軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

618 共鳴魔術

『さて、フラン。どうだ? そろそろ準備はいいか?』

(ん! おまたせ)

ゼライセは拍子抜けだとか言っているが、現在の膠着状態は、フランがあえて作り出したものだった。まあ、ゼライセもあえてこっちの思惑に乗っている部分もあるだろうが。

戦いの中での俺を観察しているのだろう。それ故、あえて本気で攻めないのだ。

(師匠、いく!)

『おう!』

本来であれば。ここから逃げ出すのがベストの選択肢だろう。しかし、ここで俺たちが逃げれば、ゼライセが再び魔獣の封印に何かをするかもしれない。

すでに封印がかなり弱っているというし、それは阻止したかった。

だからこそ、フランは勝負をかける。長時間戦えないのであれば、短期決戦を仕掛けるだけなのだ。

『はぁぁぁ!』

「たぁぁ!」

『共鳴魔術!』(共鳴魔術!)

俺とフランから放たれた魔力が混ざり合い、1つの魔術が生み出されようとしている。

これが、魔狼の平原で手に入れた奥の手、共鳴魔術であった。

複数の魔術師が魔力を共鳴させ、発動させる術である。非常に珍しい魔術であるらしい。

なにせユニークスキルなのだ。そして、発動するには、協力する者全員がこのスキルを持っていなくてはならなかった。

それだけでも、発動条件が揃うことなどほとんどないと言ってもいい。しかも、スキルを持っていれば使用できるというものでもなかった。

魔力の波長と大きさを制御して合わせなくてはならないのだ。

つまり、共鳴魔術スキルを持っており、かつ魔力制御は上級者でなくてはならない。そんな人間が揃うことなど、そうそうあるはずもなかった。

アマンダでさえ、発動するのを見たことは数回しかないという。ダンジョンの奥にいるような上級魔獣の群れが使ってきたそうだ。

元々はダンジョンの魔獣のためのスキルなのだと思う。同種同能力のモンスターを大量に生み出せるダンジョンであれば、むしろ発動は簡単だろうからな。

俺も、魔狼の平原で所有している魔獣を偶然仕留めただけだった。

触手のような物で繋がったままの不思議なスライムたちで、5体で1セットのような生態だったらしい。その名もレゾナンススライムである。

まあ、共鳴魔術を使われる前に仕留めたけどね。

「くぅっ……!」

『フラン! 頑張れ!』

フランが呻き声を上げる。これが、この魔術を実戦で使用できない理由でもあった。

通常、10匹20匹の魔獣たちが群れで運用することを前提とした魔術だ。それを俺とフランだけで使っているわけで、使用者に対する負担は相当なものだった。

特に、脳への負荷がかなりきついらしく、このスキルを使おうとするとフランが酷い頭痛に襲われるのだ。

フラン曰く「頭の中で誰かがトゲ付きハンマーを振り回してる」らしい。

そのせいで、フランの制御が全く安定しなかった。

「ああああ!」

『よし! よく頑張ったぞフラン!』

だが、フランは悲鳴をあげながらも、自らの仕事を完遂する。

フランが精神力を振り絞り、痛みに耐えながら術式を最後まで完成させたのだ。俺は自らの魔力を察知し、瞬時に出力を合わせた。

すると、俺たちから青白い雷が放たれ、縦横無尽に暴れ回りながら周囲を覆い尽くす。

「がぁ! こ、これは……なんだ?」

「ガル!」

「ぐぅ!」

透過状態だったゼライセが、共鳴魔術を食らって大きくよろめき、ウルシの追撃で深い傷を負う。しかも、雷は未だに荒れ狂っていた。

雷鳴魔術だと思っていたのだろう。透過状態でありながら雷鳴の直撃を受けたことに、ゼライセが驚いている。 ゼライセであっても、初見ではその正体を見抜けないようだ。

これが、共鳴魔術の効果であった。フランの雷鳴属性と、俺の時空属性が混じり合い、時空属性を持った雷鳴が放たれたのだ。

込める魔術の性質と、術者たちのイメージによって千差万別に変化する。それが共鳴魔術だ。

ただ、威力はさほどではない。使用時に全員の魔力を共鳴させなくてはいけないため、一人が大きすぎると失敗してしまうのだ。つまり、魔力が一番低い人間に合せなくてはならない。

今回だと、俺がフランに合わせている。そもそも、頭痛のせいでこっちに合わせるどころではないからな。

しかも、属性を混ぜ合わせるためにも込めた魔力が消費されてしまうため、威力がさらに下がる。

カンナカムイや天断に比べれば、弱いとさえ言ってもよいだろう。

だが、今のように複数属性が有効な場面であれば、非常に使える魔術であった。雷鳴の速度を持ちながら、透過状態ゼライセにもダメージを通せる時空属性を持っている。

『共鳴魔術の効果が残っている今がチャンスだ!』

「ん!」

フランがゼライセを斬り捨てるべく。駆け出す。

俺もフランもこの一撃に全てを懸ける覚悟だ。

だが、次の瞬間、俺もフランもウルシもゼライセも、一斉にその身を竦め、驚愕の表情を浮かべた。

「これ……?」

「クゥン」

『おいおい! 神殿の底から何か出てくるぞ! すげー魔力だ!』

「な、なんで大魔獣の封印が解けるんだ? 僕は、何もしてないのに……」

神殿の中央から、灰色の魔力がゆっくりと這い出すように漏れ出してくる。

俺たちは大きく飛び退った。

「う、うわぁぁぁぁっ!」

直後、ゼライセが大きな悲鳴を上げる。いつものようなわざとらしい声ではない。本気の悲鳴だ。しかし、それも当然だろう。

「ぐ……! なんだよ! はなれろぉぉ!」

ゼライセの体に、細い紐のような物が幾重にも絡みつき、縛り上げていたのだ。

よくよく見れば、それはクラゲが持つような極細の触手であった。無数の触手が純白の床板の隙間から溢れ出し、ゼライセに襲いかかっている。

透過能力を使っていたはずだが、無意味であったらしい。

まじで大魔獣が復活しようとしているのか?

だが、どうして? もしかして、ここで戦ったせい?

『レーンはどこだ? レーンなら事情が分かると思うんだが』

(ん? いない?)

その時だった。背後から、レーンの声が聞こえた。

「だから、逃げてって言ったのに……」