軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

769 剣士型抗魔

俺たちが結界の中にやってきた理由は、抗魔の下見のためだった。

どれくらいの強さなのか、肌で感じておこうと思ったのだ。

ウルシは既に影の中である。

「普通の草原」

『そうだな』

本当に普通だ。他の大陸でも見かける草が生え、虫なども飛んでいる。

来る前に想像していた、地獄のような風景とは全く違っていた。背後を振り向いた時に見える結界だけが、ここがゴルディシア大陸であると教えてくれている。

「師匠、見つけた」

『ああ。俺にも見えている』

10分ほど歩くと、ついに最初の抗魔を発見した。遠目からではゴブリンやコボルトのように見えるが、この大陸でそれは有り得ない。

間違いなく、剣士型という奴だろう。

さらに近づいてみる。だが、向こうがこちらに気付く様子はなく、ゆっくりと観察できた。

基本は漆黒で、目や牙、角っぽい部分は派手な緑色である。さらに、頭部や胴体の一部、手足の先端は灰色の甲殻に覆われており、その甲殻にも緑色の棘がいくつも生えていた。

某戦隊ヒーロー番組に登場する怪人っぽい? シュッとした格好いいタイプの奴ね。もしくは、サイバ○マンに黒と灰色の鎧を着せた感じ?

ともかく、ゴブリンよりは強くて硬そうだった。

多分、黒い部分が地肌。灰色の部分がその次に硬く、緑色の部分は最も硬い部分なのだろう。

さらに、武器も持っている。持ち手などが灰色で、刃の部分が緑の剣や槍だ。あれも抗魔の一部なんだろうか? それに、剣士型と言われていても、剣を装備しているとは限らないらしい。

『さて、少し試してみるか』

「ん」

フランが草むらにしゃがみ込んで、身を隠す。

抗魔との距離は100メートル強だ。

ここで俺は、魔力の隠蔽を少しずつ解いてみた。そして、ある程度魔力が放たれるようになった時点で、抗魔たちがキョロキョロとし始めるのが見えた。

僅かな魔力の気配も見逃さないというほどではないらしい。まあ、この距離で反応できるだけでも十分高性能だが。

次いで、ウルシを影から出してみる。

抗魔たちはキョロキョロはしているが、こちらに気付けるほどではないようだ。俺だけではなくウルシも、魔力を抑えていれば活動できそうだった。

今度はフランが魔力を高めてみる。すると、ようやく抗魔たちがこちらに気付いたらしい。俺たちが隠れている草むら目がけて駆け出すのが分かる。

逆に言えば、察知能力が一番低いと教えられた剣士型であっても、こちらの魔力が強い場合、100メートル以上離れている場所から察知する能力があるということだった。

下手に魔力を放出し続けていたら、周囲の抗魔はウジャウジャと寄ってくるということにもなりかねなかった。

『次は戦闘力だな』

「ん」

フランはワクワクしながら俺を抜き放ったんだが……。すぐに残念そうな顔になってしまっていた。

「弱い」

『まあ、この辺にいるやつらはな』

瞬殺である。強さは、ホブゴブリンくらいだろう。甲殻が多少堅いが、剣を弾くほどではない。

数がいれば脅威になるかもしれないが、数体ではフランの敵ではなかった。

特異個体は脅威度Bくらいの強さがあるという話だったが、普通の雑魚抗魔はこの程度なのだろう。

『聞いていた通り、倒すと消えるか』

「武器も消えた」

『やっぱ、あれも抗魔の一部っていう扱いなんだろうな』

素材も何も残さず、その場で虚空に溶けるように消えてしまう。これが抗魔の特徴であった。

これでは冒険者に旨味がないように思えるが、そんなことはない。まず、経験値は発生するので、レベルは上がる。それに、抗魔カードの貢献ポイントに応じて、報奨金が支払われるのだ。

修業目的ではない冒険者たちの目的は、その報奨金であった。他の大陸で魔獣を無暗に探すよりも、向こうから寄ってくる抗魔を倒し続ける方が効率がいいと考えているらしい。

『フラン、抗魔カードはどうなってる?』

「1」

『3体倒しても1か……』

倒した数ではなく、相手の強さなどで換算されているようだ。このカード、地味に凄い技術が使われているのかもしれん。

『もう少し狩ってみるか』

「ん!」

次いで狙ったのは、剣士型5体の群れだ。これの相手はウルシがする。

あえて攻撃を受けたりするからヒヤリとする場面もあったが、結局は無傷で勝利していた。やはり、下級の抗魔たちではフランたちの相手にはならないな。

「オムン?」

抗魔をボリボリと噛み砕いていたウルシが、何やら首を傾げている。どうやら、噛んでいるうちに消滅してしまったらしい。

捕食吸収が発動した様子もなかった。本当に経験値以外は何も残さず、消えてしまうらしい。

『俺とウルシにとっては旨味が少ない場所かもな』

「オフ」

ただ、普通の冒険者にとっては、経験値が稼げて、報奨金も稼げる、ハイリスクハイリターンの良い狩場なのだろう。

「もう少し戦う」

『そうだな』

「オン!」

それから1時間ほどかけて抗魔狩りを続けたんだが、やはり強敵には出会わなかった。

抗魔を狩る冒険者にも遭遇したが、ほとんどがランクE以下の者たちばかりだ。

彼らが少数で活動しているということは、聞いていた通り結界外周付近には強い抗魔が出現しないということなんだろう。

20体ほど倒して、抗魔カードのポイントは11だった。確か、抗魔ポイント1で、ギルドの一番安い雑魚寝部屋に泊まれたはずだ。一番安い量だけが自慢の食事が、1食1ポイントだったかな?

つまり、雑魚寝部屋で1日2食というギリギリの生活をするにしても、毎日最下級の剣士型を6体ほど狩らなくてはならない。

しかも、パーティを組んでいると抗魔ポイントが分散してしまうらしいので、5人組だったら1日30体狩る必要がある。

駆け出しには結構厳しい気もするが、それすら稼げない奴は足手まといということなんだろう。

『今日はもう戻ろう。本格的に奥に行くのは明日からだ』

「わかった」