軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

771 オーファルヴ・ファルニィス

「ふむ……。ウィーナレーンは居らずとも、強き者たちを揃えておるな」

ドワーフ女王がフランやヒルトを見て、不敵に笑う。ニコリではなく、ニヤリだ。

武人が好敵手を前にした時のような、凄みのある笑みだった。

「我が名はオーファルヴ・ファルニィス。ドワーフの住まう国、スノラビットの女王である。名を聞かせよ」

すっごい上から目線だけど、大国の女王様であることを考えたらむしろ気安過ぎる気もする。あれだ、メアによく似ていた。メアにもっと威厳を纏わせて、貫禄をつけたらこのドワーフ女王になるだろう。

戦闘力も、確実に女王様の方が上だ。

今思い出したが、ドワーフの王はあのウィーナレーンと一緒に、7賢者の1人に数えられていたはずだ。

始神剣アルファ、狂神剣ベルセルク、魔王剣ディアボロスの神剣所有者3人に加え、ハイエルフのウィーナレーンに魔族の国の王、蟲人の国の王。そして、ドワーフの国の王の7人だったかな?

ギルドと反目する国々が、ランクS冒険者に対抗して勝手に作った称号だっていう話だが、ウィーナレーンは実際に強かった。

他の7賢者も侮るべきではないだろう。この女王も、ランクS級の強さを持っている可能性があった。

「わ、私はベリオス王国海軍提督。ブルネン・ボエールと申します。お会いできて光栄であります!」

「うむ。前回もウィーナレーンとともにいたな。覚えておるぞ。今回もよろしく頼む」

「はっ!」

彼女の、実力に裏打ちされた覇気のある態度は、清々しささえ感じさせる。ヒルトもフランも彼女の態度は気にならないようで、普通に名乗っていた。

「ヒルトーリアと申します。女王様」

ヒルトが深々と頭を下げる。礼儀系のスキルは持っていないが、そのキビキビした動きは相手が誰であっても十分通じるだけの美しさがあった。

「やはりか! デミトリスに似ていると思ったのだ!」

「お、お爺様をご存じなのですか?」

「うむ。手合わせをしたこともあるぞ。素手で半殺しにされたのはあれが初めてのことであった! 良い経験をさせてもらったな!」

半殺しにされたと言いながら、その顔は楽しげだ。本当にいい経験だったと思っているらしい。ここにも戦闘狂がいたか。

ただ、戦闘力はデミトリスに及ばない? いや、模擬戦と言っていたし、本気を出さなかった可能性もあるか。ただ、デミトリスとの模擬戦を楽しいと言える強さはあるらしい。

「うむうむ。よく似ている。将来はあのような強者になるであろうな! 楽しみだ」

オーファルヴにとっては純粋な褒め言葉なのだろう。だが、ヒルトの笑顔は手放しで喜んでいるようには見えなかった。

デミトリスのように強くなると言われて嬉しくもあり、あんな傍若無人な老人に似ていると言われて複雑な気持ち半分って感じかね?

「私は冒険者のフラン、です」

「ほほう? フランと言ったな?」

フランの名前を聞いた直後、オーファルヴの目がスッと細められた。敵意は感じられないが、妙な迫力がある。

「黒猫族でありながら凄まじい強さ。そして、我でも底が見通せぬほどの魔剣……。お主、黒雷姫のフランか?」

「ん」

『フラン! そこははいって言っておこう!』

だが、オーファルヴはフランの不躾な態度など気にならない様子だ。破顔一笑すると、ズンズンとフランに近寄ってきた。

「そうか! お前がフランか! 会えて嬉しいぞ! ふはははは!」

「?」

フランの肩を馴れ馴れしくバンバンと叩いた後、ガシッと掴んで哄笑をあげる。やはり悪意や害意は一切感じないので、フランも為すがままだ。

どうやらフランのことを知っているらしい。ドワーフの国にまでフランの噂が届いているのだろうか?

だが、それも違っていたようだった。

「一度直接会って、礼を言いたいと思っていたのだ!」

「礼?」

ドワーフの女王様にお礼を言われるような心当たり、全くないんだが?

「うむ。我が娘婿を救ってくれたこと、感謝している」

「娘婿?」

「む? 知らんのか? ガルスというドワーフだ」

「ガルス! 鍛冶師のガルス?」

「そうだ。奴の命を救ってくれたばかりか、神級鍛冶師との縁を取り持ってくれたそうではないか!」

「ん」

「ドワーフの中でも名工と言われるガルスが、神級鍛冶師の薫陶を受ける。我らドワーフ族の悲願、神剣超えへの端緒となるかもしれん! 心の底から感謝している! いずれ我が国へとくるといい! 国賓としてもてなすぞ!」

国賓とか大げさすぎないか? それに、娘婿って言ってたよな? フランもそこが気になったらしい。

「ガルスが娘の婿? じゃあ、ガルスの奥さんのお母さん?」

「その通りだ」

「……王様の娘の婿? じゃあ、ガルスは貴族なの? 王子様?」

「ふははははは! あれが王子! それはいい! だが、違うな! 貴族でもない! それに、我らドワーフにとっては、奴が有力な鍛冶師であるということの方が余程重要よ」

ドワーフの国では、王の親族だからといって、権力があるわけではないらしい。むしろ、腕のいい鍛冶師として尊敬されているようだった。

そして、そんなガルスが神級鍛冶師アリステアと知り合い、色々な教示を受けるきっかけとなったフランに感謝してくれているようだ。

「女王様は、何歳?」

『ちょ――』

「フ、フラン!」

俺が止める前に、ブルネンが蒼白な顔でフランの言葉を遮った。そりゃあ、女王様に齢を聞いたらねぇ?

しかし、オーファルヴは気にした様子もなく、呵々大笑している。

「ふははははは! ドワーフ族の年齢は他種族から見ると分かりにくいらしいな! 我は今年で150歳となるな! 女ざかりというやつよ!」

寿命が300~400歳くらいのドワーフにとっては、まだ若いほうだろう。それにしても、この外見で150歳か……。エルフを除けば、最も若作りな種族かもしれない。

「ドワーフは早熟で、肉体の最盛期が長く続く種族なのだ。同族以外では齢を見抜けんのも無理はない」

「ガルスの方が齢上に見える」

「お主から見ればそうかもしれんなぁ」