軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

631 フランとウルシの合体攻撃

邪神の支配が問題ないことは確認できた。まあ、超大音量で鳴り響く大魔獣の声は、メチャクチャうるさいけど。耐えられないほどではない。

『点での攻撃と、内部からの攻撃は試せた。後は面での攻撃を試したい』

「めん?」

『魔術で全体を覆い尽くすような攻撃を行う。フランも少し手伝ってくれ』

「わかった」

『じゃあ、行くぞ』

そして俺たちが放ったのはレベル9雷鳴魔術、エカト・ケラウノスだった。

「はぁぁ!」

『おらぁぁ!』

多重起動された高位雷鳴魔術により、数百発の雷が大魔獣に向かって降り注いだ。その体全体を電流が流れてスパークする様子は、派手の一言だ。

高層ビルが全体から強烈な光を放ち続け、明滅しているような姿だった。しかもそれだけではなく、大魔獣の体を伝って湖にも雷が流れ、広範囲が巻き込まれて閃光を放っている。

「じじだだだだだだだだぁぁぁ!」

『まだまだ! 終わらないぞ!』

破邪顕正を乗せた雷は効いている。その確信をもって、俺はさらに雷を降らせ続けた。10連発の大盤振る舞い。大魔獣を打ち据えた雷は、1000発を超えただろう。

そうやって、雷の嵐で大魔獣を攻撃していると、大魔獣が大きく蠢くのが分かった。

全体が軽く収縮したと思った直後――。

「したがぁぁぁぇ!」

縮まっていた肉塊が一気に膨張し、魔力の暴風が吹き荒れた。

『まじか! 力技で抜け出しやがった!』

大魔獣は、魔力を全身から大量に放出することで、魔術を吹き飛ばしたのだ。

凄まじい魔力量である。

吹き荒れる魔力に俺が巻き込まれれば、それだけで粉砕されてもおかしくはなかった。大魔獣はやはり規格外である。

『ちっ。ダメージも大したことがなさそうだ』

「結構、焼けてるよ?」

『外見はな』

だが、表面の傷などすぐに再生してしまうだろう。大魔獣の内包する魔力は大して減っていないのだ。

『小さな攻撃をたくさん当てるんじゃなくて、強い攻撃を当てていく方が良さそうだ』

「なるほど」

「オン」

俺がそう告げると、フランが挙手した。

「はい。やりたいことがある」

『やりたいこと? あんまり無茶なことはしてほしくないんだが……』

「へいき」

『……仕方ない』

「ん! ありがと師匠」

その真っすぐな目は、とてもではないが止まりそうもない。だったら、一発やらせてみるのもいいだろう。

『で? 何をするんだ?』

「ん。斬る!」

シンプルな答えだったが、試す価値はある。俺の念動カタパルトで突進攻撃はしてみたが、まだ物理攻撃はそれくらいしか試みていないのだ。

「師匠も手伝って」

『おう!』

「ウルシも」

「オン!」

『そうか、アレか!』

「ん!」

魔狼の平原での修業においてフランは、俺とだけではなくウルシともとっておきを編み出していた。

むちゃくちゃ過ぎて、練習風景を見た時には俺でさえ開いた口が塞がらなかったほどだ。まあ、口はないけどね!

正直、何度も止めようとしたが、ボロボロになりながらも楽しそうなフランとウルシを見ては、止めることはできなかった。

そのおかげで、めでたく必殺技は完成したわけなんだが……。普通の人間だったら、間違いなく後遺症が残るような大怪我を何度も経験したうえでの完成だった。

『タイミングは任せる。俺は自己強化と防御に集中しよう』

「お願い」

「オン!」

フランとウルシが一気に天へと昇り始める。その高度は1000メートルを超えるだろう。

「閃華迅雷――いくよ、ウルシ」

「ガル!」

フランの掛け声で、ウルシがさらに上昇し始めた。フランはその場に留まり、自己強化を施していく。

「ガルッルルォォォォ!」

直後、ウルシがフラン目がけて突っ込んできた。スキルを使用し、その速度はただ空中跳躍で駆けるよりも遥かに速い。そんなウルシが、自らの巨体でフランを押し潰そうとしているかのように、一切減速せずにフランに突進してきたのだ。

そして、その前足をフランに向かって振るった。加減するどころか、爪闘技まで発動した本気の一撃である。

だが、フランに動揺はない。

「らああぁぁぁぁぁ!」

「ガルルオオォォォ!」

なんとフランはその攻撃を回避するどころか、ウルシに背を向けていた。

ウルシの前足を迎撃するかのように、両足を揃えて背後に突き出す。

向きが逆なら、ウルシの肉球の上に、膝を曲げた状態のフランが中腰で立っているようにも見えたかもしれない。

しかし実際はウルシの肉球は上から振り下ろされ、フランの体は下を向いている。

だが、これで正解だった。

いつもの天空抜刀術であれば、糸を束ねたものの反動を使ったり、空中跳躍で空を蹴ることで初速を得ていた。今回はそれにウルシの攻撃の反動を利用したのだ。

ウルシのパワーを使って、一気にフランが撃ち出される。まるで俺が念動カタパルトを使用した時のような勢いで。

それも当然だ。何せ、本当に俺の念動カタパルトを参考にしているのだ。

「はぁぁぁ!」

怪力や瞬発といった強化スキルに、武技まで乗せたウルシのフルパワーを推進力に変え、フランが流星のような速さで大魔獣目がけて降っていく。

ウルシの後押しと、フランの自身の加速スキルが合わさり、それはもはや目で追うことさえ困難な速度だった。

フランが駆け抜けた跡に黒い雷が舞い、それでようやくフランの軌跡を確認できるほどだ。

障壁が何かを弾く感触。

俺自身も気付かぬ間に、大魔獣の触手を弾いたんだろう。

1000メートルあった大魔獣との距離が、一瞬で詰まる。

「――天断!」

「したぁ――」

肉を斬る感触などない。あまりにも鋭く、速過ぎるせいだろう。水を切るのと変わらない程度の抵抗だ。

振るわれた俺自身が、何が起きたのか認識できていない。

気付いた時、大魔獣の体が悲鳴とともに頂点から真っ二つに裂けていた。

『転移!』

それでも、やるべきことは分かっている。俺は準備していた短距離転移を発動していた。