軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

664 ゴルディシアの責務

「解決策があるわ。学院からの依頼を1つ受けてみない?」

「依頼?」

『内容によるけど』

どうやら天龍の素材の価値は5000万ゴルドを大幅に超えているらしい。たった1つ達成しただけで、不足分を補填できるレベルの依頼だぞ?

簡単な依頼ではないだろう。

「あなたたちは、ゴルディシアの責務って知ってるかしら?」

「?」

『いや、知らん。ゴルディシア大陸に関係するんだろうってことは理解できたが……』

「まあ、簡単に言えば、各国に課せられたゴルディシア大陸への派兵や援助に関する取り決めのことなんだけどね」

ゴルディシア大陸では、トリスメギストスが生み出した禁忌の魔獣、深淵喰らいとの戦いが今でも続いている。

まあ、俺も伝聞で聞いただけなので、どんな戦いなのかはいまいち分からんが。

そして、その戦いには世界中の国が様々な援助を行なっていた。兵力を派遣する国、物資を提供する国、運搬を担当する国。それぞれの国が、それぞれにできる援助をしているのだ。

この援助は『ゴルディシアの責務』と呼ばれ、世界各国に義務付けられているそうだ。この責務を放棄した場合、様々なペナルティがあり、悪質な場合は周辺国との戦争にさえ発展する。

実際、このゴルディシアの責務を無視したあげく、兵力をゴルディシアに派遣中の隣国に攻め入ったとある国が、その後周辺国家の連合軍により滅ぼされるという事件が起きたこともあったそうだ。

ゴルディシアの責務は世界を守るためには必要なことである。従って、それを無視しても平気であるという認識が生まれないよう、制裁はかなり厳しいものになるらしい。

なんと、あのレイドス王国ですらゴルディシア大陸への援助は怠らないというのだから、その強制力は中々のものと言えるだろう。

「で、我がベリオス王国なのだけれど、いつもなら金銭の援助と、輸送用船舶の提供。それと雇った冒険者の派遣を行なっているわ。場合によっては私が出張することもあるし。でも……」

『次回に金銭援助をしたり、兵士を派遣するのが難しいってことか? ウィーナは当然無理だし』

「その通り。うちの受け持ちは今年か来年。でも、今回の事件で馬鹿にならない被害が出てしまった」

「今年か来年?」

『そりゃあ、確かに厳しいな』

「金銭面はどうにかなる。でも、兵力はちょっとね……」

復興のためにも、労働力はいくらでも必要だろう。それに、ただでさえ数が減った冒険者を国外に派遣するなど、許されるわけがない。

たとえ来年まで待ったとしても、劇的な回復は見込めないだろう。

「一応、重大な災害などで国力の低下が認められた場合なんかには、責務の軽減や延長が認められている。でも、それは最後の手段にしたいの」

他国に弱みを見せることで、ベリオス王国の影響力が下がってしまうそうだ。

俺たちには下らないと感じてしまう政治の話だが、国のお偉いさんとしては無視できないことなのだろう。

『つまり、フランにベリオス王国の代表として、ゴルディシアに行けってことか?』

「そういうこと。まあ、魔術学院の代表としてでもあるけど。報酬は学院と国、両方から出るわ」

つまり、魔術学院代表として、他のベリオスから派遣される人間と一緒にゴルディシア大陸へと渡れということなんだろう。

『うーん。確かにゴルディシア大陸にはいつか行くつもりだったけど……』

国を背負ってなんて、不安じゃないか? だってフランだぞ? 戦闘能力に問題はないと思うが、問題行動を絶対に起こさないなどとは確約できない。

保護者の俺としては、そんな責任ある立場をフランに任せるのは反対だった。

そのことを伝えると、ウィーナは軽く肩をすくめる。

「言っておくけど、そこまで肩肘を張らなくても大丈夫よ」

俺の想像では軍隊に組み入れられ、命令厳守のお堅い戦場を想像していたんだが、もっといい加減な場所であるそうだ。

それこそ、ゴルディシアに着いた後は個人での自由行動が許されるほどに。そこら辺は、各国の自由裁量となっているらしい。まあ、小国だと、大国のお願いという命令に従うしかないそうだが。

「私の後ろ盾があるベリオス代表に、無理難題を押し付けようとする奴なんていないでしょうね」

大陸に入る時に特殊な魔道具に登録することで、大陸内での戦果が分かる仕組みがあるのだ。それにより、大陸内でフランが深淵喰らい相手にある程度戦えば、それでベリオス王国が責務を果たした扱いになるという。

「つまり私からの依頼は、ベリオス王国が派遣した冒険者としてゴルディシア大陸に渡り、あとは適度に暴れること」

『なるほど……。深淵喰らいっていうのは、どれくらい強いんだ?』

無限に成長増殖するという話は聞いているが、それ以外の情報は少ない。一般兵士も戦っているという話から、そこまで戦闘力が高くはなさそうだとは思うんだが……。

「なかなか説明が難しいのだけど――」

ウィーナが簡単に説明をしてくれた。

まず、深淵喰らいの見た目は、無色透明なスライムのような姿であるらしい。もしくは、スライムの幽霊とか言われることもあるんだとか。

そしてそのサイズは、それこそ大陸をスッポリと覆ってしまうほどである。

なんと、ゴルディシア大陸を覆うドーム状の結界の内側は、深淵喰らいに満たされているそうだ。

イメージ的には半透明のドームがあり、その内側に深淵喰らいがみっちりと詰まっている。まさにそんな感じらしい。

『え? でも、結界の中に入って戦うんだろ?』

「そうよ」

『それって、深淵喰らいの中に入るってことにならないか? 危険じゃないのか? それに、空気とかは?』

「深淵喰らいは半霊質の魔獣。そこにはいるけど触れられない。少し精霊に似ているかもね。体内と言っても、深淵喰らいそのものがこっちを害するわけでもない」

『でも、だったら危険なんかないんじゃ?』

「それは違う。深淵喰らい本体には、攻撃力はない。ただそこに在るだけ。でも、深淵喰らいがその体内で生み出す魔獣は別。そいつらはどんな物にも襲いかかり、食べ、力を深淵喰らいに送り続ける」

『魔獣を延々と生み出す大元になるってわけか。つまり、深淵喰らい本体をどうこうするのではなく、生み出される魔獣を倒すのが仕事ってわけだな?』

「その通り。深淵喰らいの体内で生み出される魔獣は、抗体の魔獣。抗魔と呼ばれているけど、その抗魔をできるだけ多く倒してもらいたいの。ある程度の成果を上げてくれれば、後はどう行動しようとも自由よ?」

どうせゴルディシア大陸には行くつもりだったし、行けば抗魔との戦いは避けられないだろう。それで依頼を達成することができるのなら、有り難い。

「しかも、この依頼を受けるメリットは、報酬だけではないわよ?」

『どういうことだ?』

「一般渡航でゴルディシアに渡るとなると、色々と制限があるし、ノルマも課せられる。でも、私の依頼を受けてゴルディシアに行くのであれば足もこちらで用意するし、向こうでの入国もスムーズ。しかも、他の国に無理やり組み込まれることも、横やりを入れられることもなく、自由に行動が可能。これはメリットと言えるんじゃない?」

「ん。自由なのはいいこと」

『だな』

どうせ行くんだったら、依頼を受けてもいいかもしれない。