軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

77 死霊の王

レジェンダリースケルトンとの激闘から30分。

俺たちは未だにその部屋にいた。消耗があまりにも激しいため、暫く休憩することにしたのだ。フランたちはポーションなどで、MPを回復し、座って疲れを癒す。

俺も、修復が進んできたとはいえ、耐久値は半減したままだ。魔力も未だに500以下。正直、これ以上の探索さえ厳しい状況だろう。

ボロボロになったフランの防具は、ジャンが召喚したスケルトンが修復中だ。なんと、鍛冶魔術を使えるアンデッドを用意していたのだ。しかも、魔水晶まできっちり持ってきているし。本当に用意周到だな。

無論、今もフライにはこの先の探索をしてもらっている。

その間、ちょっとでもスキルを検証しようかな? ダンジョンに入ってからの戦闘で、色々ゲットできているし。

すぐに検証できそうなのは、レジェンダリースケルトンから得た感知妨害:Lv1、自動魔力撃:Lv1。あとは、ダンジョン内で得た魔力放出:Lv1、物理障壁:Lv1、剛力:Lv1くらいか?

感知妨害をセットしてみる。うーん。やっぱ、隠密系のスキルは、Lv1じゃ大したことないみたいだな。ほとんど意味ないみたいだ。

じゃあ、自動魔力撃は? こっちも弱い。小石を子供が投げるくらいの威力? やっぱLv1じゃこんなものか。

魔力放出は、その名の通り、魔力を体外に放つスキルだった。弾丸のように飛ばして攻撃にも使えるし、広く面で放出すれば防御にも使える優良スキルだ。ただ、Lv1だから、まだそこまで多くの魔力を放てないけどね。

物理障壁は、魔力障壁に似ている。物理、魔術両方への耐性があるが、やや物理の方が硬いみたいだった。魔力障壁の逆だな。

剛力は、使用すると一定時間腕力を上昇してくれるスキルだ。Lv1だと、10分間+2という、超微妙な感じだ。上昇したらどうなるのか楽しみなスキルではある。

正直、直ぐに戦力向上につながるスキルはない。可能性があるのは、潜在能力解放くらいだ。

ただ、ダンジョンに入ってからの戦闘で、フランのLvは10、ウルシに至っては15も上がっているからな。それだけでも、十分に戦力は向上しているだろう。

「うまうま」

「ガウガウ」

「うむ。これもまた美味であるな!」

腹ペコ3人衆が貪り喰らっているのは、特製フライドチキンだ。いや、魔獣肉を使ってるから、フライドモンスターか? どうやらこっちの世界では揚げ物が珍しいみたいだな。確かに素揚げは見たことあるけど、衣をつけてあげたフライ系の食べ物は見たことがないかもしれない。ジャンも最初は珍しいと言って驚いてたし。

ウルシは2人から残った骨を貰ってご満悦だな。

「む、フライが扉を見つけたようであるな……。ふははははは! ついにダンジョンコアを発見したぞ!」

「ボスは?」

「少々待ちたまえ――む!」

『どうした?』

「フライの反応が消失した」

「やられちゃった?」

「そのようであるな……。だが、コアルームへと至る道筋は既に把握済みだ。先導は任せたまえ」

最奥部までに待ち構える魔獣は、9階層とほとんど変わらなかった。むしろ、今まで以上に簡単だったかもしれない。終わりが分かれば、全力も出せるし、アイテムも惜しみなく使えるからな。

「見たまえ! あれがボスルームへの扉だ!」

やっとか。ダンジョンに入り込んで3日目。遂にたどり着いた。

俺はここまでに現れた死霊から魔力を吸収し、何とか2000程までMPは回復したし、耐久値はほぼ全快している。

フランも強敵との激戦で経験を積み、さらに動きが良くなった。

それでも、油断はできない。

「ボスがいる?」

「フライは姿を確認できなかったが、何もないわけがないであろうな」

『あと、その先のコアルームにはダンジョンマスターもいるだろう』

これだけのダンジョンを創り出すわけだし、ダンジョンマスターも戦闘力があるかもしれないからな。何せ、脅威度Bの魔獣を使役するような相手なのだ。

「準備を整えねばな」

『何をするんだ?』

「ふはははは! 奥の手の準備である! 代償が大きすぎる故、あまり使いたくはないが、最悪の事態も想定せねば」

ジャンの言う通りだ。俺たちも、出来る限りのことはしないといけない。とは言え、今から何ができるか。

「スキルを上げる?」

『俺もそれを考えたんだが……』

残り自己進化ポイントは25だ。見極めて使わないとな。

『何が有効かまだ分からないからな。戦況を見て決めよう』

ここで焦ってレベルを上げて、全然使えませんじゃ笑えないしな。階層ボスでさえ脅威度Bのダンジョンなんだ。どんな相手が出るか分からんし。

「師匠君、フラン君、収納から出してほしい物がいくつかあるのだ」

『なんだ?』

「まずはこのくらいのペンダントを」

ペンダント? そう言えば、そんな物あったかもな。

「これ?」

「うむ、君も1つ持っていたまえ」

うわっ、趣味悪! すげーリアルな、ゾンビの顔を模ったペンダントだ。そう言えば、収納に仕舞った記憶があるな。

「身代りの人形である」

『え? これが?』

相手を呪い殺すとか、ゾンビを召喚するとか、そんな能力じゃないのか?

「はっはっは。疑問はもっともである。実は、我も間違えたのだよ。死霊魔術に関係する術具だと思い購入したのだ」

『まあ、この見た目じゃな』

「しかし、その能力は中々の物だぞ?」

ジャン曰く、1回だけ死亡を防ぎ、HPMPを半分まで回復してくれるらしい。確かに高性能だな。普通の身代りの腕輪は、HPを1残すだけだからな。

『じゃあ、有り難く』

「うむ。後はこれと、これと、これと――」

「なに?」

「様々なお守りである。持っていたまえ」

10個くらいのお守りを渡された。どれもほとんど魔力は感じないな。まあ、気休めくらいにはなるか。

「我も準備をせねばな」

俺たちはジャンに言われるがまま、様々な道具や薬を取り出していく。

ジャンは特に大きな、長方形の箱を手に取った。中から出てきたのは、髑髏を模した禍々しい杖だ。うわー、まさに死霊術師の杖! って感じ。持ち手も背骨みたいだし。凄まじくジャンに似合っているな。

名称:不明

不明

む、鑑定ができない?

「ふはははは。これは少々特殊な杖でな! 通常の鑑定スキルでは鑑定できんのだよ!」

「なんで?」

「この杖の名は「冥王の祝福」。とあるダンジョンで手に入れたネームド・アイテムである」

どうやら、この杖自体の格が高すぎるため、俺の持つ普通の鑑定スキルじゃステータスを見ることができないらしいな。

『その杖の能力って――』

「くかかかかかかっ!」

『!』

「?」

「オウ?」

なんだ? 人間の笑い声? 何処から聞こえてるんだ? 最初、杖から聞こえたのかと思ったが、ジャンも驚いているし。

「くかかか――」

それにしても、妙に神経を逆なでする声だな。聞いているだけで、気持ちが落ち込んじまいそうだ。

俺が声の出どころを探している間にも、事態は進行していた。

ブウウウゥゥゥゥン

『魔法陣?』

廊下の床に魔法陣が描き出される。ヤバイ、危機察知がビンビンに反応している!

『フラン、ウルシ!』

くそ! 間に合わない!

床に浮かび上がった魔法陣が急速に拡大し、あふれ出す光が廊下を満たす。

「いつまで待たせるつもりだ? 吾輩が直々に招待してやろう! くかかかかか!」

そして、光が収まった時、俺達は大きな広間にいた。これまで通ってきた広間の数倍ある。だが、俺の視線はただ目の前だけに向けられていた。

いや、目の前のソレ以外に、注意を逸らす様な余裕などなかった。

「くかかかか。ようこそ、侵入者諸君!」

なんだこいつは? 圧倒的な魔力。圧倒的な存在感。そして、圧倒的な悍ましさ。

推定脅威度B。だが、とてもではないがレジェンダリースケルトンと同格だとは思えなかった。剣の体じゃなかったら、失禁していたかもしれない。

キュッ

フランがすがる様な顔で、俺の柄を握りしめた。震えてるのか? 悪魔にさえ立ち向かったフランが? よく見れば、顔から血の気が引いているな。

『フラン……大丈夫だ』

一気に冷静に成れた気がする。俺が怖気づいてどうするんだ。俺がフランを守らなければ。こうなったら、逃げることを考えよう。今なら転移の羽を使う事もできる。

『逃げるぞフラン』

(わかった)

『ジャン、逃げるぞ』

「む、待ちたまえ――」

フランがジャンの腕をつかんだことを確認し、俺は即座に転移の羽を使用した。こんな化け物と戦ってられるか。

だが――。

『なんでだ!』

転移の羽は発動しなかった。ウンともスンとも言わない。確かに魔力を込めたはずなのに!

「くかか! この部屋は転移封じの仕掛けが施されておる。逃げる事能わぬぞ? 観念して、吾輩と殺し合おうぞ! くかかか! くかかかか――――――」

目の前に佇む最悪の存在――リッチは、無情なる事実を俺たちに突き付け、愉悦のこもった笑い声をあげるのだった。