軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

515 女性パーティ

峠の頂上でストーム・ワイバーンに襲われているのは、女性3人組であった。冒険者かと思ったら、どうもちがうようだ。

1人は冒険者とは思えない騎士風の全身鎧だし、他の2人の装備品も妙に気品がある。ぶっちゃけて言えば、装飾過多なのだ。お貴族様の冒険者ごっこ? そんな感じだ。

「カーナお嬢様! 私が奴を引き付けます! その隙にお逃げください!」

「……くっ! シェラー! 行きますよ!」

「で、ですがディアーヌ様が……!」

「私たちは足手まといなのです!」

カーナという十代前半に見える少女が主人であるらしい。貴族なのか、金持ちの娘なのかは分からないが、この場面で恐怖に我を忘れることなく行動しようとしている。なかなか見どころがありそうだな。

シェラーという20歳ほどの女性が従者で、全身鎧のディアーヌが護衛なのだろう。

ディアーヌは自分が囮となり、主たちを逃がそうとしているらしい。

というかだ、あのディアーヌって女がガシャガシャと金属音を鳴らしていたから、ワイバーンを引き寄せたんじゃ……。

ま、まあいい。とりあえず助けよう。

『奴の注意は完全にあの女騎士に向いている。一気に仕留めるぞ』

「ん! 上に転移!」

『おう!』

「ウルシは女のひとたちを守る!」

「オン!」

とは言え、ストーム・ワイバーンは脅威度Dの魔獣の中でも弱い方だ。いや、戦闘力やステータスだけなら脅威度Eクラスだろう。ただ、その飛行能力が厄介なので、Dにランクされている。

逆に言えば、攻撃を当てられるのであれば、そこまで強い相手ではなかった。

「はっ!」

「ギャオオッ――」

転移後、瞬時に魔力の流れを見極めて魔石の場所を特定したフランは、その場所に俺を突き込んだ。首の付け根にある魔石を貫かれ、ストーム・ワイバーンがあっさりと絶命する。

下にいるディアーヌに被害が出ないようにそのまま収納してしまえば、まるでワイバーンなど最初からいなかったかのような静寂が場を支配した。

「え?」

少女たちがマヌケな顔でこちらを見上げている。近寄ってきたウルシにも気づいていないらしい。

「だいじょうぶ?」

「え、ええ。助けていただいてありがとうございます……」

空中から降りたフランが未だに呆然としている少女たちに話しかけると、いち早く反応したのは主である最年少の少女だった。

菫色のゆるふわ髪に紫の瞳が美しい美少女だ。着ているドレスアーマーも上等の物である。鑑定しても貴族かどうかは分からない。爵位をきっちり持っていないご令嬢の場合、称号としては何も表示されないのだ。

「その、今のは貴方が?」

「ん。倒して収納した」

「そうですか。ありがとうございました」

少女が頭を下げる頃、ようやく他の2人も動き出す。

「た、助かった。礼を言う」

「ありがとうございます……ひぃ! お、狼!」

「な、いつの間に!」

ようやく近寄ってきていたウルシに気付いたらしい。女騎士が剣を向けた。

「それは私の仲間。だいじょぶ」

「そ、そうなのか?」

「オン!」

女騎士の呟きを聞いたウルシが、その場で子犬サイズに変形して伏せる。それを見て敵意がないと理解したのだろう。ようやく3人の肩から力が抜けた。

「助かりました。私はカーナ。こちらの2人はシェラーとディアーヌ。私の仲間ですわ」

「ランクB冒険者のフラン」

「まあ、あなたは冒険者ですの?」

「ん」

フランが名乗った直後だった。カーナたちが三者三様の反応を示す。カーナは心底驚き、シェラーは何故か恐怖の表情を浮かべ、ディアーヌは嫌悪感をその顔に浮かべる。

彼女たちが冒険者に良い想いを抱いていないことは確かなようだった。それを感じたのか、フランはそそくさとその場を立ち去ろうとする。

「じゃあ、行く」

『まあ、こいつらなら他のモンスターは大丈夫だろうしな』

鑑定してみると、この3人の基礎力はそこそこ高かった。ディアーヌだけではなく、カーナ、シェラーもレベルが30もあったのだ。

多分、パワーレベリングをしたのだろうが、ただそれだけではないようだった。カーナは火魔術、水魔術を、シェラーは回復魔術を使うことができた。

そして、そこそこの実力があるディアーヌだ。さすがに空を飛ぶストーム・ワイバーンと戦う程の実力はないが、冒険者で言えばランクDくらいの実力はあった。

この3人なら、この辺でワイバーン以外に苦戦することはないだろう。だとすれば、互いに嫌な思いをしつつ、わざわざ居座る理由もなかった。

フランが立ち去ろうとする姿に、シェラーとディアーヌは露骨にホッとする様子を見せる。しかし、彼女らの希望を打ち砕いたのは他でもない、主であるカーナだった。

「お、お待ちください!」

「ん?」

「その、できれば護衛をお願いできないでしょうか!」

「なっ! お嬢様! こいつは冒険者ですよ!」

「ですが、先程の強さを見たでしょう?」

「冒険者など、金に意地汚い野蛮人どもですぞ!」

酷い言われよう。フランの機嫌が急降下するのも無理ないだろう。しかし、そのフランの前で主従の言い合いが続く。

「でも、またあの魔獣が出現した時に、対処できるのですか……?」

「そ、それは……。いえ、できます! 命に代えてでも、お嬢様を逃がしてみせます!」

「そうではありません。私はあなたに死んでほしくないのです、ディアーヌ」

「私はこれでも栄えある紅旗騎士団の一員! 死の覚悟などとうにできております!」

どうしよう。もう完全にフランのことなんか忘れてるよね。そもそも、受けるとも言ってないのに。

『もう放って行っちまうか?』

(ん――)

『え? こいつらに付き合う気か?』

(……カーナは死なせたくない)

どうやら同年代で、かつ冒険者を馬鹿にした様子もなく、部下の身を案じているカーナに対しては好感を持ったらしい。だが、ディアーヌに対しては怒りを覚えていることも確かだろう。

『どうする?』

(……条件次第で雇われてやってもいい)

『そうか』

とりあえず2人の言い合いが収まるのを待つか。