軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

523 採取in湖

「この辺?」

『多分な。ウルシは分かるか?』

「オウン?」

『さすがに植物じゃ、気配もないか』

「オフ……」

俺たちは今、キアーラゼンのマスターから依頼を受けて、薬草の採取に訪れていた。

この近辺の冒険者ギルドには、特有の面白いシステムがある。他のギルドで出された依頼を、違う場所のギルドで受けられるというシステムだ。逆に、依頼の報告を他のギルドでしても構わない。採取などの納品依頼に限るが。

それも商業船団があるおかげだった。船を使ってアイテムを運ぶことで、違うギルドに素材を納品できるのだ。主に、分隊とよばれる小型商船が対応するらしい。

今探している霊草は、湖の湖底に生えているそうなんだが、周囲に魔獣がいるためなかなか採取ができないのだそうだ。

それを採取して、この先にある町で納品すればキアーラゼンに届くという。便利なシステムだった。

『まあ、潜ってみりゃ分かるだろ。風の結界を張る。フランとウルシは魔獣に備えろ』

「わかった」

「オン!」

『じゃ、いくぞ』

湖に潜る。そこは、驚くほど美しい世界だった。まず、巨大な湖とは思えない程に透明度が高い。文明に汚染されていない、異世界の湖だからだろうか?

湖底一面に緑の水草が生え、僅かな水流によってユラユラと棚引いている。しかも、そこには色とりどりの花が咲いているのだ。

生前、梅花藻という、水中で小さな白い花を咲かせる植物を見たことがある。だが、こっちはそれとは比べ物にならないほどに大きく、地上の植物と変わらない見た目だった。

様々な魚が緑の絨毯の上を泳ぎ回り、エビや亀などの水中生物が花々の間から顔をのぞかせる。見慣れない生物は、異世界の生物なのだろう。

差し込む陽光は水面で拡散され、地上よりも優しく、柔らかく揺らいでいる。そのユラユラと変化する光が、この空間の幻想的な雰囲気をさらに高めていた。

一瞬、ここが魔獣の生息する危険な場所だということも忘れ、俺たちはその光景に見入ってしまう。

『スゲーな』

(ん)

(オン)

フランたちを感動させるんだから、大したものである。

だが、その感動の時間も長くは続かなかった。

「キュアアアアアア!」

『ちっ。お客さんか』

透明度が高いということは、こちらを狙う相手からもよく見えているということだ。

(でっかい蜥蜴?)

『ワニっていうんだよ!』

偉そうにそんなことを言ったんだが、ワニでもなかった。

顔はワニに似ているし、全身に硬い鱗が生えているところも同じだ。だが、体のフォルムはどちらかというとアザラシやトドなどに近いだろう。

泳ぐことに特化したヒレ状の手足が、体の左右に2対ずつ。計8枚生えていた。恐竜好きの人であれば、ヒレが8枚のモササウルスと言えば通じるだろうか?

体長は3メートルほどなので、サイズはワニと同程度だろう。

(あれが、レイク・マーダー?)

『そうだろうな』

物騒な名前のこの魔獣こそ、薬草採取を阻む強敵であるらしい。脅威度はE。まあ、水中の魔獣は戦いにくいので脅威度が高めに設定される傾向がある。鑑定したが、ステータスだけ見れば脅威度F程度だろう。水泳スキルが突出して高いが、これは水中のモンスターであれば珍しくないしね。正直、低ランク冒険者でもやり方さえ間違えなければ戦えそうだ。

ただし、単体であればという注釈が付くが。このレイク・マーダー、必ず10匹以上の群れで行動するうえ、連携して狩りをする。さらに危険になるとすぐに逃げ散るせいで駆除もしづらいらしい。実際、俺たちに向かってくるレイク・マーダーは30匹以上いるだろう。

それだけではなく、弱いながらも水魔術による遠距離攻撃も備えているということで、この湖でも最も嫌われている魔獣であった。被害の数も断トツで多いらしい。

ゴブリンやオークと同じように、討伐依頼が常設で掲示されているほどなのだ。

『まずはあっちを片付けるか』

(ん。薬草とか他のお花を傷付けたくない)

『じゃあ、あまり派手じゃない技でいくぞ?』

(そうする)

(オン!)

な、なんとフランからお花を傷付けたくないなんて言葉が出るとは……! 俺、メッチャ感動してます! この言葉が聞けただけで、この場所に来た甲斐がありました!

(ん!)

(オーン!)

フランが光魔術で閃光を放つ。目潰しや、遠くへの合図用の術だが、今回は強烈な光で一瞬でも影を作り出すために使っていた。

そこに、ウルシの暗黒魔術が炸裂する。影を媒介した拘束魔術である。まあ、影縫いとか影縛りと言われるタイプの術だ。今ウルシが使ったのは影から闇を作り出し、相手に巻き付けて動きを封じる術だった。

フランが光魔術を上げたいと言い始めたときには驚いたが、これがウルシの暗黒魔術と驚くほど相性がいいのである。特に、任意の場所に影を作り出すことができるのは、かなりのアドバンテージであろう。自分なりに考えてその結論に達したというのだから、うちのフランは天才に違いない。

『よし、後は任せろ!』

ウルシの魔術で手足を縛られ、水面に浮かび上がってもがいているレイク・マーダーの群れ。俺は形態変形で刀身を複数に分割すると、それぞれを別々に動かし、全ての魔石を貫いていった。

死体を収納すれば、駆除完了である。肉は臭くて食えた物ではないらしいが、皮は防具として需要があるし、頭の剥製も好事家に人気が高いらしい。それに、常設依頼も達成できるのだ。

駆除はランクE依頼だが、この辺で嫌われている魔獣を駆除したという実績になる。作っておいて損はないだろう。

『薬草を採取しちゃうか。赤くて、棘の生えた草だっていう話だ』

(……あれは?)

『お、確かに赤いな。棘は……ある。これで間違いない。根ごと採取するぞ』

(あっちにもある)

『よし、しばらく手分けして採ろう。あればあるだけ欲しいって言ってたからな』

(わかった)

『ウルシは周囲の警戒だ』

(オン!)