軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

532 モドキ

「だ、誰か……え? めっちゃいる!」

どうやら試験の事を知らなかったらしく、大量の冒険者がいることに驚いている。

「何があった?」

「あ、ギルマス! 大変です、またモドキが出ました!」

「またか! 数は?」

「4匹! こっちに向かってきます!」

「ちっ! おい、試験は中断! 緊急依頼だ! 船団到達前に、モドキどもを始末しろ!」

「おう!」

モドキ? モンスターなのか?

「ねえ、モドキってなに?」

「おっと、フランは知らなかったな。最近、この湖で増えつつある厄介な魔獣だよ」

甲板に向かいながら、ガル爺さんたちから話を聞く。

「元々、この湖にはヴィヴィアン・ガーディアンという固有種のモンスターがいたんだが、知ってるか?」

「知らない。固有種?」

「ああ、世界中でもこの湖にしかいない希少なモンスターさ」

だが、そのモンスターが狩られたことはほとんどないという。まず、非常に温厚な事。縄張りから出ず、そこを越えない限り向こうから接触してくることはない。

「それに縄張りに入り込んじまっても、まずは数匹で姿を現してこっちの進路を塞ぐことしかしないのさ。それでも無視すると攻撃されるんだが……」

それでも殺されはしないという。無力化されて、近くの陸地に放り出されるだけらしい。

ただ、だからと言って一方的に狩れるわけではない。ある程度の強さの攻撃を加えると、攻撃形態に変身するという、しかも、周辺にいる数百体のガーディアン全てが。

「攻撃形態になっちまうと、周辺から人間を排除するまで止まらん。攻撃した馬鹿以外にも、無関係な漁船や冒険者なども巻き込まれて、死ぬ場合がある」

「強いの?」

「脅威度はEだ。向こうから攻撃してこないことから、脅威度は低く見積もられている。また、戦闘記録も少なくてな。正確な強さがいまいち分かってはいねーんだ。それでも、儂が若い頃に攻撃形態を見た限り、群れでの脅威度は最低でもBは下るまい」

それはメチャクチャ強いモンスターじゃないか。でも、そんな話はギルドでもされなかったぞ?

その疑問をぶつけると、彼らの生息域は立ち入り禁止で、おいそれと入れる場所ではないらしい。近づけば監視員に追い返される。むしろ、珍しく希少な魔獣の情報を広めると、それ目当てで密猟者が現れかねないので、ギルドでも積極的には喧伝していないそうだ。

「それで、モドキっていうのは?」

「ああ、モドキは、ヴィヴィアン・ガーディアンの異常種と考えられている新種のモンスターだよ」

「異常種? そいつら、倒していいの?」

さっきの緊急依頼、討伐するという内容だったはずだが。攻撃したらやばいんじゃないか?

「それがな、モドキどもを攻撃しても、他のヴィヴィンアン・ガーディアンたちは攻撃してこんのだ」

「なんで?」

「さあな。こっちが教えて欲しいくらいだぜ」

まだ研究が進んでいないらしい。

「元々のヴィヴィアン・ガーディアンと違い過ぎて、分からないことだらけでよ。なんで縄張りから出てくるのか。なんで商業船団を執拗に狙うのか」

「商業船団が狙われてる?」

「どうも、そうっぽいっていう段階だがな。目撃される場所が毎回商業船団の近くだし、その進路も船団を目指しているとしか思えんのだ。無論、商業船団は監視員や監視魔道具も多いから、発見し易いということもあるだろうが……。それにしても比率が高いことは確かだ」

それってかなり拙い事態なんじゃないか? この船団がこの湖周辺の生活を支えているといっても過言ではないだろうし、船団が壊滅でもしたら、まじで周辺の町や村が滅ぶ。

「ギルマス! あっちだ!」

「数は4匹だったな?」

「ああ、見張中の新人が見つけた!」

甲板に出ると、すぐにモドキの姿を見つけることができた。

湖の水面に体を半分ほど出しつつ、船団に向かって泳いでくる。

見た目は、5メートルほどの殻を被ったイカ? タコ? 尖ったサザエのような殻から、タコっぽい触手が10本ほど出ている姿だった。殻の先端をこちらに向け、触手を使って泳いでいるようだ。

全体的な色が黒と赤の縞模様で、所々に赤紫が混じった、非常に毒々しい色をしている。

「あれがモドキ?」

「おう」

種族名:ヴィヴィアン・ガーディアン:魔精:魔獣 Lv30

状態:異常化

HP:561 MP:301

腕力:301 体力:441 敏捷:210 知力:298 魔力:459 器用:121

スキル

気配察知:Lv4、高速再生:Lv3、再生:LvMax、状態異常耐性:Lv5、触手:Lv7、触手伸縮:Lv5、水弾:Lv6、水中行動:Lv8、生命感知:Lv4、水流操作:Lv5、魔力感知:Lv4、水魔術:Lv5、遊泳:Lv4、連携:Lv8、鋭敏嗅覚、鋭敏聴覚、甲殻強化、暴走行動、魔力操作

「まあ、本来はヴィヴィアン・ガーディアンの異常種と呼ぶべきなんだがな。長ったらしいんでモドキって呼ばれてんのさ」

「それに、本来の姿からも大分変わっちまってるからねぇ」

追いついてきたジル婆さんも、その姿を見てぼやいている。本来のヴィヴィアン・ガーディアンは、純白の姿をしているらしい。しかも、触手の部分はまるで水でできているかのように半透明で、不思議な神秘さを感じさせる姿であるそうだ。

「ねえ、本当に倒していいの?」

「ああ、問題ねぇ」

「わかった」

「どうせ素材も取れねぇ! 思い切りやってくんな!」

「素材がとれない?」

「ああ、ヴィヴィアン・ガーディアンは倒すと、水みたいに溶けて消えちまうんだ! 魔石も取れん! そこはモドキも一緒だ」

なるほど、確かに魔力を探ってみても、魔石がどこにもない。不思議な魔獣だった。

このタイプの魔獣には心当たりがある。天空の島で倒したアンデッドたちだ。あとは、ジャンが魔術で生み出す即席のアンデッドたちも、魔石がない。

だが、こいつらはアンデッドじゃないんだよな。魔獣を無から生み出す術でもあるのか?

(師匠、どう?)

『本当に魔石はなさそうだ。素材とかは気にせず倒していい。ただ、船団の付近だから、あまり派手な術は禁止な』

「ん! ウルシ!」

「オン!」

突如、大型犬ほどに成長したウルシに驚く冒険者たちを尻目に、フランがその背に乗って飛び出した。

「いく」

「オン!」