軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

600 引き寄せられるモノたち

ウルシとフランは手分けして、湖に浮かぶ人々を救出していった。

「だいじょぶ?」

「た、助かった……」

「オン?」

「ひぃぃぃぃ!」

救助した人には、ロブレンとともに船に踏み込んだ冒険者以外にも、工房船で働いていた普通の人々もいる。

冒険者は普通に感謝してくれるんだが、そうでない人々はウルシを見て悲鳴を上げていた。巨大な狼に襲われると思ったのだろう。

いや、最初の方は、ウルシが口を使って引き上げたりしてたから特にね? 体も大きいし、顔も迫力がある。普通の人に怖がるなというのは、なかなか厳しいと言えるだろう。

『だからそんなに落ち込むなって』

「オフ……」

後半はロブレンのような水上歩行ができる冒険者たちも救助に加わり、かなりの人数を救出することができていた。

それでも全員無事とはいかず、多くの遺体を回収することになってしまったが。

「……ゼライセッ……!」

『あの野郎、どこに行きやがった?』

「ガル!」

その惨状を目の当たりにし、フランが怒りの籠った呟きを漏らした。俺とウルシも同様だ。

ゼライセは転移系の能力を持っているはずだが、まだそれほど遠くにはいっていないだろう。ウルシの鼻で追うことはできないか? もしくは、今の俺やフランなら、スキルでその存在を感知することができるかもしれない。

『ゼライセはまだこの辺に――』

ドゴオオオオン!

『な、なんだ?』

「あれ! また火!」

「オン!」

ゼライセを見つけ出すための方策を考えている俺たちの耳に、再び大きな音が聞こえてきていた。慌てて確認すると、こことは別の船から火柱が上がっているのが見えた。

さすがに、あれがどの船かは分かる。さっきまでいたところだからな。

『メッサー商会の船が……』

ゼライセによって放火された工房船に続き、メッサー商会の船までもが業火と煙に包まれ、ゆっくりと沈もうとしていた。

あり得ないほどに火の回りが早い。証拠隠滅のため、船に何らかの仕掛けを施していたらしい。

「いく!」

『ああ!』

俺たちは再び救助活動に勤しむ。だが、救助できたのは冒険者ばかりであった。

商会の人間の多くは拘束されており、火から逃れることができなかったのだ。上手く湖に飛び込んでも、手足が縛られているせいで溺れてしまう者もいたらしい。

しかも、事態はこれで終わりではなかった。

ゴゴッ!

またまた大きな音が響いていたのだ。

ただ、今度の音は爆発によって発生した音ではない。体の芯に響くような、重い衝撃は感じなかった。

爆発音というよりは、何かが軋んで壊れるような破砕音だ。

ゴゴオ! ドゴオン!

しかも、断続的に何回も聞こえてくる。

『フラン、上に!』

「ん!」

俺たちはその場で上昇し、音のした方角を見てみた。

『ありゃぁ……、やべーな』

「師匠! いく!」

『ああ! ウルシ急げ!』

「オン!」

どうやら、俺たちの感知スキルが狂ったわけではないらしい。

『なんであんな大量のモドキが……!』

「ゼライセが呼んだ?」

『馬鹿な! 生態もよく分かってないモドキをどうやって!』

なんと、商業船団の複数の船が、モドキによって襲われていた。すでに船縁に取り付かれ、大きな穴を開けられている船もある。

メッサー商会や工房船への出入りをするために冒険者の多くが駆り出され、警戒網が薄くなっていたのだろう。

そこに、大量のモドキが押し寄せたせいで、対処が間に合わなかったのだ。

これは偶然?

いや、そうじゃない。モドキはもともと緋水薬を狙っていると推測されていた。そして、工房船、商会船が爆発炎上したことで、大量の緋水薬が湖に流出してしまった。

しかも大きな音と、目立つ炎の柱。

モドキを引き寄せるには十分な条件と言えるだろう。

モドキの気配が多すぎて正確には分からんが、船団の周囲に30体以上はいるはずだ。しかも、さらに集まってきているだろう。

『ともかく、モドキを狩るぞ!』

「ん!」

『ウルシもフランも、派手な魔術は使うなよ? 船団に被害を出さないように、接近戦で仕留めるんだ!』

「前と同じ。だいじょぶ」

「オン!」

『よし、行くぞ!』

俺たちとウルシ、二手に分かれて近くのモドキから倒していく。

本当は三手に分かれることも考えた。水中で戦えば、俺が単独で動く剣であると露見する可能性も低いだろう。

だが、それは止めておいた。

付近にまだゼライセがいるかもしれない。そんな場所で、フランを一人にしたくなかった。

今のフランがあっさりと倒される恐れは低いと思う。だが、ゼライセには強さやステータスでは計りきれない、不気味さがある。何をするか分からない怖さがあった。

「師匠?」

『おっと、すまん。ちょっとゼライセの存在が気になっただけだ。それよりも、まずはモドキをどうにかしないとな』

「ん!」