軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

901 竜人王ゲオルグ

フランは、手持無沙汰でホールをブラブラとしていた。

尋問の妨げになるかもしれないから、邪水晶に下手なことはできない。破壊ではなく収納なら平気かと思ったけど、それで異変が起きても困る。

とりあえず余計なことはせず、ホールを調べていたのだ。それもあらかた終え、完全に暇になった時、フランを呼ぶ声が聞こえた。

ドルーレイたちが尋問を終えたらしい。

「もう終わったの?」

「へい。どうも、さっき狂ったように暴れたせいで、かけられていた暗示が弱まっていたらしく、こっちの催眠が上手くかかりやして。話を上手く聞き出せたんでさぁ」

ドルーレイ、もう完全に舎弟だな。

さっきの半狂乱事件が、ちょっと役に立ったらしい。支配は、命令を強制させるたびに弱まるのかもしれないな。

命竜人は表情のない能面のような顔で、地面に胡坐をかいている。近づいてきたフランに反応もせず、ただボーっとしているようだった。

狸獣人の催眠にバッチリかかっているのだろう。

「やっぱり、襲撃犯だった?」

「それは間違いないようです」

ドルーレイたちが、竜人から聞き出した情報を語り出す。

こいつらは竜人王直属の戦士であり、その命令で襲撃を行なったそうだ。竜人王の持つ竜支配というスキルで縛られており、強い暗示下にあるらしい。

このスキルは、自身に一定以上の忠誠を誓っている相手を洗脳状態にし、その潜在的な力を引き出して強化するというスキルである。

誰彼構わず支配できるわけではないようだが、十分凶悪なスキルだった。

配下の竜人たちには支配の効果によって、特定の場所を命に代えても守れというような暗示がかけられているという。さっきの半狂乱は、邪水晶を守れという命令に従った結果なんだろう。

そして、この竜人たちは竜人王の命令により、抗争を引き起こすために行動していたらしい。フィルリアと竜人王は、裏で手を結んでいるようだ。

「竜人王ゲオルグ……」

それが、フィルリアと並ぶ、騒動の黒幕の正体だった。

「抗争を起こす目的は?」

「この部屋の邪水晶に力を溜めることが理由だそうです」

この部屋の儀式魔法陣の効果により、この都市で死んだ者の魂から力を奪い、邪水晶に溜め込むことができる。

竜人王はその邪気を使って、さらなる儀式を行おうとしていた。

都市内での騒動に、邪水晶に、儀式。竜人王の計画とやらは、邪術師リンフォードがやろうとしていたことにそっくりだった。

絶対に、碌な目的では使われないだろう。

フランが、気になっていたことをさらに尋ねる。

「セリアドットは、どこまで竜人王に手を貸している?」

「それが、いまいち分かりませんでした。すみません」

答えてくれたのは、尋問担当の狸獣人だ。インテリタイプであるらしい。フランに怯えた様子もなく、冷静に話をしている。

「じゃあ、結界魔石はどこで手に入れた?」

「竜人王から直接手渡されたと。出所はこいつらにも分かっていないようです」

結界魔石が使われていたことから、敵に積極的に協力していると思っていた。だが、そこまで表立っているわけではないらしい。

フィルリアから、勝手に横流しされた品の可能性もありそうだ。

セリアドットは敵か味方か。そして、いったい何が目的なんだろうか? ソフィを助けた経緯からも、単なる護衛という以上の何かがありそうなんだが……。

「あと、ギルドで起きた爆発はなにをした?」

「ああ、それについても聞き出しています」

尋問に手を貸していた冒険者の1人が、しっかりそこも質問していた。

「竜血というスキルを持った竜人が、その能力を暴走させて自爆したということです」

あれは、やはり自爆だったのか。

竜人王によって操られていた赤鱗の竜人が、自身の命をかけてあの爆発を起こしたらしい。支配の効果の強さがよくわかるな。

「竜人王はどこにいる?」

「こいつらも知らないようです」

「ん? なんで?」

そもそも、竜人王はこの都市にいないそうだ。メルーバにも正確な居場所は教えられておらず、邪水晶に一定の力が溜まった頃に密かにやってくる手筈になっているらしい。

つまり、遠隔で邪水晶の状態を確認できるってことか? 幹部級のメルーバが居場所を知らないとなると、探すのはかなり難しいかもしれない。

「竜人王ゲオルグはどんな奴?」

「黒目黒髪で痩身の、邪竜人だそうです」

「邪竜人になったら、殺されるんじゃないの?」

「それが、世にも稀な、暴走しない邪竜人だそうで。その強さ故に、生かされたそうです」

邪竜人だとすると、邪気を扱った儀式も行えそうだ。竜人王に力を貸す邪術師がいるのかと思っていたが、本人が邪術師でもあるのかもしれない。

他の種族に竜人王の詳細があまり知られていないのは、邪竜人が生かされているという情報を竜人が喋りたがらないからだった。

邪竜人を生かして力を借りねばならないことを恥じる竜人も多く、その存在は種族以外の者に秘されていたそうだ。根強い差別みたいなものがあるっぽいな。

また、ここにいる竜人たちのように、地位が低かったり、年齢が低い者はその存在すら知らないらしい。知っていても、その邪竜人と、謎に包まれた自称竜人王の正体が繋がらないのだろう。

各竜人居留地の上層部は、知っていてもおかしくはないかな?

ただ、邪竜人ということは、邪気を辿ってその居場所を探せるかもしれなかった。それはいい情報だろう。

尋問によって、様々な情報を得ることができた。しかし、まだ大仕事が残っている。

『さて、話も聞けたし、ようやく邪水晶をぶち壊せるな』

「ん」