軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

826 ジェイン

ドワーフたちの後に出現した、魔族の軍勢。

彼らからの援護もあり、俺たちは何とかドワーフたちと合流することに成功していた。

「オーファルヴ様! 救援ありがとうございます!」

「ふははは! フランへの借りを返すにはちょうど良いからな! 気にするな!」

ヒルトの言葉を笑い飛ばし、百人隊を迎え入れてくれるドワーフたち。

フランたちを庇うように前に出た彼らは、すれ違い様こちらへニカリと笑いかけてくる。サムズアップしたり、ガッツポーズをすることで、こちらを安心させようとしてくれているようだった。

相手はただの抗魔ではない。連携が崩れたとはいえ、黒い抗魔を含む精鋭なのだ。普通の兵士たちであれば、死を覚悟する相手である。

しかし、ドワーフにとっては些細な違いであったらしい。

初めてドワーフたちと共闘した時に見た戦いと同じように、彼らは平然と抗魔を狩り取りながら、ズンズンと前へと進んでいった。

あれ? 雑魚抗魔だったっけ? そんな勘違いをしてしまいそうになるほど、ドワーフたちの進軍は止まらない。

特に、最前線で戦士たちを率い続けるオーファルヴの戦う姿は、俺たちから見ても驚きであった。

防御などしない。全ての攻撃を自身の頑強さと鎧で受け止め、返しの一撃で相手を砕く。しかも相手は、俺たちでさえ苦戦した黒騎士型や赤騎士型だ。

ドワーフの壁を抜けてくる抗魔など1匹もいない。

張りつめた雰囲気であったフランたちも、やや肩の力が抜けてきたかな? 油断というわけではないが、希望が見えて安堵の気持ちが生まれたのだろう。

戦うドワーフたちの背中には、それだけの頼もしさがあった。

しかも、今は彼らだけではないのだ。

ドワーフの背後に合流した魔族たちから、回復や補助の魔術がドワーフたちに飛んでいく。圧倒的な戦闘力を誇る彼らに魔術の援護があれば、鬼に金棒だろう。

ようやく魔族の陣営に注意を向ける余裕が出てきた。

ドワーフの半分ほどの数かと思ったが、実際はもっと少ないだろう。多く見えたのは、魔族の使役するアンデッドたちがいたからだった。

200強のアンデッドが、護衛役として魔族を守っている。かなり強力な個体ばかりだ。

本当にジャンがいるのかと思って気配を探ってみたが、発見することはできなかった。気配を消しているのか?

そう思っていたら、アナウンスさんの警告が耳に入る。

《接近してくる気配があります》

『え?』

どこだ? そんな気配感じられないが、アナウンスさんが嘘を言うわけがない。俺は全ての力を気配の察知に回し、アナウンスさんの警告相手を探した。

すると、確かに何かがいる。ごく僅かに、大地を踏みしめる振動を感知することができた。フランも同じ気配を見つけたらしい。

背後を振り向き、目を見開いた。

本当に真後ろまで、何者かが迫っていたのだ。

それは、魔族の軍勢の先頭に立っていた、魔術師の女性であった。

悪意は感じられないが、気配を消して近づいてきていたことは確かである。フランは警戒するように女性を睨みつけた。

だが、女性は悪いとも思っていない表情で、肩をすくめている。

「おや? ばれちゃった?」

「……誰?」

「あははははは! ワタクシの名前はジェイン! ジェイン・ドゥービー! 昏き深淵を覗きし冥府の支配者!」

うわー、ファミリーネームを聞かずとも、ジャンの関係者だって分かるんですけど! ジャンの妹か何かか?

俺は鑑定をしてみたんだが、弾かれてしまった。この感覚、格上だというだけではなく、何かに阻害されたな。多分、鑑定遮断系のスキルに、アイテムを重ね掛けしている。

「あはははは! 鑑定したでしょ? 無駄無駄無駄ぁ! ワタクシは超強力な鑑定遮断のアイテムを身に付けているの! ガルスの神眼だって弾くんだから! ま、あの子は神眼を使いこなせていないから、防げて当たり前だけどねっ!」

ガルスをあの子って言ったか? ジャンの妹かと思ったけど、姉とかかもしれん。長命種は見た目だけじゃ全然齢が分からんな。

「……誰?」

「うん? さっきも同じことを聞いたよね?」

「名前は聞いた。ジェイン。でも、どこの誰かは聞いてない。ジャンの家族?」

「あ! そうだったそうだった。名乗っても正体が分からない相手となんて久しく話してなかったから。ワタクシ失敗」

つまり地元では名前を言えばそれで正体が分かるような有名人だってことか?

「はっ! この大陸に来てから、名乗っても相手が微妙な顔をすることが多かったけど……。もしやこのせい? てっきり、ワタクシの雷名に恐れをなしていると思ってたわ!」

人の話を聞かない感じとか、エキセントリックな性格とか、絶対にジャンと同じ血をひいている。外見も似ていた。

身長は160センチほどで、青くすら思える白い肌。くすんだ銀髪に、山羊のような角。赤い瞳も同じだ。

ただ、表情はこちらの女性の方が柔らかいだろう。垂れ目で、妙に人懐っこい印象がある。

声のせいでもあるかな? いわゆるロリボイスなのだ。小学生の役とかできそうだった。威厳たっぷりのオーファルヴとは真逆である。

全身に髑髏のアクセサリーを身に付けたローブ姿というのも一緒だ。ただ、こちらは胸元が大きく開き、下半身はタイトなドレス風な作りになっている。

「あっと、今はアナタとの語らいの時間だったわね! ワタクシはジェイン。ジャン・ドゥービーはワタクシの愚息の一人よ!」

「息子?」

まじで? これが母親? 血がつながっているだろうとは思っていたけどさ!

「その通り! えーっと、確か9男であったかな?」

「ジェインよ、8男じゃ」

「そうだったっけ?」

「!」

『うわっ!』

驚いた。ジェインの胸元に輝く髑髏の首飾りが急に喋った! てっきり髑髏を模したシルバーアクセだとばかり……。

アンデッドか? それにしては、気配が感じられんが……。

「驚いた? これはアンデッド化したアイテムなの! 隠蔽や偽装に特化しているから、気配が感じられないでしょ?」

どうやら、この首飾りが気配遮断や鑑定遮断の絡繰りであるらしい。自身と装備者に隠蔽の効果を与えるのかもしれないな。

「儂はトート・ドゥービー。こやつの目付け役じゃ」

「ドゥービー?」

「トートはワタクシの曽祖父に当たるの。自らをアンデッド化し、今でも国に尽くしてるんだよ」

「うむ。よろしく頼む」

「……ジェインは、偉い人なの?」

「あはははは! ドゥービーとは魔国の支配者の名前よ!」

「つまり?」

「冷静な子じゃのう。つまり、こやつは魔国の女王――魔王であるな」

「そうであるっ!」

フンスと鼻を鳴らして、ドヤる魔王様。え? これが魔王? それに、ジャンの母親ってことは、齢も上なんだよな? 雰囲気も所作も外見も、10代にしか見えないんだけど……。

「ふーん」

「れ、冷静すぎんか?」

「その泰然とした態度! 気に入ったわ!」

いや、冷静なのは、王の凄さがいまいち分かってないからだから! 俺は驚いてるから! まじで女王? じゃあ、ジャンは王子様? まじで?