軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

564 神戻り

ホリアルの授業はさらに続く。

少々脱線して獣人の魔法適性の話になってしまっていたが、内容が進化の授業に戻っていた。

「ではキャローナ君。この世で、唯一進化しない種族は何かな?」

「はい。我々人族です」

「その通り――」

多分、フランのためだと思うが、ホリアルが以前の復習だと言って今までの授業内容を簡単におさらいしてくれる。

自然人類学と神話が融合したような不思議な話だが、この世界では事実とされているのだ。

簡単に言うと、神様たちがこの世界を作り、自然を生み出し終えた後、大神たちが協力して人間を作った。この後、人間を基に各神たちがそれぞれの眷属を生みだした。

獣蟲の神の眷属であれば、獣人、蟲人。森樹の神であればエルフ。大地の神ならドワーフや鬼人。そんな感じである。

神に生み出された亜人たちはそれぞれの神々に与えられた特別な力を持ち、進化という可能性を手に入れた。

一見すると人間だけ力を与えられていないようだが、十大神の力をバランスよく与えられた人間は苦手なこともなく、繁殖力も高いうえ、非常に安定した能力を持った優良種族であるそうだ。進化できないのではなく、進化する必要がないのである。

まあ、この辺の解釈は種族によって大分違うらしいが。さすがに人間の王族が支配するこの国で「人間は特に良い所のない器用貧乏な種族です」とは教えないだろう。

獣人国に行けば、獣人は魔法なんていうチマチマした物には頼らない、最も強く気高い種族であると教えているそうだ。

「さて、では次に進化について語ろう。まず、人間以外の種族は、レベルを上げて条件を満たせば、自然と進化することができる。変異の場合もあるが、ここでは進化の中に変異を含ませてもらうよ?」

鬼人は進化じゃなくて、変異するんだったな。進化はレベル最大時に訪れる大きな変化。変異はレベルに関係なく、条件さえ満たせば可能な小さな変化。だったかな?

「獣人でもエルフでもドワーフでも竜人でも、進化できることに変わりない」

ただ、進化や変異する種族の中には、時おり特殊な進化を遂げる個体がいるらしい。

獣人族の十始族などもその特殊な進化に入るそうだ。そして、他の種族にも特殊な進化が存在する。

アースラースの種族である禍ツ鬼も、実在が疑問視されていた幻の種族である。絶対とは限らないのかもしれないが、特殊な進化を遂げると普通よりも強くなるのかもしれない。

「その特殊な進化の中でも、特に珍しい進化がある。それが、神戻りや先祖返りと呼ばれる進化だね。神代種などと言う研究者もいる」

大層な呼び方だ。

「その言葉通り、神が手ずから生み出した、原初の種族に近い種族に戻っていると考えられている。まあ、進化というよりは回帰というべきなのかもしれないが、ここでは進化の1形態として語らせてもらう。私の知る限り、ハイエルフは神戻りに当たるかな」

神戻りと普通の進化を分ける大きな違いは、種族の変化にあるという。

例えばエルフ。ウッドエルフやリーフエルフ、グラスエルフなどの種が存在しているが、どれだけ進化してもエルフはエルフである。

しかしウィーナレーンの場合、少々違っているというのだ。

彼女はハイエルフに加え、亜神という種族でもあるらしかった。

(すごい。神様だって)

『いやいや、まじで? つまりウィーナレーンって神ってことか?』

俺もフランもそう驚いたが、単純に神様になったというわけではないらしい。亜神は正式な神ではなく、その力を与えられた神に次ぐ存在という位置づけであるそうだ。

「とはいえ、歴史上そこまで多くはないので、あくまでも資料や学長の話を聞いたうえでの、私の見解となるがね」

「神戻りは、ハイエルフ以外に何がいるのですか?」

フランがいることに対する緊張が完全になくなったのか、他の生徒たちも積極的に質問をし始めた。

「良い質問だ。私が知る限りでは、ドワーフの神戻りであるエルダードワーフ。魔族の神戻りである神魔人が確実にいるとされているね」

「では、未確認ではどのような種族が噂されているのでしょう?」

「そうだね。まずは神竜人。これは竜人の神戻りとされているが、ゴルディシア大陸が滅んでしまったせいで資料が失われてしまっている。ただ、今でも竜人たちの中にはその存在が確実なものとして伝わっているので、実在する可能性は高いだろうね」

神竜人。俺はその存在に心当たりがあった。王都での戦いにおいて、狂信剣ファナティクスに支配されて暴走したベルメリアが、神竜化というスキルを持っていたはずだ。

そして、実際にそのスキルで凄まじい力を発揮していたのを目撃している。

あれが神竜人なのではなかろうか?

「また、私たち獣人。その中でも特に歴史の古い部族には、神獣人と呼ばれる存在がいるという口伝が残っているそうだよ?」

「神獣人?」

「ええ。十始族を超える力を持った、超越者だそうです。その口伝の中では、素手で神剣に勝ったとされていますね」

「えー?」

「それはさすがに……」

ホリアルの言葉を聞いた生徒たちは、一斉に否定的なざわめきをあげる。この学校では神剣に関しての授業もあり、その力の凄まじさを伝えられているようだ。

多分、獣人であるホリアルが、獣人の神戻りについて大げさに伝えていると考えているのだろう。

だが、俺やフランの考えは違っていた。実際にベルメリアが神剣使いであるアースラースと互角に戦っているところを見たからな。ウィーナレーンにしろ、まだ全ての力を見たわけではないが、神剣と戦うくらいの力を持っていそうだった。

『もし、その神獣人がウィーナレーンやベルメリアクラスの力を持っているんなら……』

「ん。神剣に勝つ可能性はある」

フランの呟きは、意外と多くの学生の耳に入ったらしい。ホリアルも、興味深げに問い返してくる。

「黒雷姫殿には、なにか心当たりが?」

「ん。ウィーナレーンと少し戦ったけど、神剣と戦えるくらい強いのは確か」

「……神剣を見たことがあるのですか?」

「アースラースが神剣を使って戦っているのを見たことがある」

「なるほど。神剣と神戻り、双方を見たことがあるのですか!」

教室のざわめきがさらに大きくなる。どうやら、開放状態の神剣を見たという話が衝撃的だったらしい。周囲の生徒から質問攻めに遭ってしまった。

話が脱線してホリアルが怒るかと思ったが、彼自身も神剣について質問をしてくる始末である。

こっちの世界では伝説的な存在だし、仕方ないのかもしれないが。

結局、授業終了までアースラースと神剣について語ることになってしまったのであった。