軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

688 シビュラたちの正体?

「フランお姉様の活躍はまだまだありますよ!」

妙なスイッチの入ってしまったケイトリーが、シビュラに向かってさらに口を開く。

「王都でも大活躍されているんですよ! なんと、悪逆非道なレイドス王国の陰謀を、仲間とともに暴いているのです!」

「あ、悪逆非道?」

「ええ、そうです! いつもいつも卑劣な謀で我が国に被害を与える、最低最悪の侵略国家です!」

「さ、最低最悪……」

何故か、シビュラの顔が引きつる。

「知っていますか? レイドス王国は浮遊島に実験施設を造り、非道な人体実験を繰り返していたんですよ? ただ、そんなレイドス王国に天罰が下ったんでしょうね。なんとその浮遊島がいつしかダンジョンと化してしまったんです! その浮遊島ダンジョンを、同じく冒険者のジャン様と一緒に攻略し、哀しき怨霊たちを解放したのもフランお姉様なんです!」

「ジャン? 皆殺か?」

「それは知っているんですね。そう! 冷酷非情なレイドス王国を何度もやっつけた、凄い人なんです!」

「今度は冷酷非情……」

ケイトリーはかなりレイドス王国が嫌いなんだろう。メッチャ悪口が出てくる。クランゼル王国の人間であれば、多かれ少なかれ同じ気持ちだろうが、少し行きすぎな気もする。

オーレルやその息子夫婦がそう教育したのだろうか?

「あの国のせいでどれだけ多くの人間が不幸に陥っているか……」

「そ、そうかい……?」

「はい! 私の叔父さんも、レイドス王国の陰謀によって引き起こされた事件に巻き込まれて命を落としました。小さい頃よく遊んでくれた、大好きな叔父さんでした……。許せません」

「……そう、なんだね」

「本当に酷い国です」

身内が死んだ理由に、レイドス王国が関わっていたのか。だとしたら、恨んでいるのも理解できる。

レイドス王国の悪口を聞いたシビュラが、微妙に乾いた笑いを上げている。物悲し気なのは、どうしてだろうか?

さらに、シビュラよりも大きく反応を見せたのが、それまでは黙って話を聞いていたビスコットだ。

「レ、レイドスはそんな国じゃない! 素晴らしい国だ!」

顔を真っ赤にして、そう叫ぶ。

「……なぜあんな国を庇うんですか?」

ケイトリーの言葉は、クランゼル王国の人間であれば当然の疑問だろう。それ故に真っすぐで、嫌味がない。

純粋な瞳に見つめられたビスコットが、それ以上は怒鳴ることもできずに口籠る。

「え? そ、それは……」

「ビスコット、お前は黙ってな。いや、あたしらは仕事がらレイドス王国の人間と会ったことがあってねぇ。話した感じ、悪い人間じゃなかったってことさ」

「……あの国の情報はそんなに出回ってないと思うんですけど。レイドスの人間と会う仕事って、なんですか?」

「そ、そこはほら、仕事上の機密って奴さ。そ、それに嬢ちゃんはレイドス王国って一括りにしたけど、中には良いやつもいるし、悪いやつもいるんだよ?」

「冒険者を一括りに冒険者としか見ていないあなたが、それを言うんですか? 冒険者には、罪を犯すような人もいますけど、お姉様みたいな凄い人だっているんです!」

「……そ、そうか……」

以前、ディアーヌと出会った時にも、感じた疑問だが、彼らはどんな素性の人間なのだろうか?

冒険者ではない。能力的にも、知識的にも、確実である。

傭兵か? 冒険者を敵視しているところなどは、同じだろう。その線は有り得る。だが、冒険者に対して無知過ぎる理由にはならない。

シビュラやディアーヌは、冒険者に詳しくないというよりは、冒険者を見たことさえ稀な様子だった。

隠しているつもりかもしれないが、隠しきれていないほどに冒険者を知らなすぎる。常識さえ欠けているように思えた。

だが、そんな人間いるだろうか? これが、子供であれば分かる。しかし、ある一定の実力を備えたシビュラが、これまで冒険者に接したことがない? 有り得ない。

それこそ、冒険者が一切いない土地で生まれ育ったのでもなければ、説明がつかないのだ。

では、それはどんな土地か? 冒険者が一切おらず、むしろ冒険者を見下したり敵視したりするような土地。

北の大国、レイドス王国しか考えられなかった。

だとすれば、ビスコットの態度にも説明がつく。

どうしてレイドス王国の人間がこんな場所にいるかということだが……。工作員やスパイが送り込まれているのは敵国同士なら当然だろうし、クランゼルからレイドスに潜り込んでいる人間だっているだろう。

正直、シビュラやビスコットがスパイには思えんけどな。能力的には騎士や兵士の類であり、隠密行動や破壊工作に向いているとは思えないのだ。

こんだけ存在感があって目立つうえに、脇の甘いスパイなどいないだろう。レイドス王国出身の跳ねっ返りお嬢様のお忍び旅行とでも言われた方が、よほど納得できる。

さて、どうしようか?

今問い詰めたら、正体を知ることができそうな気もする。だが、向こうは敵国に潜入中なのだ。

正体がバレたと思えば、確実に口封じにくることだろう。ケイトリーを守りながら、シビュラとビスコット2人を相手にするのはなかなか難しいと思われた。

それに、ここで上手く切り抜けたとしても、今後ケイトリーが狙われる可能性だってある。ここは、気付かないフリをして、とりあえず見逃すのが吉だろう。

「……あ、姉御。これ以上はヤバいっすよ!」

「そ、そうだね。ここはずらかるとしよう」

上手い具合に、向こうも退散する気満々だ。コソコソと話し合っている。水を向けてやれば、去るだろう。

「……ケイトリー、もういく」

「え? いいのですか?」

「これ以上は時間の無駄」

「お姉様がそう言われるのでしたら……」

フランに道を譲るように指示する。すると、これ幸いにと2人組はフランたちから逃げ出した。

「じ、邪魔したね!」

「ほんと」

「さ、さらばだ!」

『ウルシ。奴らの後を追え』

(オン!)

『あの2人はともかく、他に索敵能力に優れた仲間がいるかもしれん。慎重にな』

この2人だけでここまで正体がばれずに旅をしてきたとは思えないし、確実に仲間がいるだろう。

『頼んだぞ』

(オフ!)

これで、あとはディアスに報告すればいい。まあ、少し気まずいが、仕事に私情を持ち込むような――いや、持ち込むタイプだったな。

話を聞いてくれなかったら、オーレルとエルザを頼るとしよう。