軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

634 生命魔術の力

『あの穴、やっぱり再生が鈍い』

シエラたちの攻撃で開けられた大きな穴。勿論、それなりの速度で再生が始まっているんだが、俺たちが攻撃した時よりも明らかに塞がる速度が遅かった。

破邪顕正を乗せたカンナカムイよりも、邪気の方がダメージが大きいということか? それとも他に理由が?

ようやく、蓄積してきたダメージが顕在化してきた?

あとは、邪神の聖餐の効果という可能性もあるかもしれん。

今も、かなりの勢いで邪気が大魔獣から流れ出し、シエラやゼロスリードに流れ込んでいるのが分かるのだ。あれだけ力を吸われれば、影響が出ていてもおかしくはない。

シエラたちに話を聞こうとした、その時だった。

「苦戦しているようね」

「レーン?」

不意に現れたのは精霊のレーンだった。

『応援に来てくれたのか?』

「ええ。少しでも力になれればと思って」

『なあ、奴に弱点はないのか?』

「ぽいものなら、なくもないわよ?」

『なに? まじか?』

「ほんとに?」

あっさりと頷くレーン。俺もフランも、思わず聞き返してしまったぜ。

『魔石ってことじゃないよな? 魔石を破壊できたら、普通に倒せちまうし』

「勿論魔石もあるけど、今はまだ封印の中ね」

レーン曰く、今の大魔獣は全体の数分の一程度であるらしい。人間で言えば、ようやく片腕が外に出たくらいだそうだ。

当然、魔石などもまだ封印の中である。

「弱点って、なに?」

「ぽいものって言ったでしょ? 明確な弱点ていうわけじゃないのよ……」

そう言いながら、レーンがシエラたちの開けた穴から少し離れた場所を指差した。

「あそこを見なさい」

「どこ?」

『……ああ、傷があるぞ!』

「あんな小さい傷なのに、治りが遅いでしょう? それに、あの触手もあの触手もそう」

レーンが新たに指した大魔獣の触手を見る。なるほど、確かに一部の触手は再生せず、千切れたままであった。あまりにも数が多いため、気付かなかったのだ。

「あの触手には、生命魔術に近い性質の魔力が残っているわ。あの傷も」

「生命魔術……」

フランがそう呟き、ウルシの背中をポンポンと叩いた。それに反応したウルシが、背中のフランを振り返る。

そうなのだ、触手はさすがに判別つかないが、本体に穿たれた小さい傷は、間違いなくウルシが噛み千切った跡であった。

『そうか! 再生阻害スキルだ!』

今まであまり実感したことがなかったのですっかり意識の外であったが、ウルシは相手の再生を阻害することができるスキルを持っているのだ。

どうやら、大魔獣にもバッチリ効いているらしい。

「弱点と言えるほどではないけど、あの凄まじい再生力も、結局はスキルによるものよ。それを阻害する魔術や能力なら、効果があるわ。ウルシなら、ダメージを効率よく与えられるはず」

傷の再生が遅いということは、その部分を塞ぐのに今まで以上に魔力や邪気を消耗するということだ。

レーンは、ウルシにも積極的に攻撃に加われと言いたいのだろう。一撃の攻撃力はフランに劣っても、手数で削り続ければかなりのダメージを期待できる。

普通に考えれば、それが最も効率が良かった。

まあ、普通に考えたら、だけどな。

『フラン、生命魔術に、相手の治癒を阻害する術があるはずだ』

ウルシがそれで一時期片目を失ってしまったことがある。だからこそ、進化したウルシが再生阻害スキルを手に入れたのだろうが……。

(ポイント使う?)

『いいか?』

(ん!)

俺たちには自己進化がある。しかも、生命魔術はすでに所持していた。

フランとも相談し、生命魔術にポイントをつぎ込むことにする。

『とは言え、何レベルでその術を覚えるかは分からんのだよな。うーむ……。とりあえず1レベルずつ上げてみるか……』

《当該魔術は、生命魔術Lv5にて習得可能です》

『おお! まじか!』

《是。生命魔術、ヒール・ディスターブ。使用した武器などで生物に傷をつけた際、一時的に治癒、再生能力を阻害することが可能です》

『ビンゴだ!』

俺はアナウンスさんのアドバイスどおり、生命魔術を5まで上昇させた。

『よし! 覚えた!』

生命魔術ヒール・ディスターブ。アナウンスさんの説明通りだな。まず、この術を武器や肉体に掛ける。そして、相手を攻撃すると効果が発揮され、しばらくの間相手の傷の治りを阻害し、邪魔することができるという術だ。

大魔獣の場合、肉体が巨大すぎて、全体に効果が発揮されないようだ。また、シエラたちの場合、邪気にはもともと再生を阻害する性質があるらしい。さすが生きとし生けるものの敵。

『しかも、他にも良い術を覚えたぞ』

むしろ、こっちの方が嬉しいほどだ。

生命魔術は単に回復力に干渉するだけの魔術ではなかった。生物全般の肉体に効果がある術が並んでいたのだ。

回復力や、肉体の異常の治癒速度を上昇させる術に始まり、筋力や神経を強化する術。そして、体を頑強にし、肉体強度を高める術なども存在していた。

最初はいまいち意味が分からなかったのでアナウンスさんに質問してしまったが、この肉体強度を高める術こそ、今のフランに必要な術であったのだ。

(どんな術、覚えた?)

『この術は凄いぞ。なにせ、肉体の強度を高めることで、技やスキルの反動を軽減する効果があるんだ!』

つまり、今のフランのように、技を使う度に自爆する人間のための魔術であった。これがあれば閃華迅雷の反動だけではなく、天断や天空抜刀術の負荷による自爆ダメージも大きく軽減できるだろう。

まあ、使ってみないと分からないが。

どうせ、フランは俺が言っても止まりはしない。遺憾ではあるが、使う場面はすぐにやってくるだろう。できれば、無茶はしてほしくないんだけどね……。