣化状態であれば、黒雷転動を自由自在に使えるらしい。

普通ならば、自身でさえどう動いているか把握できるか怪しいレベルの神速だ。余りの速度に、フランの傷口から噴き出す血が一瞬で霧となって空中に消えていく。

それほどの速度を、フランは完全に制御していた。ただ筋力が上昇しただけではなく、動体視力や空間把握能力もしっかり強化されているようだ。

今のフランなら時間加速など使わずとも、周囲の全てが遅く見えているだろう。俺では、時間加速を使わねば到底ついていけない。

これが、ランクS級の超越者たちが見ている世界か。

今のフランであっても、アースラースやウィーナレーンに勝てるとは言い難い。彼らは、自身の力を使いこなしているからな。だが、彼らの領域に、片足を突っ込んでいることは間違いなかった。

「てやぁぁ!」

「シュイイィィィィ!」

余りにも速過ぎる。神獣化状態の今のフランでさえ、肉体が悲鳴を上げ始めているのが分かった。

そんなフランと正面から切り結べているこの抗魔も、十分に規格外だろう。こんな凶悪な抗魔が何体も出現するとは……。抗魔の季節っていうのは、本当に危険なんだな。

だが、どれだけ速く、強くとも、フランには一歩及ばない。フランが抗魔の攻撃を見切り、回避する回数が増えている。

フランが、最上位の抗魔を明確に上回り始めていた。

「るああああああああぁぁ!」