軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

519 カーナを気に入った理由

カーナたちと別れた後、俺は気になっていた疑問をフランにぶつけてみた。

『なあ、フラン』

「ん?」

『なんで、カーナをそこまで気に入ったんだ?』

悪人とは言わんが、強かで、油断ならないタイプだった。入国が有利になるようにフランを利用したり、報酬を値切ったり。好意を抱く理由があったか?

今思えば、ディアーヌの失礼な発言を強く制止しなかったのにも、何か理由があったんじゃないかと思ってしまう。

まあ、今後カーナたちが何か事件を起こしたとしても、フランに迷惑がかかる可能性は少ないだろう。道中で一緒になって、モンスターから守っただけなのだ。あえてそのことを告げはしなかったが、嘘は言っていない。

口添えや虚言で入国を後押しした訳でもなかった。しかも彼女たちは身分証を提示し、それをチェックした管理官が正式に入国させた。何か問題があった場合、すでに責任の所在は国に移っている。

しかもフランの場合、出入国の記録がきっちりしているので、クランゼル王国を出た時点で一人だったということも分かっている。つまり、偶然峠越えで一緒になったという事実が裏付けられていた。カーナの仲間とみなされる可能性は低いだろう。

ただ、それにしてもフランはカーナの肩を持ち過ぎな気もしたのだ。

『明らかにフランを利用しようとしたのは気付いてるんだろ?』

「ん。でも騙されてない」

『まあ、そうなんだが……』

「カーナ。同じ年」

『そういえばそうだったな』

もしかしてそれだけで?

「それに黒猫族を侮らなかった」

『ああ、そういうことか』

「ん。ディアーヌも冒険者を馬鹿にはしたけど、黒猫族を馬鹿にはしなかった」

実際、今までの旅で出会って仲良くなった人々にしても、黒猫族の少女という時点で非常に驚いていた。驚き方には二つのパターンはあったが。

一番多いのは、黒猫族という弱い種族の少女が、冒険者などしていることに対する驚き。

次が、黒猫族という種族でありながら、強者の気配を纏っていることに対する驚き。

どちらにせよ、黒猫族という種族に対する侮りがあった。いや、彼ら彼女らに、黒猫族に対する侮蔑や悪意はないのだ。ただ、事実として黒猫族が弱い種族であり、戦闘に向かないということを常識と考えている。

フランにとってそれは歯がゆいことだった。悲しくもあったのだろう。

だが、カーナもディアーヌもシェラーも、一度も黒猫族を弱者とする発言をしなかった。少女であるとか、冒険者であるといったことに対する侮りはあったが、それだけだ。

特にカーナ。考えてみれば、種族、年齢、身分。彼女は一切気にしていないようだった。むしろ敬意さえ感じた程だ。

「カーナは面白い。冒険者になればいいのに」

『へえ?』

実際のところ、これはフラン的には結構な褒め言葉だ。居丈高な貴族が平民に対して、「お前が貴族なら領地も安泰だ」とか言うくらいの褒め言葉である。

「カーナは弱い」

『まあ、魔術師としては下の上くらいか?』

「でも、私を怖がらない。侮れないって思った」

強い冒険者同士が出合い頭に力量を測り合うことがある。闘気をぶつけ合い、軽いフェイントの応酬をし、相手の力を見極めるのだ。

一般人には殺気をぶつけ合い、武器を抜こうとしているようにしか見えなかったとしても、一流の冒険者同士であれば禍根は残らない。そして相手を認めれば、対等の相手として付き合う。

冒険者のそれとはまた違っているものの、フランはカーナを対等の相手として認めたらしかった。戦闘力以外の部分で、フランの琴線に触れる何かを持っていたのかね?

同じ年で、冒険者であることも黒猫族であることも見下さず、圧倒的力を見せた自分に物怖じもせずに接し、利用しようとさえするカーナ。考えてみれば中々の器か?

「カーナは面白い」

『まあ、フランがそう言うならいいけど』

「ん!」

結局のところ、なんか気に入った。つまりはそういうことなんだろう。

『ここから魔術学園までは普通だと5日くらいだな』

「ウルシだったらもっと早い」

「オン!」

『ただ、こっからは初めて行く国だし、いくつかの町も見ておきたい』

「おいしい名物」

「オンオン!」

『それもあったな』

あとは冒険者ギルドに顔も出しておきたいし、国内の情勢なんかも耳に入れておきたい。特に、クランゼル王国、レイドス王国との関係だ。戦争に巻き込まれたくはない。

「他に何かある?」

「オン?」

『……大人には色々あるんだ』

「おおー、なるほど」

ウルシのサイズもあまり巨大にしない方がいいだろう。どんな噂が立つかも分からん。

結局、ウルシには仔馬サイズに変化してもらい、ここから最も近い村に向かうことにした。その後は、大きめの町を目指すのだ。

ただ、その村では特に成果を上げることはできなかった。国境に一番近い村なので宿場町的に発展していると思ったんだが、完全に農村だったのだ。

冒険者ギルドの支部には元Eランクの爺さんが1人いるだけだった。さらに1時間ほど進んだ場所に湖があり、その畔に大きな町があるらしい。

大抵の旅人は村を素通りして、その町へと行ってしまうんだとか。

『湖の畔の町か』

「楽しみ」

『そういえば、デカい湖を見たことはなかったか?』

「ん」

「オン」

湖自体は初見ではないが、これから行く場所は規模が違う。なにせ、対岸が見えないというのだ。多分、琵琶湖とかと同じくらいのサイズなのだろう。もしかしたらそれよりも広いかもしれない。

「ウルシ、急ぐ!」

「オンオン!」

『おいおい、湖は逃げんぞ?』

「魚」

「オン!」

あー、そういえばデカイ淡水魚が名物だって言ってたな。鯉みたいなものなのかね?

「魚カレー」

淡水魚って、カレーに合うか? 鯉カレーとか、ウナギカレーってあるっけ? ご当地土産としては無くはないだろうが……。

『フラン、1つ言っておくが、カレーに合わない食材も存在するからな?』

「だいじょぶ。カレーは最強。何を入れても美味しい」

やばい、絶対に美味しい淡水魚カレーを作らねば!